知っておきたい住宅ローン金利の決まり方 変動よりも固定が先に動くので注意が必要

ファイナンシャルプランナーが解説、住宅ローン金利の決まり方

日銀が2016年1月、マイナス金利政策を導入しました。こうした経済政策は、住宅ローンの金利にどのような影響を与えるのでしょうか。それを知るためには、住宅ローン金利の決まり方を知っておく必要があります。住宅ローンにくわしいファイナンシャルプランナー(CFP)の深田晶恵さんに、住宅ローンの金利について伺いました。

固定と変動では影響を受ける金利が異なる

−−住宅の購入を検討するに当たって、ローンの利用は欠かせません。ローンの返済額には金利が影響するので、動向を気にしている方が多いと思います。ローンの金利はどのように決まるのか教えてください。

深田:住宅ローンの金利はさまざまな要素の影響を受けて決まります。まず大きいのは「日銀の政策金利」と「長期金利」の影響です。ただし、こうした外部要因だけで決まるなら、住宅ローン金利はほとんど横並びになってしまします。これに金融機関ごとの内部要因や経営戦略が加わり違いが出てきます。

例えば金融機関の経営状況。経営体力が強かったり、経費率が低かったりする金融機関は住宅ローンの金利を低く設定することができます。金融機関同士競争がありますから、他の金融機関との競争も意識して金利を決めなくてはなりません。金融機関は住宅ローン以外にも多くの金融商品を持っています。その中で住宅ローンをどれだけ重視するのかという経営戦略によっても金利は違ってきます。また、購入者の信用状況によっても住宅ローンの金利は変わります。

−−まずは、日銀の政策金利の影響を教えてください。

深田:住宅ローンは大きく分けると「変動金利型」と「固定金利型」があります。日銀の政策金利が影響するのは「変動金利型」です。変動金利が政策金利に影響すると聞くと、2016年2月に実施した日銀のマイナス金利政策により、変動金利が一段と引き下がると考える人が少なくないのですが、実は日銀の政策金利は関係ありません。マイナス金利政策とは、銀行が日銀に新規に預けるお金の一部に手数料をとるということです。政策金利を動かしたわけではありませんから、当面変動金利の基準金利には変更はないでしょう。

日銀は2001年から、景気対策として2006年6月まで「ゼロ金利政策」をとっていました。その後、景気回復が見られるということで0.25%ずつ2回引き上げて0.5%になりました。しかし2008年末リーマンショックの影響で景気が悪化したことを受け0.4%下げて0.1%にしています。その後、現在まで政策金利は変わっていません。それにもかかわらず、住宅ローンの変動金利型に変化があるのは、前に述べた個別の金融機関の事情で、金利割引を動かしているからです。

−−長期金利の固定金利型ローンに対する影響はどうでしょうか?

深田:固定金利型ローンに影響を与える長期金利とは、具体的にいうと10年物国債の流通利回りです。マイナス金利政策導入後、長期金利は低下していることもあって、現在、固定金利は非常に低い水準になっています。

ちなみに、「フラット35」のような全期間固定金利型だけではなく、固定期間が10年以上のタイプは期間固定タイプも長期金利の影響を受けます。

「金利が上がり出したら固定に」は現実的ではない

−-深田さんは、「金利上昇のギリギリまで低い変動金利で借りるプラン」はお勧めしないとのことですが。

深田:経済の仕組み上、金利が上昇する局面では、長期金利の方が、政策金利に先行して上昇します。つまり変動金利型よりも固定金利型の方が、金利が上昇するタイミングが早い可能性が高いのです。

ですから、「当面は変動金利が非常に安いのでそれでスタートして、金利が本格的に上がり始めたら固定金利に切り替えればいい」といったプランの実現性は低いでしょう。変動金利が上がるころには、固定金利はそれに先行してかなり上昇しています。ただでさえ変動金利型よりも固定金利型の金利は高いのですから、上昇した後に固定金利型に借り換えれば、返済額は大幅に上昇することになり、生活が圧迫されてしまいます。

--住宅ローンを借りる上でのアドバイスをお願いします。

深田:住宅ローンは多くの方にとって一生で一度の体験になります。過去の失敗に学んで再チャレンジといったことは許されません。しかも返済期間が長期にわたるので、その間、どんなことがあるか見通すこともできません。それだけにできるだけ慎重なプランを立てることが大切です。

人生には自分でコントロールできることとできないことがあります。住宅ローンに関連することであれば、景気の動向や住宅ローン金利の動きはコントロールできないことです。一方、購入する時期や物件の予算、借入額などはコントロールできることです。コントロールできないことを少しでも減らして、コントロールできることを適切に対処するのがリスクを減らすポイントです。この視点を持って住宅ローンを検討することをお勧めします。

解説

深田 晶恵 (ふかた・あきえ)

(株)生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー(CFP)。金融商品や保険商品を販売しない独立系FP会社「生活設計塾クルー」の一員として、幅広い年代のお金の相談を受ける。新聞や雑誌コラムの執筆多数。国土交通省「消費者保護のための住宅ローンに係る情報提供検討会」等の委員を歴任。

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