2.賃貸借契約書はどのように変更すれば良い?
次に、改正民法に沿って賃貸借契約書をどのように変更すれば良いかを、国土交通省から出されている賃貸住宅標準契約書「連帯保証人型」に合わせて見ていきましょう。
【「甲」賃貸人(オーナー様)、「乙」賃借人、「丙」連帯保証人】
一つ目の「極度額設定の義務化」については、頭書に連帯保証人の極度額を明示するとともに、
第17条2項「前項の丙の負担は、頭書(6)及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。」
となっています。極度額については規定がありませんが、あまりに高額だと連帯保証人のなり手がいなくなるという問題が出てきます。ちなみに国土交通省から参考のために「極度額に関する参考資料」が公表されており、これを見てみると過去の賃料の24か月分程度が目安になりそうです。
二つ目の「保証額の元本確定事由の規定の改正」については、
第17条3項「丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする。」
と記載されています。賃借人が亡くなった際は、事後対応を今まで以上に速やかに行う必要が出てくるでしょう。また、賃借権は相続の対象になるため、例えば賃借人が亡くなった後に同居人の配偶者が住み続けた場合、その引き継がれた賃貸借契約に対しては連帯保証人の責任を問えなくなってしまうので注意が必要です。
三つ目の「連帯保証人からの問い合わせに対する賃貸人の回答義務の新設」については、
第17条4項「丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。 」
とされています。今までは、連帯保証人から家賃滞納状況について問い合わせがあった場合、賃借人の同意がなくては情報提供がしにくいケースがありました。滞納額が高額になる前に連帯保証人が何らかの手を打てるようにするため、改正民法では義務として規定されました。改正後は連帯保証人から家賃滞納状況についての問い合わせを受けたときに、個人情報だからと情報提供を断るようなことがあれば義務違反となります。
四つ目の「連帯保証人に対する自らの財産状況等の情報提供義務の新設」については事業用物件だけが該当するため、国土交通省の賃貸住宅標準契約書には記載がありません。しかし、賃借人が自身の財産上の問題点を隠して連帯保証人を立てたような場合に保証契約が取り消しになる可能性があるため、オーナー様にとっても重要な改正です。対策としては、賃貸借契約書に情報提供が義務付けられた項目について賃借人に記載してもらい、連帯保証人にそれを確認した旨の署名捺印をもらうなどが考えられます。