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賃貸住宅管理業の法制化で何が変わるのか。オーナーが知っておくべきポイントとは?

連載タイトル:「不動産投資」管理の重要なポイント(第21回)

公開日:2020年10月30日

この記事の概要

  • 2020年6月12日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が法案として成立し、今まで直接的な法的規制の無かった賃貸管理業が、とうとう法制化されることになりました。管理に関する知識は、居住用の賃貸不動産をお持ちのオーナーにとってもますます重要なものとなってくると思われますので、今のうちからしっかり学んでおきましょう。

賃貸住宅管理業の法制化で何が変わるのか。オーナーが知っておくべきポイントとは?

1.賃貸管理業が法制化された背景

不動産業者の看板や広告には、「国土交通大臣免許(2)○○号」「東京都知事免許(5)××号」などという宅地建物取引業の免許番号が記載してあります。宅建業とは不特定多数の人を相手として、宅地又は建物の売買や賃貸などの行為を反復・継続して行うことを指し、それを仕事とする場合に免許が必要となるのです。

しかし、同じ不動産業者が仕事として行っていたとしても、賃貸管理業にはこれまで直接的な法規制も監督官庁も無く、免許も必要ありませんでした。そもそも有償での賃貸管理の歴史自体が浅く、賃貸仲介をしている不動産業者がついでに家賃の滞納督促や設備故障の修理手配などを無償で行っていた時代が長かったので、「賃貸管理業」という概念すら昔は無かったのです。

国土交通省が2010年に行った「民間賃貸住宅に関する市場環境実態調査」によると、民間賃貸住宅のオーナーのうち、契約も管理もすべて業務委託していると回答した人は約65%でした。近年その状況が変化しつつあり、オーナーの高齢化や、相続等に伴う兼業オーナーの増加、入居者の要求レベルが上がり管理業務自体の難易度が上がったことなどから、管理業務を委託しているオーナー数は増加傾向にあります。

賃貸住宅管理業の重要性が増す一方で、管理をめぐるトラブルが増加し、社会問題ともなったため、賃貸管理業の法制化が必要となったのです。

2.賃貸管理業の登録制度とは

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」は、大きく2つに分かれています。

賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度の創設と、いわゆるサブリース契約の適正化のための措置等です。今回は、管理会社に賃貸管理を委託している全てのオーナーに関係のある、賃貸管理業の登録制度に焦点を当ててみます。

国土交通省は今回の法制化に先駆けて、2011年12月より、任意の「賃貸管理事業者登録制度」を行っていました。今回の法制化に伴い任意の登録制度は無くなり、管理戸数200戸以上の全ての賃貸管理業者は、国土交通省に登録しなければ賃貸管理業を営めないことになります。

今まで曖昧だった「何をもって賃貸管理業というのか」ということについても、「賃貸住宅の維持保全」「家賃・敷金等金銭の管理」を行う事業が賃貸管理業であると定義されました。

賃貸管理業

3.法制化で何が変わるのか

賃貸管理業の登録制度に関しては、2021年6月19日に法律が施行される予定であり、賃貸管理業者に四つの義務が発生します。

一つ目は、賃貸管理を行う事務所に業務管理者を配置しなければならなくなります。業務管理者とは賃貸住宅管理業務の知識や経験等を有する者のことで、賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士の資格者となることが予定されています。法律施行後は、業務管理者がいない事務所では賃貸管理業務の委託契約が締結出来ないことになります。法律の施行をもって、賃貸不動産経営管理士は晴れて国家資格となる予定です。

二つ目は、管理会社が賃貸管理業務の委託契約を締結する前に、具体的な管理業務の内容や実施方法等について書面を交付し、重要事項説明を行うことが必要となります。

三つめは、管理する家賃等について、自己の固有の財産と分別して管理することが必要となります。

四つ目は、賃貸管理業務の実施状況等について、オーナーに対して定期的に報告することが必要となります。

4.法制化に際し、今後オーナーは何をするべきか

現在管理会社に賃貸管理業務を委託しているというオーナー様で、「管理会社に何の業務を委託しているのか」をしっかり把握されている方は、案外少ないのではないでしょうか。

国土交通省の「賃貸住宅標準管理委託契約書」によると、管理業務は①契約管理業務②清掃業務③設備管理業務の3つに分類されています。今回の法制化の管理業務定義の、「賃貸住宅の維持保全」は②と③、「家賃・敷金等金銭の管理」は①に当たります。

賃貸管理業務の内容は多岐に渡り、①の契約管理業務には、設備故障の修繕や、入居者間の騒音や居住マナーに関する苦情対応、契約更新に関する業務、解約時の敷金精算業務などが含まれます。

②の清掃業務についても、拭き掃除や掃き掃除だけでなく、機械を使った床清掃や、ゴミ出し、ガラス拭きなど、建物ごとに必要な作業の内容は変わってきます。

③の設備管理業務は、エレベーターや消防設備の点検、増圧ポンプの点検、受水槽の点検清掃など、建築基準法や消防法、水道法などの法律で定められているものが多数あります。オーナーには所有者責任があるため、知らなかったでは済まされません。

管理会社を比較検討する際に、「管理委託料○%」が高い、安いという話をお聞きしますが、そもそも管理会社ごと、物件ごとに管理委託内容が違うため、管理料率だけで単純に比較することはできません。現在管理会社に業務を委託しているという方は、管理委託の内容、項目や頻度などをきちんと確認し、必要があれば委託内容の追加や変更を検討すると良いでしょう。

現在自主管理で、これから管理業務委託を検討するという方は、管理委託契約の締結時期によっては、今回の法律が関係してきます。制度に関する考え方や具体的なガイドラインについては今後示される見込みですので、動きを注視していきましょう。

賃貸住宅管理業の登録制度は、賃貸住宅における良好な居住環境の確保を図るとともに、不良業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図るために創設されました。

今後入居者側の意識も高まり、管理業務の内容や質が問われるようになれば、管理の良し悪しが家賃に反映し、建物価値にも影響してくるでしょう。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年10月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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