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景気減速の可能性高まる中での、不動産市況の見通し

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 6月号

公開日:2019年6月14日

この記事の概要

  • 一部の経済指標に悪化傾向がみられ、今後、国内の景気が減速するとの見方が拡大
  • 法人間の不動産売買市況やオフィスビルなどの賃貸市況は、景気や金融市況に遅れて変動する傾向があり、景気減速による不動産市況への影響が懸念
  • 不動産の市場実態は底堅く、マクロ的にも景気と金融市況が連鎖的に悪化するシナリオは考えにくいことから、景気減速が生じたとしても不動産市況への影響は軽微にとどまるだろう。

1)減速感が現れはじめた国内景気

2019年5月13日に内閣府が公表した「景気動向指数(2019年3月分速報)」[図表1]で、各種の経済指標から導き出される基調判断は、これまでの「下方への局面変化」から「悪化」に引き下げられた。「悪化」とされたのは2013年1月分以来6年2カ月ぶりで、中国経済の減速等を背景にして生産や輸出が落ち込んだことが原因である。

2)投資対象物件の不足などで、不動産売買総額は減少

2018年度(2018年4月から2019年3月末まで)に企業の情報開示や報道等で公表された国内不動産の売買総額は3兆6,101億円で、前年度比27.4%減少した[図表2]。1件あたり100億円以上の大型取引が2017年度の3兆2,004億円から2兆41億円へ37.4%の大幅減となった影響が大きい。大型物件の売買一巡や、市場への新規物件の流入減少と低い投資利回りなどから望む条件の物件が品薄なことが、売買額減少の主要な背景とみられる。しかしながら、海外向け投資規制の強化が影響した中国を除いて、国内外の投資家の取得姿勢に特に衰えはうかがえず、望む条件の投資物件があれば取得したいとする投資家層は健在とみられる。

3)市況引き締まり、賃料上昇が続くオフィス賃貸市況

賃貸市場についても、国内の主な大都市のオフィス市況は好調である。平均空室率が世界金融危機前の好況期を下回る高稼動となり、賃料上昇が続いている[図表3]。東京都心部では大規模なビルの開業が集中しているが市況軟化に繋がってはおらず、反対に、このような大規模のビルにも賃料上昇が及んでいる。事業拡大や人材獲得、ビル建替え等による移転・拡張需要に加え、会計・コンサルタント業やITなど比較的景気に敏感なサービス系業種の需要と、企業が既存床の他に追加的に利用するフレキシブルオフィス事業者の需要などが市況を下支えし押し上げている。

4)不動産市況は金融や景気情勢に遅れて推移。不動産市況後退を懸念する見方も

不動産市況は、金融や景気に対して遅行的に推移する傾向がある。金融緩和による資金調達の容易化や金融商品の利回り低下で不動産投資に需要が集まり売買取引が活発化することや、景気拡大で企業業績が高まりオフィス賃借需要が増大すること等の関係である。経済指標を例に挙げると、不動産売買総額は日銀短観「金融機関の貸出態度判断DI(不動産業向け)」[図表4]と、東京都心5区(千代田区と中央区、港区、新宿区、渋谷区)の賃貸オフィスビルの稼働率は「景気動向指数」[図表5]と、強い正の相関関係で推移してきた。目下、貸出態度DIが引き締まり方向に転じており、景気動向指数の基調判断が悪化に転じた。不動産価格の長期上昇による天井感に加えてこうした下方変化から、市況後退を懸念する見方がある。

5)金融市況と実体経済が連動した不況が不動産市況のワーストシナリオ

世界金融危機後に不動産市場で深刻な市況後退が生じたのは、信用収縮と実体経済の悪化が連鎖的に進み、資金調達難から来る売買市場の膠着と不動産価格の下落、企業の支出抑制から来る賃貸市場の空室増加と賃料下落がデフレスパイラルを生んだことが原因であった。1990年総量規制後の状況も同様で、不動産市場にとって、金融すなわち売買取引の流動性と実体経済すなわち賃貸収益がリンクした不況がワーストシナリオといえる。

6)不動産市況は底堅く、景気減速が顕在化したとしても、その影響は軽微

現在、不動産業向け新規貸出額の減少は個人向け融資の領域で生じている[図表6]。大手法人向け不動産融資や、中国経済など海外要因が中心の景気減速リスクと共通する背景はうかがえず、金融と景気の連鎖シナリオは考えにくい。景気がある程度減速した場合はオフィス等の賃借需要が鈍化するとみられるが、既存テナントが元となるビルの賃貸収益は当分堅調なまま持続するだろう。もし不動産価格が低下すれば、待機資金化していた買い需要が顕在化し下値を支えるだろう。このように、市況後退が生じるとしても一定の調整局面にとどまると考えられる。

[図表1]下落傾向が強まる「景気動向指数」

[図表1]下落傾向が強まる「景気動向指数」

データ出所:内閣府社会経済総合研究所「景気動向指数(2019年3月分速報)」

[図表2]国内の不動産売買市況は息切れ感

[図表2]国内の不動産売買市況は息切れ感

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

[図表3]平均募集賃料の上昇が続く。名古屋と福岡、札幌は世界金融危機前の水準超え

[図表3]平均募集賃料の上昇が続く。名古屋と福岡、札幌は世界金融危機前の水準超え

データ出所:三鬼商事「オフィスデータ」

[図表4]不動産売買総額は金融市況(不動産業向け貸出態度)と連動性あり

[図表4]不動産売買総額は金融市況(不動産業向け貸出態度)と連動性あり

データ出所:不動産売買総額は都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」、貸出態度判断D.I.は日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」

[図表5]賃貸ビルの稼働率は景気に遅れて変動

[図表5]賃貸ビルの稼働率は景気に遅れて変動

データ出所:オフィスビルの平均稼働率は三鬼商事「オフィスデータ」の平均空室率のデータから1-平均空室率として都市未来総合研究所が計算、景気動向指数は内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数 平成31(2019)年3月分速報値」

[図表6]個人貸家業向けを除くと、不動産業向けの設備資金の新規貸出は堅調

[図表6]個人貸家業向けを除くと、不動産業向けの設備資金の新規貸出は堅調

データ出所: 日本銀行「貸出先別貸出金」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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