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住み替えは介護の必要性と費用がポイントに

人生100年時代!どこでどう暮らす?(第2回)

この記事の概要

  •  連載第1回のとおり人生100年時代を迎え“老後”と呼ばれる期間がかつてないほど長くなっています。昔のような大家族で暮らすのが当たり前であれば、高齢になっても家族の世話を受けながら最期まで自宅で暮らすことが可能でした。しかし、世帯構成の変化が進んだ現在、老後をどこでどう暮らすかは早目に考えるべき重要な問題になってきています。

老後の生活のイメージ画像

子育て中は理想の住まいだった一戸建てやファミリータイプのマンションも、高齢の夫婦、あるいは単身の高齢者が住み続けるのに適しているとは限りません。面積が広すぎる、庭の手入れが大変、バリアフリーでない、十分な防犯対策が取れないといった住まいそのものに関する問題。病院が遠かったり、買い物が不便だったりという環境の問題。こうした問題が負担になるようなことがあれば、住み替えを検討する必要があるでしょう。

介護が必要になったとき、どこで介護を受けるかも考えておかなければなりません。家族以外のプロに介護をしてもらいたいのであれば、介護付きの施設へ住み替えることになります。

高齢者の住まいを考えると、基本的には図1のように4つのパターンになります。従来の自宅で暮らし続けるパターン①から、④のようにまず高齢者向けの住まいに引っ越し、次に介護付き施設に移るパターンも考えられます。それぞれにどんなものがあるのか知っておかなければ、住み替えプランは立てられません。

人生100年時代の住み替えパターン

図1)人生100年時代の住み替えパターン

高齢者の住まいにはどんなものがある?

まずは自立している高齢者のための住まいから説明しましょう。高齢になってくると、介護は必要なく自立した暮らしができても、健康に不安が出てきたり、火の取扱いなどが心配になったりします。食事の支度などの家事がおっくうになることもあります。そうした段階の住み替え先候補には、高齢者向け分譲マンション、住宅型有料老人ホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者住宅などがあります。それぞれ説明しましょう。

高齢者向け分譲マンション

独立した各戸に居室・キッチン・トイレ・お風呂があります。室内はバリアフリーで、見守り(安否確認)サービスや、フロントサービス(来客の取り次ぎなど)があるところが多く、レストランや温泉施設、フィットネスクラブなどを備えているところもあります。 一般のマンションと同じように、一括払いで所有権を購入し、管理費や修繕積立金を毎月負担します。そのほか、食事などのサービスに対する利用費がかかります。同じような立地の一般のマンションに比べて価格や管理費等は高めなことが多いようです。

住宅型有料老人ホーム

建物の中に居室と食堂・リビングルームなどの共用スペースがあります。食事付きですが、居室にミニキッチンがあるところもあります。バリアフリーで、見守りサービスなどがあるのは分譲マンションと同じですが、有料老人ホームは終身利用権を得る形になります。終身利用権は一代限りで、相続することはできません。毎月の費用として食事代や共用部分の光熱費、各種サービスの利用費などがかかります。一時金はゼロのところもあれば1000万円以上のケースもあり、施設による差が大きくなっています。毎月の負担は30~50万円程度です。

ケアハウス

60歳以上で、身の回りのことは自分でできるけれど一人暮らしが不安な人や、身体機能が低下して独立した生活が難しい人などを対象にした住まいです。建物の中に居室と食堂などの共用スペースがあります。毎月の費用は食費、管理費、水道光熱費、事務費などで10~20万円程度。入居時に一時金が必要なところもあります。建築費の4分の3を国と市町村が負担しているため、有料老人ホームに比べると費用は安くなっています。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

60歳以上の人の向けの賃貸住宅です。居室の面積が一定以上であること、バリアフリーであること、見守りサービスと生活相談サービスを行うことが義務づけられています。食事の提供は義務ではありませんが、多くのサ高住で食事サービスを受けることができます。毎月の費用は家賃と食事代などで15~25万円程度。入居時に家賃2~3カ月分の敷金を支払いますが、退去時に返還されます。

いずれの施設も、介護が必要になった場合は、外部の事業者の介護サービスを利用して施設内で在宅介護を受けることになります(図1のパターン③)。介護度が重くなった場合には、介護付きの施設へ移らなくてはならないこともあります(図1のパターン④)。

高齢者向け住まいの費用のイメージ

図2)高齢者向け住まいの費用のイメージ

介護付きの施設にはどんなものがある?

次に介護付きの施設の種類について説明します。介護付きの施設には、特別養護老人ホーム、グループホーム、介護付き有料老人ホーム、介護付きケアハウスなどがあります。これらは要介護・要支援の人が対象で、建物内に常駐している介護スタッフによる介護が受けられます。毎月の居住費・食事代等に加えて、要介護度と施設の種類に応じた公的介護保険の自己負担分を施設に払います。どのくらいの介護度の高齢者を対象としているのかと費用でイメージ図を作ってみました。参考にしてください。

費用と介護度の関係のイメージ

図3)費用と介護度の関係のイメージ

特別養護老人ホーム(特養)

常時介護が必要な人のための施設です。居室は4人部屋が中心ですが、新しく建築された特養には個室やユニット型(食堂などを個室が囲む形)のものもあります。入居一時金は不要で、居住費と食費を合わせて月8~10万円程度で利用できるため人気が高く、入所待ちが100人以上というケースも珍しくありません。現在では新規に入所できるのは要介護3以上の人に限られています。

グループホーム

認知症の人5~9人が1ユニットになって介護スタッフとともに生活する施設で、居室は個室。1ユニットごとに食堂やリビングルームがあります。入所者もできる範囲で家事を分担し、スタッフと一緒に買い物をしたり趣味を楽しんだりすることによって認知症の進行を抑える効果が期待できます。毎月の費用は12~15万円で、入居時に保証金が必要なところもあります。

介護付き有料老人ホーム

有料老人ホームのうち、介護スタッフが常駐するなど一定の条件を満たして都道府県から「特定施設」の指定を受けたものが介護付き有料老人ホームです(それ以外が住宅型有料老人ホーム)。居室は個室が中心で、2人用の広い居室を備えたところもあります。居室の広さや食堂などの共用部分の充実度は施設ごとに違い、それによって入居一時金はゼロから数千万円まで幅があり、毎月の費用も10~50万円以上と施設によって大きく異なります。

介護付きケアハウス

ケアハウスにも介護付きのものがあり、居室は個室でユニット型が多くなっています。介護付き有料老人ホームより費用は安くすみますが、施設数は多くありません。

「住まい」「介護」のどちらを求めるのか

今回、紹介したように高齢者向けの住まいや施設はいろいろあります。住み替え先を考えるに際、まず考えるのは、「住まい」と「介護」のどちらを求めるかということです。住まいを求めるのであれば、立地や居室の広さ、共用部分の充実度などが選択のポイントになります。

介護を求める場合、施設を自分で選んで入居するとすれば、介護付き有料老人ホームか介護付きケアハウスになるでしょう。介護付き施設は建物や設備などのハード面だけでなく、介護や看護の手厚さなどソフト面も重要です。

一般的に高齢者が住み替えを考え始めるのは75歳くらいといわれていますが、できればそれより前に検討したいものです。というのは、住み替えには高齢者向けの住まいや施設の見学や住み替えにかかる費用の試算が必要で、それらは元気なうちでないとできないからです。まずは、住まいや介護について自分はどうしたいのかを考えてみてはいかがでしょうか。

※文中の金額は執筆者の取材等による目安です。

執筆

馬養 雅子 (まがい・まさこ)

ファイナンシャルプランナーとして、金融商品や資産運用などに関する書籍や新聞・雑誌記事の執筆、金融関連企画へのアドバイス、講演などを行う。高齢者へのアドバイスのため、多数の高齢者向け施設に足を運び現状を確認。老後の暮らし方についても情報を発信している。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年1月時点の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。