“賃貸派”から転身しマンションを購入 好きな家具を生かした大胆リノベーション

人生を楽しむ理想の住まいを作りました Vol.1

神奈川県・K邸 文/中城邦子 写真/佐藤正純

友人を招いたときも気遣いさせることなく、話しながら料理ができるLDK。ベイスターズファンの2人。チェアでくつろいで野球中継を見るのが休日の楽しみ

生活の舞台である住まいをどうすべきか――。人生を楽しむために住宅を考えることは必要不可欠です。そんな時にヒントになるのは、先人のチャレンジです。趣味を生かした都会暮らし、セカンドライフに備える、中古物件を購入して思いのままにリフォームなど、様々な目的、手段で、人生を楽しむ住み替えを実行したケースを紹介します。連載第1回は、賃貸派から転身したケースを紹介します。

夫婦2人暮らし、共働きのKさん夫妻(夫52歳、妻51歳)。通勤の利便性重視で、横浜市内で駅近の賃貸マンションに結婚以来、住み続けてきた。
そんな2人の転機となったのは、夫の会社で開催されたライフプランセミナー。50歳を迎えた社員を対象に、今後の働き方から、お金や健康問題までを専門家がアドバイスしてくれる機会だ。「そこで、払い続けても資産にならない賃貸暮らしより、家を買ったらどうかと提案されたんです。確かに、当時住んでいた賃貸は気に入っていたけれど、年金生活になっても、家賃を払い続けていくことへの不安はありました」(夫)。
家を買う、という選択肢を検討し始めた2人。「資産になる」という以外にも、持ち家の利点に気がついた。家具やアンティーク小物の店巡りが好きな2人だが、賃貸の狭い部屋には置けないと、購入を諦めることが多かった。「自分の家なら我慢はいらない。ちょうど金利も底といわれており、買うなら今しかない、と」(妻)。
賃貸派から持ち家派への転身を決めたKさん夫妻。2人とも仕事が忙しく、家の管理の手間を考えると、戸建ては選択肢から外れた。マンション購入を念頭にリサーチを始め、中古マンションのリノベーションを勧める本に出合った。
中古の良さは、管理状態や住民構成、窓からの景色や風通しまで事前に分かること。Kさんが見つけたのは、同じ横浜市内にある、低層マンションのメゾネット。築30年だが、植栽やゴミ捨て場、駐輪場の管理状態が良く、長期修繕計画もきちんとしていた。昼、夜など時間帯を変えて現地を確認し、購入を決めた。

新築マンションではできないリノベーションを楽しむ

リノベーションは、専門会社に依頼。打ち合わせを重ね、プランを詰めていった。「家を買うと決めてから買い集め始めた家具や雑貨を見せ、自分たちの好みを伝えて共通のイメージを持ってもらうとともに、それらをあらかじめ組み込んだ設計をしてもらいました」(夫)。例えばLDKの床は、プロフェッサーチェアと枕木をリメークしたテーブルに合わせて選んだ。アンティークの重い照明を下げられるよう、天井には頑丈なアンカーを打ってもらった。

インテリア好きの2人にとって、プランナーとアイデアを出し合いながら、家具を生かした間取りを考えていくプロセスは実に楽しい時間だったという。「新築マンションではできない、リノベーションだからこその面白さ。天井や床を剥ぎ、間仕切り壁も取ったスケルトン状態を見ているから、いざとなったら、また取っ払ってしまえばいいと思えるので、思い切った発想で空間が作れました」(妻)。

2階はLDKのあるパブリックな空間、3階は寝室や浴室などプライベートな空間、とフロアを分け、イメージ通りの家を作り上げたが、メゾネットゆえにバリアフリーでないことに将来の不安がないといえば嘘になる。「ただ、私たちそれぞれの親も2階建ての家に住んでいて、まだ元気に階段の上り下りをしている。この家で暮らし続けられる体力を維持することが、一番大切かなと思っています」。

1. 玄関ホールとLDKとの間仕切り壁は、黒いガラス格子にした。玄関ドアを開けるとガラス越しに光が入る明るい空間 2. アンティークの照明は重量があるので、あらかじめアンカーを天井に取りつけてもらった。 3. LDKの天井にはほかにも複数のアンカーを打ち、飾りやハンモックをつるせるようにしてある

1. 上階はプライベートゾーン。寝室の一角を壁で仕切って、妻用の読書室とした。クラシカルなシアターチェアを設置。本棚は天井までの作りつけにした。好みの雑貨も飾ってある 2. ヨットの船室を思わせる半個室は夫の趣味の部屋 3. 手持ちの収納家具に合わせて間仕切り壁を作ってもらったウオークインクローゼット 4. 生活動線を意識し、洗面所はウオークインクローゼットの向かいに配置。洗濯や片づけがスムーズに行える。

低層マンションの2・3階メゾネット。玄関のある2階がLDK、3階は寝室や浴室、夫妻の趣味に浸れる半個室がある。

住まいのQ&A

住み替え成功の秘訣は?
物件探しと並行して、家具や家電選びを早めに進めた。それらを盛り込んだ設計ができ、イメージのずれやスペースの無駄を防げた。
20~30年後は?
昔は海のそばにも憧れたが、今は便利で住み心地のいいここに居続けたい。80代でも階段を上り下りできるよう足腰を鍛えます(笑)。

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  • 所在地神奈川県横浜市
  • 家族構成Kさん・夫(52歳・会社員)、妻(51歳・会社員)
  • 構造RC造
  • 延べ床面積、間取り88㎡、2LDK+屋上

協力:『日経おとなのOFF』(日経BP社)
(マンションのリフォームでは、管理組合、入居者等への届け出、調整が必要な場合があります)

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