国交省の「標準引越運送約款」の内容をチェック
利用者が引越し業者とのトラブルを防ぐために、国土交通省は一定のルールを定め、「標準引越運送約款」(以下:標準約款)を用意しています。適用範囲、見積り内容、運送の引受や荷物の性質の確認、運賃やキャンセル料、責任や損害賠償など、利用者の知りたいことについてほぼ示されているといえます。引越し事業者の見積書や契約書の書式は各社それぞれですが、標準約款に基づいて作成されています。ですから、そのポイントをチェックしておきましょう。
まずは、輸送してもらえる荷物の範囲。引越し業者は、どのようなものでも運んでくれるというイメージがあります。しかし、標準約款には、引越し業者が荷受けを拒否できるものが明確に列挙されています。現金、有価証券、宝石などの貴重品や、危険物、動植物といった特別な管理を必要とするものなどです。これらについても輸送を引き受けてくれるケースもありますが、一般的には自分たちで運ぶ必要があります。
次は、料金についてです。引越し料金は大きく、運賃、人件費等実費、付帯料金の3つで見ると分かりやすでしょう。このうち運賃については、国土交通省の各運輸局が距離や時間、トラックの大きさ別に基礎運賃や割増料金を設定しています。引越し業者は、それを営業所などに明示することが標準約款に盛り込まれています。ただし設定料金から上下10%の割増・割引は事業者側で決めることなどから、引越し業者によってそれなりの違いが出ることがあります。
人件費は、引越し作業員の費用です。何人の作業員がどのくらいの時間、作業に当たるかで決まります。それに加えて梱包資材などの料金が別途加算されることもあります。これらに関しては運輸局の目安がなく、どのくらいの作業員が必要なのかは引越し業者の判断次第なので金額がかなり異なることがあります。
付帯料金もしっかりチェックしたい項目です。人件費の中に一般的な引越し作業の料金は含まれますが、それ以外のサービスについては別途費用がかかります。その代表が荷造りです。実は、標準約款では荷造りは依頼者が行うことを原則としています。しかし、引越しのプロではない依頼者が適切に荷造りを行うのは難しいこともありますから、実際には、多くの引越し業者が荷造りや荷ほどきを付帯サービスとして提供しています。
こうした引越しに付随する付帯サービスメニューとしては、大型家具の解体や組み立て、エアコン等の取り外し・取り付け、不要品の廃棄、季節品の一時預かりなどがあります。さらに電気・ガス・水道などの光熱インフラの開栓・閉栓や、電話やインターネット回線の移転手続きなど、さまざまな手続きの代行業務もメニューに持つところまであります。
もっとも、すべての見積もりが、上記の3つに分けて表示されるわけではありません。運賃と人件費を合わせて基本料金などといった表記をしているケースもあります。そうした場合、基本料金の中にどのような作業が含まれているのかを確認したうえで、多彩な付帯サービスの中から、どこからどこまでを自分たちで行い、なにを任せるかといった希望を決める必要があります。そして、見積もりを比較する際には、自分の求めるサービスをすべて含んだ総額がいくらになるかをチェックするだけでなく、作業員の人数やトラックの大きさも勘案する必要があります。