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賃貸住宅における高齢者対応について考える

「不動産投資」管理の重要なポイント(第5回)

公開日:2019年6月28日

この記事の概要

  • 住宅確保が困難な高齢者への対策として、国土交通省が2017年10月に新たな住宅セーフティーネット制度を開始していますが、抵抗があるオーナー様や管理会社がまだまだ多いようです。しかし、新規の入居を受け入れなかったとしても、「既存の入居者の高齢化」の問題はいつか必ずやってきます。高齢入居者の問題点とその対策について、オーナーとしてやっておくべきことを考えてみましょう。

賃貸住宅における高齢者対応について考える

1.管理会社が最も問題視するのは「孤独死」

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会が会員向けに実施したアンケート調査によると、管理会社が高齢者入居斡旋を積極的に行わない理由として「孤独死の恐れ」が最も多くあげられています。孤独死があった場合についての問題点として考えられるのは、長期間発見されない可能性があることや、その居室がいわゆる「事故物件」となりその後の募集に差しさわりが出る可能性があることなどです。

発見までにかかった期間や発見されたときの室内の状況などで心理的瑕疵の大きさは変わってくると考えられ、管理会社はそれらの状況を加味して次の募集賃料を決定しているケースが多いです。つまり、不動産価値を下げないためには「万一の際の早期発見」がとても重要になります。孤独死を早期発見するための商品はたくさん出ていますが、大掛かりな工事が必要ないことや、必要がなくなったときに容易に廃止できること、安価であること、入居者側に「見張られている」という抵抗感が少ないことなどを目安に導入を検討されると良いでしょう。例えば、その部屋の電力会社を変更することで電気の使用状況を確認したり、トイレなどにSIMカードが内蔵されている電球を設置して点灯・消灯を確認したりして、異常があればメールで通知が来る商品などがあります。早期発見できれば命が助かる可能性もありますし、不幸にしてお亡くなりになったとしても、オーナー様はもちろんご本人のためにもご家族のためにも、一刻も早く発見して差し上げることには意味があると思います。

万一、孤独死が発生してしまった場合に、事故物件に該当するのかどうかが気になると思いますが、実は事故物件には定義がなく、死因が病死でも事故物件に該当するか否かは規定されていません。賃貸借契約時に病死を告知するかどうかは各不動産業者の判断に委ねられていますが、後のトラブルを恐れて告知している業者も少なくないのが現状です。「事故物件の定義を決めて欲しい」という業界の声を受けて、国土交通省は、2019年4月に発表した「不動産業ビジョン2030」で「心理的瑕疵を巡る課題の解決」を挙げており、ストック型社会の実現のために今後検討が進むものと思われますので注目しておきましょう。

2.入居者が意思能力を喪失した場合の対応は?

前出のアンケートで二番目に多かった理由が「意思能力を喪失する恐れ」です。高齢化により意思能力を喪失した入居者が原因で実際に起こったトラブルの具体例としては、ごみ分別が出来なくなりごみ屋敷になった、意思疎通が困難になり管理上重要なことが伝わらない、物忘れによる鍵の紛失が度々起こる、火の不始末によるボヤの発生、共用部での失禁、徘徊行為で警察に保護される、妄想等で他の入居者に迷惑をかけるなどが挙げられていました。このような事態が起こった場合の対策を考えてみましょう。

当然ながら一番先に対応を相談すべきは身内ですが、肝心な時に連絡が付かない、連絡先が分からないといったケースがあります。賃貸借契約の締結時から何年も経てば、保証人や緊急連絡先の状況も変わっていて当然です。更新時に連帯保証人や緊急連絡先の情報も更新しておくことが大切になります。また、こういったトラブルが深刻になる前には、予兆がある場合が多いので、多少でも異変が見られたときに早めに身内に連絡を取り、今後深刻な事態になった場合の対応を相談しておくと良いでしょう。

入居者自身と同様に連帯保証人も高齢となり、入居者より先にお亡くなりになるケースも出てきています。高齢になると体の不調で入退院を繰り返したり、長期に入院してしまったりして滞納が発生するリスクも増えてきますので、連帯保証人の存在はとても重要です。連帯保証人も高齢になってきている場合には、連帯保証人の変更を提案したり、賃貸借契約の途中からでも加入できる家賃保証会社の加入を検討してみるのも一案です。

高齢者のイメージ

3.知っておきたい万一の時の相談先

高齢になった入居者の件で相談したくても身内に連絡が取れない、連絡が取れても対応してもらえない場合には、行政の窓口が力になってくれる場合があります。実際のトラブル対応の事例では、これらの行政窓口の方や、ケアマネージャー、ケースワーカー、民生委員の方がとても力になってくれたというケースも多く報告されています。

社会福祉全般の相談窓口は、社会福祉協議会(社協)です。都道府県に設置されている社会福祉協議会は、全国社会福祉協議会のホームページで確認でき、市区町村単位で設置されている場合は、各都道府県社協のホームページで確認できます。

高齢者に関する相談窓口は、地域包括支援センターです。介護保険法に基づいて市区町村が設置しており、高齢者の介護予防や介護保険、福祉に関する総合相談窓口となり、各都道府県のホームページで確認できます。

生活保護や介護保険の相談、受付は福祉事務所です。高齢者の中には生活保護を受給していたり、介護保険から訪問介護を受けている方もいらっしゃるので、その場合には担当者に相談すると良いでしょう。厚生労働省のホームページで全国の福祉事務所を確認できます。

高齢化社会は止めようがないのが実態です。入居者の高齢化に対して消極的に対応するだけでなく、積極的に学んで新たなビジネスチャンスと捉える管理会社やオーナー様も現れ始めています。一口に高齢者と言っても内容は様々で、趣味に人付き合いにと元気に出歩いて最期はきちんと身内が面倒を見てくれる、いわば高齢者入居リスクの少ない方もいます。また、高齢者は長期入居する方が多く、若い人が敬遠する築古物件や1階の部屋を好む傾向もあります。高齢者特有のリスク管理さえできれば、優良顧客となってくれるでしょう。その時のために、まずは既存の高齢入居者への対応を積極的に行ってみてはいかがでしょうか。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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