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宅配ボックスニーズの変化と設置導入について考える

「不動産投資」管理の重要なポイント (第31回)

公開日:2021年08月31日

この記事の概要

  • これまでも賃貸住宅の入居者に人気のあった宅配ボックス。所有物件に今後設置すべきなのか悩まれているオーナー様も多いと思いますので、ニーズの変化とともに設置についての考え方をまとめてみます。

宅配ボックスニーズの変化と設置導入について考える

1.コロナ前の宅配ボックスニーズ

コロナ前の宅配ボックスの使われ方は、在宅しているときに家事や仕事で手が離せない、配達員に玄関先で会いたくない等で利用する方もいましたが、一番のニーズは留守のときに宅配便の受け取りをするということでした。

統計的にも、総務省が行っている家計消費状況調査によると、ネットショッピング利用世帯の割合は2017年ごろから急増しており、それに伴って宅配事業者の荷物の取扱個数も増え、再配達も増加しました。

ついには宅配ボックス設置物件が増えるのを待っていては問題解決が間に合わない状況となり、国土交通省と経済産業省が連携して様々な対策を行いました。宅配事業者とネットショップ事象者が協力し、メールやスマートフォンのアプリを通じて購入者と配達日時の調整を行う仕組みが構築され、駅やコンビニ等への宅配ボックスの設置や、コンビニ店頭での受け取りも進みました。この施策により、宅配ボックスが無い物件に住んでいても在宅時に合わせて配達時間を指定したり、不在時に届いた荷物を受け取りやすくなりました。

しかしながら、「毎回自宅まで大きな荷物を運ぶのは大変」「受け取り日時の調整を頻繁にするのは面倒」などの理由から、ネットショッピングを頻繁に行う人にとっては、依然として宅配ボックスは無くてはならない人気の設備でした。

2.コロナ過で何が変化したのか

その宅配ボックスニーズは、コロナ過で大きく変化しました。

新型コロナウイルス感染が拡大し、買い物のための外出を控える人が増えたことや、お店自体が時短や自粛になったことから、ネットショッピングの利用者がさらに急増したのです。前出の家計消費状況調査によると、ネットショッピング利用世帯の割合は、2人以上の世帯で2020年5月に50%を超え、以降も高水準を維持しています。

また、年代別では特に65歳以上の世帯でのネットショッピング利用が著しく伸びており、30%を超えるようになっています。総務省の情報通信白書によると、60代以降のインターネット利用率はコロナ前の2019年に大きく上昇しており、インターネットを使えるようになったシニア世代がコロナ禍でネットショッピングに挑戦したのであろうことが伺えます。

ネットショップで購入した商品を、コロナ感染予防のために非対面で受け取りたいというニーズが増加し、これまでさほど宅配ボックスを使わなかった層にも利用されるようになり、人気が高まりました。

宅配ボックスのイメージ

3.「置き配」の広まり

世の中には別の流れも起こっていました。国交省と総務省が再配達削減のために行った対策の一つ、「置き配」がコロナ過で急速に広まったのです。コロナ前は「置き配」は盗難や不在が分かってしまうことへの不安を感じるという声が多く、なかなか広まりませんでした。しかし、新型コロナウイルスの世界的流行の対策としてネットショップ大手が「置き配」を推奨したことがきっかけとなり、世間に周知され、感染予防のため非対面で受け取りたいというニーズの強まりと相まって広く利用されるようになったのです。

「置き配」が一般的になって来ると、玄関前などに設置できる宅配バッグが商品化されました。盗難防止のためにワイヤー等で固定でき、鍵がついているものが一般的です。種類も機能も多種多様で、コンパクトに畳め、防水機能があり、万一の盗難の際の保険が付いているものなどがあり、宅配ボックスが無い賃貸物件で利用者が増えています。

しかし、便利な「置き配」にも弱点があります。オートロックが無く、自宅の玄関前まで配達員が来られる作りの物件でなければ、宅配バッグを設置しても不在時に荷物を入れてもらうことが出来ません。また、廊下にある程度の広さが無い場合は、他の入居者の通行の邪魔になり苦情が出てしまいますし、避難通路が頻繁にふさがれるような状況では、オーナーや管理会社としても設置を許可する訳にはいきません。

4.宅配ボックスの設置を検討する際の考え方

これから宅配ボックスの設置を検討する場合には、ご自分の物件に必要なのかどうかを、入居者層や家賃帯や間取りを踏まえて考えるべきです。

ワクチン接種が広まってくれば、非対面受け取りニーズは落ち着いて来るものと思われますので、例えば在宅が多いシニア世代が多い物件は対面受け取りが可能になって来るためニーズは低いと思われます。

単身の若者向けで家賃が安い物件も、宅配ボックス設置費用を家賃に上乗せしてしまうとむしろ退去に繋がる可能性があります。これらの入居者層はネットショッピングに使う金額自体も平均より低く、駅やコンビニで受け取る体力も十分あると思われますので、宅配ボックスを設置する費用対効果は低いでしょう。

費用をかけても設置したほうが良い物件は、オートロックがある物件です。家賃が高めの物件が多いためネットショッピングを頻繁にする層が入居者ターゲットとなりますが、「置き配」が出来ないことが入居のネックになるからです。エントランス付近に設置できるスペースがあれば、ぜひ検討して頂きたいと思います。共働きのカップルやファミリー用の間取りであればニーズはさらに高まりますので、空室対策に効果的です。

また、様々な空室対策を既に行っており更なる対策をしておきたいという場合、家賃に転嫁しないのであれば、入居者層や家賃帯や間取りに関わらず宅配ボックスを設置するのは良い方法であると思われます。ネットショッピングを少しでもする入居者にとって、宅配ロッカーは「あったら嬉しい設備」であることに間違いはないからです。

今や年代に関わらずネットショッピングが当たり前の時代となっていますが、設置に費用が掛かるだけでなく、維持管理に継続的に費用が掛かるものもあります。また、誤配時や長期間受け取りされない場合には、オーナーや管理会社による対応が必要になり、管理の手間がかかります。物件ごとに必要性は異なりますので、費用対効果をしっかり検討してから導入することをお勧めします。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年8月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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