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高齢の入居者とうまくつきあうのが上手な不動産管理のコツ

「不動産投資」管理の重要なポイント(第14回)

公開日:2020年3月30日

この記事の概要

  • アットホーム株式会社が四半期ごとに実施している、景況感調査によると、「高齢者からの問い合わせが増えた」という不動産業者からのコメントが増えており、高齢者を積極的に受け入れるかどうかで、今後の賃貸経営にも差が付いてくると思われます。高齢者のお部屋探しのニーズと、実際に高齢者を受け入れて成功しているオーナーの実例から、高齢入居者を賃貸経営に生かす方法を考えてみましょう。

“やり手投資用不動産オーナー”の高齢入居者攻略法とは

人生100年時代を向かえ賃貸住宅に住みたい高齢者が増えていくことは間違いありません。若い入居者をターゲットとすると、人気の設備を導入したりデザイン性の高い内装にする必要があるなど、何かとコストがかかります。それに比べて、健康な高齢者の受け入れについては、一般的にそこまでのコストはかからず、長期に入居してもらえる可能性が高くなるため、賃貸経営も安定する傾向です。したがって、将来のことを考えて、データを読みとり、万が一の際の「高齢者の健康状態に対応する方法」等をあらかじめ考慮することは大切です。

1.高齢者がお部屋探しをする動機やニーズとは

先に挙げた調査の最新版(2019年10月~12月期)の結果によると、高齢者がお部屋を借りようとする動機で一番多い回答は「今の住まいの立ち退き」で、26%となっています。長年住んでいた建物が老朽化して取り壊しとなり、仕方なく次の住まいを探している方が多いことが分かります。二番目は「生活保護の住宅扶助額に収めるため」が15%となり、収入が最低生活費に満たなくなった高齢者が、公的扶助が受けられるお部屋を探していることが伺えます。続いては「持ち家を売却するため」が10%、「家族・親族との近居(同居)」が9%となっており、配偶者との死別や健康面の不安、収入の減少など様々な理由から、お部屋探しをしているであろうことが想像できます。

また、高齢者が住まいを探すときに重視する点について一番多い回答は「家賃」が72%となっており、限られた収入や貯蓄から支払っていける家賃をしっかり計算していることが分かります。二番目は「所在階」が38%、三番目は「家族・親族などとの近居」が27%、四番目は「病院やスーパーなどの周辺環境」が24%であり、通勤・通学のために立地や最寄り駅からの距離を重視する傾向のある若い人とは、お部屋探しの優先順位が異なる様子が分かります。

不動産店のコメントからは、自分自身の長生きリスクに備え、健康なうちに暮らしやすい場所に引っ越しをしようとする高齢者が増えていることが伺えます。インターネットを駆使してお部屋探しをしている高齢者も多くなっているようです。

お持ちの投資用不動産が通勤や通学に不便な立地にあったり、一階がなかなか決まらない場合などに、「元気な高齢者」をターゲットとして検討する余地は大いにありそうです。

2.高齢入居者を受け入れているオーナーが気を付けていること

高齢者を積極的に受け入れしているという投資用不動産オーナーが、契約の際に気を付けていることをお聞きしてみました。

家賃滞納リスクを無くすために、家賃債務保証会社に必ず加入して頂いているというオーナーが多いようです。高齢者は長期に入居する人が多いため、賃借人と同年代の方を連帯保証人にするのは避けたほうが良いとの考えです。

また、同じくらい重要視しなくてはならないのは、何かあったときの緊急連絡先だそう。その選定基準は連帯保証人とは違い、経済力は二の次で、一番親身に賃借人のことを考えてくれるご親族になってもらうのが肝心とのことです。そして、それは多くの場合、息子さんではなく娘さんなのだそう。親思いの専業主婦の娘さんがいた場合、連帯保証人には向きませんが、緊急連絡先としては適任です。高齢者にお部屋を貸す際の緊急連絡先は身元引き受け人としての意味があり、何かあったときに相談出来たり、現地に来てもらうことが出来る人が良いのです。

また、高齢者にお部屋を貸す際にオーナーが気にするのは孤独死のリスクですが、見守りシステムを導入するのはハードルが高い場合があります。健康な高齢者に室内で倒れることを想定した設備を受け入れてもらうのは、急には難しいでしょう。

そういう場合に便利なのが、賃借人が加入する火災保険に孤独死保険が付帯している商品です。火災保険なら年代関係なく全ての賃借人に加入して頂くものなので、健康な高齢入居者にも気兼ねなくお勧め出来るのも良いところです。

孤独死のリスクをカバーするために必要な補償内容は、主に二つあります。原状回復費用が高額になった場合のための特殊清掃費用、残った荷物を処分するための遺品整理費用です。その二つが補償内容に含まれている他、遺品整理費用については病院などで最期を迎えられた場合にも保険金が支払われるもの、そして、保険金請求手続きを賃貸人が行うことが出来る特約が付いているものを選びましょう。

なお、参考までに述べておきますと、日本少額短期保険協会が公表した孤独死レポート(2019年5月)によると、年齢別の孤独死の割合は65歳未満が過半を占めています。また、総務省の死亡の場所別にみた年次別死亡数(2017年)によれば、病院等の施設内で亡くなる人が圧倒的多数で84.7%、自宅で亡くなる人は13.2%となっています。高齢入居者を受け入れたからと言って、必ずしも孤独死のリスクが高まるとは限らないようです。

トイレの画像

3.高齢者入居者の健康状態の変化に対応する

入居したときには健康だった高齢者も、長く住むうちに心身の健康状態は当然ながら変化していきます。高齢者の受け入れに成功しているオーナーは、そのリスクヘッジも抜かり無く行い、安心できる状態で長期入居を実現しています。

具体的には、高齢入居者の健康状態に合わせて、緊急連絡先になっているご親族やご本人と相談しながら、早めに廊下やトイレや浴室に手すりを設置することと、見守りシステムを導入して何かあったときに早期発見出来るようにすることだそうです。

高齢者は転倒による怪我がきっかけで身体機能が衰えてしまい、自立した暮らしが困難になってしまうことがあります。高齢入居者の暮らしのためだけでなく賃貸経営の安定のためにも、手すりの設置を行い、転倒事故の早期発見を理由に見守りシステムの導入をお願いすれば、抵抗なく受け入れて頂ける可能性が高くなり、転倒以外の万一の事態が起きても早期発見することが可能になります。退去時にかかるリフォーム費用を思えば、オーナー負担で手すりを設置したとしても、投資として十分見合うのだそうです。

そして、そのような対応の際に、高齢入居者やご親族と自然なコミュニケーションが生まれることが、更なるリスクヘッジへと繋がるそうです。高齢者の入居を受け入れれば、自立した生活が難しくなったりしたときに、高齢者施設への移動やご親族との同居を決断して頂くタイミングがやって来ます。オーナーへの感謝の念や、日頃のコミュニケーションがあれば、そういうときにスムーズに解約して頂ける可能性が高まるとのこと。入院先の病院で亡くなった場合でも、荷物の整理や賃貸借契約の解約手続きを迅速に行って下さったり、万一の時にすぐに駆けつけて下されば、オーナーの心配事はかなり軽減されるのだそうです。

最初にもお話ししましたが、、健康な高齢者の受け入れは、賃貸経営が安定します。将来のことを考えて、今のうちに受け入れを検討しておくのも良いのではないでしょうか。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年3月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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