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景気悪化が長期化した場合のオフィスビルと賃貸マンションの賃貸収入の変動 ~J-REIT保有物件における世界金融危機後の賃貸収入の変動の振り返り~

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 7月号

公開日:2020年7月10日

この記事の概要

  • 新型コロナウイルスにより今後、景気悪化が長期化する可能性がある。景気悪化が長期化すれば、不動産賃貸市場に対する影響はホテルや商業施設にとどまらず、オフィスビル、さらには賃貸マンションにも及ぶ可能性がある。
  • 直近で景気悪化が長期化したのは2008年の世界金融危機後である。今回の景気悪化の原因、影響範囲は当時とは異なり、また、景気悪化後の各アセットの新規供給動向も異なる可能性はあるが、当時の賃貸市場のデータは景気悪化が長期化した局面での実証データとして貴重な資料である。
  • 2008年の世界金融危機後のJ-REITが保有する物件の運用実績データを振り返ると、東京都心5区のオフィスビルの賃貸収入は2008年下期をピークに4年で20%低下し、概ね底打ちした。また、東京23区の賃貸マンションは同様に3年で10%低下し、概ね底打ちしている。

1)景気悪化の長期化がオフィスビルと賃貸マンションの賃貸収入に与える影響

新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言が発令され、休業要請や移動制限が行われたことで、ホテルや都市部に立地する商業施設においてはテナント売上が大幅に減少し、テナントであるホテル運営事業者や小売・飲食テナントの賃料減免・解約によって賃貸収入が大幅に減少するケースが生じている。

これに対し、オフィスビルと賃貸マンションは、現状、ホテルや商業施設のような大きな影響は出ていないが、景気悪化が長期化すれば、オフィスビルでは企業業績の悪化によってテナントからの賃借面積縮小・解約※1あるいは賃料減額要請などが行われ、賃貸収入の減少につながる。また、こうした動きが賃貸市場全体に及ぶとテナント需要の減退と相場賃料の下落がさらなる賃貸収入減少につながる。賃貸マンションにおいては景気悪化によって、雇用者数と雇用所得が減少し、入居者需要の減退※2と賃料負担力の低下を伴って、賃貸収入の減少につながる。

2)2008年の世界金融危機後の東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビルと東京23区の賃貸マンションの賃貸収入の動向

今回の新型コロナウイルスによる景気悪化は経済活動の停滞が起点であるのに対し、2008年の世界金融危機は金融市場の機能不全が起点であり、景気悪化の影響を受ける業界や景気悪化の度合いも異なる可能性がある[図表1]。また、景気悪化後の各アセットの新規供給動向も異なる可能性はある。このような相違はあるものの、景気悪化が長期化した場合のオフィスビルと賃貸マンションの不動産賃貸市場への影響を考察するうえで、2008年の世界金融危機後の賃貸市場のデータは景気悪化が長期化した局面での実証データとして貴重な資料である。

図表2~5は東京都心5区のオフィスビル、東京23区の賃貸マンションにおける2008年の世界金融危機後の平均稼働率、賃料収入単価(稼働床をベースとした単価)、賃貸収入(直近1年間収入)を示したものである。

東京都心5区のオフィスビルでは、平均稼働率は2008年9月のリーマンショック発生直前の2008年上期の99%から2年半で6%pt低下し、概ね底打ちした[図表2]。賃料収入単価は2008年下期をピークに4年半で20%下落し、概ね底打ちした[図表2]。賃貸収入(図表は2008年=100)は2008年下期をピークに4年で20%低下し、概ね底打ちした[図表3]。

東京23区の賃貸マンションでは、稼働率は2008年上期の95%から1年半で3%pt低下し、概ね底打ちした[図表4]。賃料収入単価は2008年下期をピークに3年半で9%下落し、概ね底打ちした[図表4]。賃貸収入(図表は2008年=100)は2008年下期をピークに3年で10%低下し、概ね底打ちした[図表5]。

※1:新型コロナウイルス感染症拡大を受けてリモートワークが定着すれば、都心部を中心としたオフィスビルの賃借面積縮小・解約の動きが加わる可能性がある。

※2:景気が悪化すると、住宅購入をあきらめ賃貸住宅に住み続ける、あるいは住宅を売却し賃貸住宅に住み替える人が増加することで入居者需要が増加する面が考えられるが、図表4で示すとおり、世界金融危機後のJ-REITが保有する賃貸マンションの平均稼働率は低下している。

[図表1]実質GDP成長率(2020年度以降は予測値)

[図表1]実質GDP成長率(2020年度以降は予測値)

データ出所:2019年度以前は内閣府「国民経済計算(GDP統計)」、2020年度以降は公益社団法人 日本経済研究センター「第182回四半期経済予測」(2020/5/27公表)

[図表2]東京都心5区のオフィスビルにおける世界金融危機後の平均稼働率、賃料収入単価の推移

[図表2]東京都心5区のオフィスビルにおける世界金融危機後の平均稼働率、賃料収入単価の推移

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表3]東京都心5区のオフィスビルにおける世界金融危機後の賃貸収入の推移

[図表3]東京都心5区のオフィスビルにおける世界金融危機後の賃貸収入の推移

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表4]東京23区の賃貸マンションにおける世界金融危機後の平均稼働率、賃料収入単価の推移

[図表4]東京23区の賃貸マンションにおける世界金融危機後の平均稼働率、賃料収入単価の推移

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表5]東京23区の賃貸マンションにおける世界金融危機後の賃貸収入の推移

[図表5]東京23区の賃貸マンションにおける世界金融危機後の賃貸収入の推移

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

※各図表とも該当データが2008年上期から2019年下期まで連続して得られた物件を対象(追加取得があった物件は除く)

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。

※2020年7月10日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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