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2019年度上半期の中小オフィスビルの売買動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 11月号

この記事の概要

  • 2019年度上半期の中小オフィスビル※1の売買取引額は1,471億円で、前年同期とほぼ同水準
  • 「J-REIT」による物件取得額は前年同期比約6割減。スポンサー等の関係者間取引は安定的に推移しているのに対して、関係者以外からの取得が減少
  • 東京圏では東京23区以外や都心6区以外の東京23区といった郊外部での取引が増加※2

1)2019年度上半期の中小オフィスビルの売買取引額は前年同期とほぼ同水準

都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」※3によると、2019年度上半期(2019年4月~9月)に公表された中小オフィスビルの売買取引額は1,471億円(「約」の表記は省略。以下同じ。)で、前年同期(2018年度上半期)の1,491億円とほぼ同じ水準であった[図表1]。

2017年以降、上半期の売買取引額は概ね横ばいで推移している。下半期の売買取引額は上半期と比べて多い傾向にあるが、前年同期比の変動は小さい。すなわち、上半期、下半期ともに売買取引額は概ね安定的に推移している状況である。

[図表1]中小オフィスビルの売買取引額

[図表1]中小オフィスビルの売買取引額

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

※1:本稿では、建物延床面積が5,000坪未満のオフィスビルを中小オフィスビルという。なお、本稿の集計では、区分所有権等での取引は除き、1棟単位の取引を対象としている。また、複数取引は除いている。

※2:本稿における圏域、エリアの区分は次のとおりである。
・東京圏:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
・大阪圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県
・名古屋圏:愛知県、三重県、岐阜県
・都心3区:東京都千代田区、中央区、港区
・都心6区:都心3区に、東京都新宿区、渋谷区、品川区を加えたもの

※3:不動産売買実態調査は、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基づき東京証券取引所に開示される固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などに公表された情報から、上場企業等が譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売却理由などについてデータ(概数の事例も含む)を集計・分析したもの。情報開示後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っており、過日または後日の公表値と相違する場合がある。また、本稿の集計では、海外所在の物件は除いている。

2)J-REITによる物件取得額は前年同期比約6割減。不動産・建設、一般事業法人等は大幅に増加

物件取得額を買主の業種セクター別にみると、取得額の最多は「J-REIT」(428億円)であるが、前年同期比59%減少した[図表2]。前年同期と比べて、スポンサー等の関係者からの物件取得額は概ね同水準であるのに対して、関係者以外からの取得が大幅に減少[図表3]。投資対象となる物件が品薄である状況下、スポンサーのパイプラインを通じた物件取得は安定的に推移し、その割合が上昇した。

他方、「SPC・私募REIT等」(2018年度上半期:84億円⇒2019年度上半期:177億円)、「不動産・建設」(59億円⇒241億円)、「一般事業法人等」(42億円⇒270億円)、「外資系法人」(90億円⇒156億円)による取得額は前年同期と比べて増加した[図表2]。このうち、増加額が最多の「一般事業法人等」では、収益目的に賃貸用物件を取得した事例が目立った。次いで増加額が大きい「不動産・建設」では、資産入替えに伴う系列J-REITからの築古物件の取得や、拠点縮小の計画がある金融機関の物件を取得(金融機関は引き続き賃借)した事例などがみられた。

[図表2]買主セクター別の物件取得額

[図表2]買主セクター別の物件取得額

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

[図表3]J-REITによる物件取得額の内訳

[図表3]J-REITによる物件取得額の内訳

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

3)資産入替えに伴うJ-REITによる物件売却額が増加。一般事業法人等は自社ビルの売却が寄与して増加

物件売却額を売主の業種セクター別にみると、「J-REIT」(143億円⇒295億円)と「一般事業法人等」(347億円⇒499億円)が前年同期比増加したのに対して、「SPC・私募REIT等」(431億円⇒145億円)と「不動産・建設」(455億円⇒237億円)は減少した[図表4]。「J-REIT」では資産入替えに伴う売却が目立った。「一般事業法人等」では、事業所の移転等に伴う自社ビルの売却が複数みられた。自社ビルの売却ではいずれも譲渡益を計上しており、不動産投資意欲が旺盛である中、取引価格が高値圏にあることが背景の一つと考えられる。

[図表4]売主セクター別の物件売却額

[図表4]売主セクター別の物件売却額

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

4)東京圏では東京23区以外や都心6区以外の東京23区といった郊外部での取引が増加

売買取引額を物件が所在する圏域別にみると、2019年度上半期は前年同期と比べて東京圏と大阪圏の売買取引額が増加した[図表5]。特に大阪圏では200億円超の高額取引※4が寄与して、構成割合も大幅に増加(8%⇒15%)した。東京圏では、「東京23区以外」や「都心6区以外の東京23区」といった郊外部での取引が増加した[図表6]。

※4:当該取引は2007年度以降の大阪圏に所在する中小オフィスビル売買取引の最高額である。

[図表5]中小オフィスビルが所在する圏域別の売買取引額(左)と構成割合(右)

[図表5]中小オフィスビルが所在する圏域別の売買取引額(左)と構成割合(右)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

[図表6]東京圏に所在する中小オフィスビルのエリア別の売買取引額(左)と構成割合(右)

[図表6]東京圏に所在する中小オフィスビルのエリア別の売買取引額(左)と構成割合(右)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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