【シリーズ連載】30代、40代のうちからしっかり準備を!「後悔しない終活を親子で実現」(第六話「もしも母がのこされたら配偶者の居住権保護編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.33

この記事の概要

  •  一般的に、父にもしものことがあって遺言がない場合、父の遺した遺産は配偶者である母が2分の1、残りを子で分配することになる。
  •  母が相続した自宅に住み続けて、現金は子らで分けるというケースも多いが、その場合母の手元に現金が残らないため生活費に不安が残る。また、遺産が自宅しかないと、売却して現金化したものを法定相続人で分配しなくてはならないことも。
  •  これらを受け、配偶者の居住権を保護する「配偶者居住権」が新設。施行は2020年7月を予定。
  •  2018年8月31日本編公開時の要件であり、税制は今後変更となる場合があります。

第6話 もしも母がのこされたら・・・配偶者の居住権保護編

【Cさんファミリー】
夫43歳会社員、妻38歳の共働き夫婦で、日々仕事と10歳と8歳の娘の子育てに奮闘中。5年前に庭付きの一戸建てを35年ローンで購入。

現行の民法(相続法)では、のこされた配偶者が今まで通りの生活を続けられないケースも

一般的に、両親と子2人の4人家族のケースでは、父親にもしものことがあって遺言がない場合、父親の遺産は配偶者である母は2分の1、子は4分の1ずつ取得することになります。
例えば、父親の遺産は不動産(自宅)が2,500万円、金融資産が2,500万円というケースで考えてみましょう。その場合、母が自宅を相続し、子らが金融資産を均等に分ければ法律上問題はありません。しかし、そのまま自宅に住み続けることができても母にはまとまった現金は残らないため、今後の生活にも不安が残ってしまうことになります。

また、遺産が不動産しかない場合は、遺言で「自宅はすべて配偶者である母に相続する」というような記載がないと、生活の基盤を失ってしまうことも。つまり、法定相続に則って自宅を売却して現金化し、法定相続人に分配しなくてはならないケースも発生してしまうということです。
被相続人である父がある程度の年齢に達していた場合は、遺言を残すなどして相続について考えていることも多いのですが、若くして亡くなってしまうと遺言のないケースがほとんどのため、このような結果につながることも見受けられます。

新設された「配偶者居住権」とは

このような問題点を解消するために、2018年7月6日改正民法が成立。配偶者を保護する権利である「配偶者居住権」が新設されました。これは、不動産の所有権とは別に「配偶者居住権」が設定できるようになるというもの。相続が開始した時に被相続人(=父)の所有していた住宅に住んでいた配偶者である母が、賃料などを支払うことなく住み続けることを認める権利です。ちなみに、所有権が第三者の手に渡っても居住権は保護されることになっています。

<現行と改正後の比較>
※遺産:不動産(自宅)2,500万円〔その内配偶者居住権1,000万円〕、金融資産2,500万円

●母親

現行:不動産2,500万円→改正後:配偶者居住権1,000万円・金融資産1,500万円

→0円だった金融資産が1,500万円となり、生活費にもゆとりが生まれる結果に

●子2名

現行:金融資産2,500万円→改正後:金融資産1,000万円・所有権1,500万円

→現行・改正後とも相続した資産の合計額は変わらず、資産の構成にのみ変化が

施行は2020年7月を予定。今後の動きにも注目

「配偶者居住権」は、20年以上も前から必要性が求められてきました。ここにきてやっと新設となったわけですが「小規模宅地等の特例が適用されるのか」などの詳細については審議中となっています。2020年7月の施行へ向けて調整段階のため、今後の動向にも注目していく必要があります。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2018年8月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。