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2017年基準地価、地方中核都市の上昇顕著、東京では北東部に注目

アナリストが解説 2017年基準地価

公開日:2017年10月31日

この記事の概要

  •  9月に2017年の基準地価が公表されました。全国平均ではほぼ横ばいですが、大都市圏では上昇、地方圏は下落と二極化が進んでいます。注目は、札幌、仙台、広島、福岡といった地方圏の中核都市の活況です。東京23区では北東部の上昇が顕著になっています。

みずほ証券の上級研究員である石澤卓志さん

国土交通省が9月に2017年の基準地価を公表しました。住宅業界や不動産流通市場に詳しい、みずほ証券の上級研究員である石澤卓志さんに、2017年の基準地価のポイントについて解説していただきました。

基準地価が9月に公表されました。まずは全体動向を教えてください。

石澤:全国全用途平均では、前年比0.3%下落でした。バブル崩壊後の1992年以降、26年連続で下がったことになります。もっともリーマンショックの影響を受けた2009年(前年比4.4%下落)以降は、8年連続で下落幅が縮小していますから、下げ止まってようやくほぼ横ばいになったとみることができるでしょう。

東京など大都市圏の実感とはかなり違いますね。

石澤:大都市圏の実感と異なるのは当然です。横ばいになったのは全国の平均値にすぎません。実際は、東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏は上昇が続き、地方圏は下落が続くという、二極化が進行する構図が定着しています。前者が1.2%の上昇、後者は0.9%の下落です。

用途別に見ると、住宅地に関しては三大都市圏が0.4%.の上昇、地方圏は1.0%の下落で差は少ないのですが、工業地は三大都市圏が1.9%の上昇、地方圏は0.6%の下落と差が大きくなります。商業地に至っては、オフィスの大都市集中が続いた結果、三大都市圏は3.5%の上昇で、地方圏は0.6%の下落で格差がさらに大きくなっています。

地方圏の不動産市場は冷えたままということですか?

石澤:地方圏も一律に見ることはできません。2013年からの傾向なのですが、地方圏の中でも札幌、仙台、広島、福岡といった中核都市に関しては、三大都市圏以上の上昇を見せているのです。

先に上げた地方四市の変動率は、住宅地が2.8%上昇、工業地が3.7%の上昇、商業地は7.9%の上昇です。三大都市圏はそれぞれ0.4%、1.9%、3.5%の上昇ですから、地方四市の活況ぶりが分かると思います。

この要因としては、三大都市圏の好条件物件の地価が上がりすぎて天井に近づいたことがあるでしょう。三大都市圏の投資利回りが低い物件ではなく、それに次ぐ都市の好条件の物件に不動産マネーが流れているわけです。

地方の中核である四市の好条件物件がさらに上昇し天井に近づいた後、もう一回り小さい都市の好条件物件に波及するかには注目したいと思います。いずれにしろ、大都市圏であっても割高な物件は敬遠されることが明確になりました。不動産購入に当たっては、そうした「伸びしろ」に注目すべきですね。

東京銀座の地価はバブル期を超えましたね。

石澤:2017年、全国で最も高く評価された東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」は1㎡当たり3890万円で、1991年の3800万円を上回りました。銀座6丁目の「銀座尾張町TOWER」が前年から21.8%上がり、東京圏トップの上昇を見せるなど銀座地区の好調が目立ちます。

こうした上昇は再開発の影響が大きいと分析しています。今年の基準地価では、特に「GINZA SIX」が完成した影響が大きかったようです。再開発による不動産投資の活発化の好影響は、名古屋の名駅、広島の紙屋町、福岡の博多などでも見られます。

実質本位の不動産選びの時代に

再開発以外の上昇要因としては、どのようなものがありますか?

石澤:インバウンド需要と交通アクセス網の影響が挙げられます。まずはインバウンドですが、全国の商業地の上昇率上位10位のうち、6地点は京都と大阪でした。両方ともインバウンド需要が盛り上がっている地域ですね。全国の住宅地の上昇率トップは北海道の倶知安町だったのですが、これも外国人観光客のリゾート需要の強い場所です。

ただ、こうしたインバウンド需要による価格変動の特徴として、商業地の一部などに範囲がかなり限られる傾向があります。観光客が多い表通りは急上昇する一方で、そのすぐ近くであっても人通りが少なければ下落が続くといった格差が生じているのです。ただ、インバウンド需要を取り込めば局地的とはいえ地価が上昇することは明確になりました。自治体のインバウンド需要の取り込み策の成果によって、地方圏の地価は明暗が分かれる可能性があるでしょう。

交通アクセス網による上昇要因として挙げられるのは、まずは鉄道新線の開業・開通の影響です。札幌、仙台、金沢の中心部でこの要因による上昇が見られます。また、通販事業の拡大による物流施設ニーズの増加で、道路アクセスの良好な場所の上昇も顕著です。首都圏の圏央道が通っている茨城県五霞町、埼玉県入間市・東松山市、東京都青梅市の工業地の上昇はこの要因によるものでしょう。

東京都内で注目すべき動向はありますか?

石澤:東京23区の区別上昇率でトップだったのは荒川区でした。さらに江東区、北区、墨田区といった北東部の上昇が目立ちます。その要因は2つあります。1つは2015年3月に開業した上野東京ラインの影響が本格化したことです。従来は、上野止まりだった高崎線、宇都宮線、常磐線の一部が東京駅に乗り入れるようになりました。宇都宮線、高崎線の一部は東海道線と相互乗り入れが行われています。これにより北東部の交通アクセスが向上しました。

もう1つの要因は、23区南西部よりも地価の上昇が遅れ、比較的低い水準にとどまっていたことです。都心部の地価が上昇しすぎて一次取得者層向けのマンションが供給しにくくなりました。それに続き南西部も同様の傾向が出ています。その点、北東部は比較的低い水準なので、都心からの同距離の場所に比較的リーズナブルな物件を開発できると判断したマンションディベロッパーが用地確保に動いたのです。

このことでも分かるように、今回、明確になったのは、都心など従来の人気地域の地価が急上昇した結果、これまで住宅地としてのブランド力は必ずしも高くはなかったものの、交通アクセスもよく便利な地域が見直され、地価の上昇が目立ち始めたことです。これは、東京以外も同様です。「名より実」で不動産を選ぶ時代になっているのでしょう。

解説

石澤 卓志 

1980年代より一貫して不動産市場の調査に携わる。国土交通省・社会資本整備審議会の委員をはじめ、自治体、経団連等の委員や専門委員、国連開発機構技術顧問、上海国際金融学院客員教授などを歴任。テレビや新聞などでコメンテーターとしても活躍。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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