閉じる

ページの先頭です

コロナ禍の投資用不動産における法人社宅ニーズの変化について考える

連載タイトル:「不動産投資」管理の重要なポイント(第23回)

公開日:2020年12月24日

この記事の概要

  • 賃貸不動産経営において、社宅としての法人契約は重要な地位を占めていますが、コロナ禍において社宅ニーズに変化が生じています。オーナーとして注意しておくべきことを整理してみましょう。

コロナ禍の投資用不動産における法人社宅ニーズの変化について考える

1.法人契約とはどんな賃貸借契約のことか

賃貸不動産経営において「法人契約」と呼ばれる賃貸借契約の中には様々な形態があり、その中の一つに、比較的大手の企業が従業員の社宅として法人名で行う賃貸借契約があります。今回は主にこの「社宅としての法人契約」について考えてみます。

事業所が色々な地域に複数あり、転居を伴う人事異動が多い企業には、従業員の福利厚生の一環として社宅制度があるところが多いです。そういう企業が民間の居住用賃貸物件を住戸単位で賃貸借契約し、従業員を住まわせるのが「社宅としての法人契約」という形態となります。

賃借人となるのは法人ですが、借りるお部屋を決めるのは企業の人事部や総務部などの社宅の担当者ではなく、住まう従業員が社宅規定の範囲で好みのお部屋を探すことも多くなっています。

2.法人契約のメリット、デメリット

法人契約のメリットとして挙げられるのは、家賃支払い能力の高さです。社宅制度がある、多くの人が名前を知っているような大手企業や上場企業、設立してから長く続いている企業は個人と比べて家賃を滞納したり、うっかり支払い忘れるなどの事態が起こりにくいと考えられるため、賃借人として安定しています。金銭面以外では、入居者の生活マナーに関することで何か問題が起こったときに、賃借人としての法人に相談できることもメリットに挙げられます。

デメリットとしては、入居者一代限りの契約の場合に転勤で解約になったり、入居者の退職を理由に解約となる場合が考えられます。退職の場合は入居者個人と契約を結び直す方法もありますが、家賃補助が無くなると入居者の予算と家賃が合わずに解約となってしまうことが多いです。

また、法人側の業績不振などで社宅の制度が変更や廃止になって、解約となるリスクもあります。同じ賃貸不動産で複数戸借りてもらっていたために、一気に解約となると急に空室率が上がり、賃貸経営が傾いてしまうこともあるので、注意が必要です。

法人社宅

3.コロナの影響における社宅ニーズの変化

かつて、リーマンショックや東日本大震災のときに、外資系企業を中心に社宅としての法人契約が一気に解約となったことがありました。新型コロナウイルスの影響でも法人の社宅ニーズに変化が起きていますが、その理由がリーマンショックや震災のときとは違い、景気の変動だけではないところに注目すべきです。

まずはどんな変化が起こったかを見てみましょう。緊急事態宣言の出ていた4月、5月は決まっていた人事異動を一旦保留にした企業が多数あり、例年より社宅のニーズが減少しました。緊急事態宣言解除後には、待機していた新入社員の配属が行われたため、社宅のニーズが増加しました。その後はまた減少していますが、その理由は業種、職種によって大きく異なります。コロナ感染リスクが高い当面の間は転居を伴う人事異動を延期もしくは縮小する、コロナ禍で導入された在宅勤務を今後も継続することが決定したため単身赴任社宅の必要が無くなった、自国で待機中の外国人実習生が入国できるようになるまで社宅の用意を見合わせるなど様々です。

実際に法人社宅の契約を多く扱う不動産業者に聞いてみると、社宅の依頼件数は例年の2割〜3割減になっているという声が多く、理由は違えど全体的に社宅ニーズが減少していることは間違いありません。

4.オーナーがやっておくべきこととは

このような状況の変化に対し、オーナーがやっておくべきことを考えてみます。

まずは所有されている賃貸物件に法人契約の住戸があるかどうかを確認し、企業自身やその業種、入居者の職種がコロナの影響を受けているか、今後受けそうかを確認しておきましょう。コロナの影響がほとんどない業種や、むしろ業績が良くなっている業種、在宅勤務ができない職種もありますので、法人契約といってもみんな同じではありません。

また、多くの従業員が勤める企業の事業拠点が近隣にあるなどで、同一法人名で複数戸の賃貸借契約がなされている物件の場合は、事業所や工場の再編、移転、勤務形態の変更に伴う影響が大きくなりますので、しっかり状況を調べておきたいものです。

法人契約の割合が多い物件に関しては、先を見据えて個人契約にもターゲットを広げておく必要があると思います。個人契約の賃借人と法人契約の賃借人では、家賃や初期費用など物件探しの条件が異なる場合もあるため、普段入居者探しを依頼している不動産会社に相談してみると良いでしょう。

コロナ禍となってから身近な暮らしそのものや、暮らしの場としての賃貸住宅に対する関心が高まっています。その関心の高さをプラスに変えられるよう、様々なニーズの変化にしっかりと対応していきたいものです。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年12月24日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

バックナンバー

    閉じる×
    ページの先頭へ