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民法改正案成立!相続で注意すべきこと総まとめ

相続税関連トピックス

公開日:2018年9月28日

この記事の概要

  • 2018年7月6日、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、相続が大きく変わることになりました。社会情勢の変化を受け、1980年以来、約40年ぶりに大幅改正が行われたのです。残された配偶者の生活に配慮した権利を創設したり、遺言を残しやすくしたりするなど様々な点が変わります。
    (本記事は2018年9月28日時点の情報であり、今後変更となる場合があります)

キービジュアル

2018年7月6日に、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立しました。法律の名称では分かりにくいかもしれませんが、要は相続に関する法律改正です。民法のうち相続の分野については、1980年以来、約40年間、大きな見直しはされてきませんでした。その間、社会情勢が大きく変わったことを受けて大幅改正が行われたのです。

社会情勢の変化の中で、相続に特に関連するのは高齢化の進展や高齢者単身世帯の増加です。残された配偶者が高齢化し、単独世帯で生活するケースが目立っています。それに対応するため、残された配偶者に配慮した改正になっています。また、遺言の利用を促進し相続をめぐる紛争を防止するための改正なども盛り込まれています。今回は主なポイントを説明します。

残された配偶者を保護するため「居住権」を新設

まず、新設された配偶者の居住権を保護するための方策を解説しましょう。これは大別すると、遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限り保護する方策と、配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策の二つがあります。前者を「配偶者短期居住権」、後者を「配偶者居住権」と呼びます。

配偶者短期居住権とは、配偶者が相続開始時に無償で居住していた被相続人の建物を、最低6カ月間は無償で使用できる権利です。一方、配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の建物を、自身の死亡まで無償で使用または収益できる権利です。こちらのほうが相続に大きな影響があることから、今回の改正の最重要ポイントといえるでしょう。

これまで被相続人の配偶者が自宅に住み続けるには、基本的には所有権を相続する必要がありました。そうすると、遺産分割で得られる他の財産(現金など)が少なくなり生活資金に困るケースがでてきます。それに対して、配偶者居住権は所有権よりも相続税評価額が低い額になるため、これを取得しても他の財産を多く相続でき、配偶者の生活安定に寄与します。

ただ、配偶者居住権がどのくらいの相続税評価額になるのか、また、どのように課税されるのか、現時点では明確ではありません。明らかになれば、相続への影響を試算する必要があるでしょう。

遺産分割も配偶者保護や相続公平化に向けた改正が

遺産分割に関しても、残された配偶者の保護強化や、相続人が便利になる改正が行われました。婚姻期間が20年以上の夫婦限定ですが、生前贈与や遺言で譲り受けた住居は、「遺産の先渡しとみなさない」(特別受益の持ち戻しが免除される)として、遺産分割の計算対象から除外することになりました。これにより、生前贈与や遺言で住居を譲り受けた配偶者は、それ以外の財産の相続分が増加します。

これまで相続の際、残された配偶者などの相続人が困る点として、被相続人が亡くなった時点で遺産は相続人全員が共有していることになるため、遺産分割協議が整うまで預貯金などを引き出すことができないことがありました。そのため、残された配偶者などが生活費に困ったり、葬儀費用の支払いに支障が出たりする恐れがありました。

こうした問題を解決するために、遺産分割協議が終わる前でも、被相続人の銀行預金などを引出しやすくする「仮払い制度」を創設しました。家庭裁判所に判断を求める方法以外に、金額に上限はありますが家庭裁判所の判断を必要としない方法があります。

また、相続を公平に行うために、遺産分割前に相続財産が一部の相続人によって処分された場合であっても、その他の相続人全員の同意によって、処分された財産も含めて遺産分割を行うことができるようになります。従来は、一部の相続人が遺産の全部または一部を処分してしまった場合、家庭裁判所でする遺産分割調停などとは別に、地方裁判所に訴えてそれを取り戻す必要がありました。その手間と費用がなくなることが期待されます。

遺言の一部は自筆でなくパソコンでOKに

相続のトラブルを減らす有力な方法として、被相続人が生前に遺言を残しておくことが挙げられます。遺言にはいくつか種類がありますが、一般的なのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の二つです。公正証書遺言は公証人に作成してもらい、保管してもらう遺言、自筆証書遺言は、文字通り本人が自分で書く遺言です。

従来は、自筆証書遺言の場合、すべてを自書することが必要とされていました。高齢化が進む中で、それを被相続人に強いるのは負担が大きすぎるということで、財産目録については、自書でなくても認められることになりました。財産目録に関してはパソコンなどで被相続人以外が作成したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付したりすることが可能になります。ただし、そうした財産目録の全ページに、被相続人が必ず署名押印をすることが求められます。

今回、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」も同時に成立しています。これまで、自筆証書遺言に係る遺言書は、自宅で保管するケースが多く、そのため紛失や、相続人による廃棄、隠匿、改ざんの恐れがありました。

それらを防ぐため、法務局で遺言書を保管する制度が創設されました。制度では原本が保管されるほか、画像データ化もされることになっています。遺言者の生存中は、遺言者以外閲覧などはできません。相続人などは相続開始後に初めて遺言書の閲覧請求が可能になります。相続人などの1人から遺言書の閲覧などが請求されたら、他の相続人に遺言書が保管されていることを通知する仕組みも組み入れられています。

また、これまで遺言(公正証書遺言を除く)の保管者や、それを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりませんでした。検認とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、その内容を明確にして偽造・変造を防止するための手続きです。今後、法務局に保管した遺言に関しては家庭裁判所での「検認」手続きは不要になります。

ちなみに、遺言に関しては遺言執行者の権限が明確化されました。「遺言執行者がある場合には、遺贈(遺言によって遺産を分与すること)の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」といった規定が改正民法に盛り込まれています。

さらにこうした遺言の内容を知りえない第三者の利益を保護する改正も行われました。これまでは「相続させる」旨の遺言などで承継された財産については、登記がなくても第三者に対抗することができることになっていました。それを見直して、法定相続分を超える部分の承継については、登記などの対抗要件を備えていなければ、第三者に対抗することができなくなりました。

義理の親の介護をした場合、金銭請求が認められる

相続では、法定相続人が法定相続分で遺産を受け継ぐのが基本です。しかし、遺贈や生前贈与によって、法定相続人であっても十分な遺産を受け取れなくなることがあります。このようなときに、一部の法定相続人が主張できるのが「遺留分」です。つまり遺留分とは兄弟姉妹以外の法定相続人が受け取ることができる最低限の遺産取得分のことです。

遺留分を請求することを「遺留分減殺請求」と呼びます。これまで不動産の遺贈などの一部が遺留分を侵害しているケースでは、その不動産は遺贈を受けた人(受遺者)と遺留分減殺請求をした人による共有になっていました。その結果、共有になった財産をスムーズに分割することができずにトラブルになるケースも目立ちました。そこで今回、遺留分が侵害された場合には、金銭の支払い請求のみできる(「遺留分侵害額請求」と言います)ことにして、遺留分減殺請求による共有状態の発生に起因するトラブルを減らすことにしました。

遺留分の算定方法の見直しもされました。これまでは判例によって、相続人に対する生前贈与は、すべての期間の贈与を参入することとされていましたが、改正によって相続開始前10年間にされた贈与に限って参入することとされました。

前述の通り法定相続人は遺留分侵害額請求によって最低限の遺産は確保できます。一方で相続人以外の親族はいくら被相続人の療養看護などを行っても、遺産の請求はできませんでした。これでは不公平ということで、今回、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件の下で、相続人に対して金銭請求をすることができるようになりました。たとえば、相続人が死去していて、その妻が義理の親の介護などを無償で行っていた場合には、「特別寄与者」として、金銭(「特別寄与料」と言います)の請求ができる可能性が高いと思われます。

改正民法の施行は、原則として公布の日から1年以内とされています。ただ、自筆証書遺言の方式の緩和については、2019年1月13日に施行されます。また、一部、施行期日はそれより後になりますから、注意しましょう。

相続関連の主な改正点の一覧表

内容
配偶者短期居住権の創設
配偶者居住権の創設
婚姻期間20年以上夫婦間の住居遺贈・贈与の場合の持ち戻し免除
預貯金仮払い
遺産分割前の処分
自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言の保管制度
遺言執行者の権限明確化
「相続させる」遺言の対抗要件
遺留分侵害額請求による金銭のみの請求
遺留分算定方法の見直し
相続人でない親族の貢献(特別寄与料)

協力・監修

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

みずほ信託銀行執行役員・監査役、みずほ不動産販売専務取締役歴任、現 弁護士

  • ※弊社は、会計・税務等の取扱いを推奨し、もしくは保証するものではありません。実際の不動産取引にかかわる税法上の適応の可否については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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