消費税増税に伴い、オーナーが対応すべきポイントを考える

「不動産投資」管理の重要なポイント(第7回)

この記事の概要

  • いよいよ、10月1日より消費税が10%に増税される状況となり、管理会社は様々な対応に追われています。投資用不動産をお持ちのオーナーが知っておくべきポイントや、自主管理オーナーが自ら対応すべきポイントについて解説します。

消費税増税に伴い、オーナーが対応すべきポイントを考える

1.「免税事業者だから消費税は受け取れない」という勘違い

消費税の具体的な話の前に、まずはよくある勘違いについて触れたいと思います。自主管理オーナー様の中には、消費税をもらえるのにもらっていない方が結構いらっしゃるのです。整備された月極駐車場を仲介する際に、「うちは消費税は関係ないから無しでいいよ」と言われることがありますが、それは「免税事業者だから関係ない」という意味で仰っている場合がほとんどです。原則、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合に消費税の「免税事業者」となるのですが、課税対象になるものには消費税を含めて代金を受け取って良く、その受け取った消費税の納税が免除されるということになります。つまり、免税事業者のオーナー様も消費税を受け取って良いのです。

今まで勘違いしていて消費税をもらっていなかったという方や、相続で取得した時に消費税をかけておらずそのままになっているという方は、この増税をきっかけに消費税をいただくのも一案かと思います。既存の賃借人に交渉することに抵抗がある方は、新規の契約から消費税をいただく形にすれば良いと思います。10%の収益アップのチャンスは、不動産投資を行う上ではとても貴重です。

2.課税になるもの、ならないものを確認しよう

アパートに駐車場が付属していることはよくありますか、同じように見えても消費税が課税されている場合とされていない場合があります。消費税の課税のルールについて、オーナー様に関係がある内容に絞って分かりやすく整理してみたいと思います。

賃料、管理費・共益費、礼金、更新料:住宅に関わるものは社会政策上非課税ですが、店舗や事務所などに関わるものは課税です。

土地:地代は非課税です。整備された駐車場代や駐輪場代は課税ですが、賃貸住宅に付属しているもの(駐車場1台付き、または1台込み等の表示の場合)は、賃料や共益費と同じ扱いとなり非課税となります。

敷金、保証金:預り金なので非課税ですが、償却などで返還しないものは、賃貸住宅以外は課税です。

水道代、電気代、設備使用料:基本課税ですが、住宅の家賃に含まれて請求される場合は非課税の扱いです。

仲介手数料、更新事務手数料、業務委託料、いわゆる広告料など:住宅かどうかに関わらず課税です。

居住用の不動産をメインに投資を行われているオーナー様は、売り上げに消費税が課税されないのが普通のことになっていると思いますが、「消費税は課税が原則であり、住宅は社会政策上特別に非課税の扱いになっている」ということを念頭に置いて考えると、課税、非課税が理解しやすいと思います。

消費税増税のイメージ

3.消費税増税でオーナーがすべきこととは?

消費税の課税対象になる項目は確認できましたが、その全てが今回当たり前に増税出来るかというとそうではありません。新規契約は問題ありませんが、既存契約は賃貸借契約書の内容確認が必要です。特に、今まで消費税をもらっておらずこれを機会にもらおうという方は、契約書をしっかり確認してください。消費税の欄が消されていたり、「無し」と記載されている場合は、「本来課税すべきものをしていなかったので、10月から消費税を頂きたい」というお願いをして、賃借人の承諾を得る必要があります。

今まで8%の消費税をもらっていても、賃貸借契約書の表示が「税込」となっている場合はどうでしょうか?オーナー側からすれば、「契約時の税率で計算した場合の金額であり、税率が10%に上がれば当然金額が変わる」と考えることも出来そうです。しかし賃借人側は「税率が何%になってもその金額で変わらないだろう」と考えている方もいらっしゃるので、事前にきちんと説明をして、消費税が上がることへの承諾をいただく必要があると思われます。

賃貸借契約書が税別表示の場合や、消費税の金額が分かるように記載されている場合でも、賃料がいつからいくらに上がるのかを連絡しないと、今まで通りに振り込みしてしまう方がいらっしゃると思われます。大抵の賃貸借契約では前払いだと思いますので、「9月末支払い分(10月の賃料)からこの金額に上がりますよ」という連絡をしておくことが必要でしょう。

その他、自主管理で保証会社を利用している場合、オーナー側から保証会社へ保証金額の変更手続きが必要となりますので注意が必要です。

前回消費税が5%から8%に上がったときは、きちんと賃借人の方に通知をしたにも関わらず増税分の数百円の滞納が数多く発生し、多くの管理会社が対応に追われました。同じ轍を踏むまいと、管理会社は対応を強化して10月1日に臨んでいます。準備不足で手間が増えてしまわないように、今回は早めの対策を心掛けたいものです。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2019年8月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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