「次世代住宅ポイント制度」を使って賢くリフォーム

消費税関連トピックス

この記事の概要

  • 2019年10月1日に予定されている消費税率アップによる景気悪化対策として、「次世代住宅ポイント」が創設されました。対象となるリフォーム工事がこれまでより多彩になっており、使いやすくなっています。工事内容や申請時期に注意して、賢く利用しましょう。

これまでも、国は「住宅エコポイント制度」や「省エネ住宅ポイント制度」など、新築やリフォームに関する補助制度を実施してきました。ただし、これまでの制度の対象は、主に省エネ性能に優れた住宅にするための性能向上リフォームでした。一方、「次世代住宅ポイント」の対象は広く、「安全・安心」「健康長寿・高齢者対応」「子育て支援・働き方改革」「環境」のための工事に対しても支援を行う制度になり、非常に使いやすくなっています。

次世代住宅ポイント制度は、新築でもリフォームでも使える制度ですが、今回はリフォームに絞って、対象工事などを解説します。中古住宅を購入したり、購入を検討したりしていて、リフォームを予定している方向けにポイントを解説していきます。

1戸当たり最高60万ポイントが発行される

まず、対象としては、戸建て・マンションを問わず、すべての住居が対象です。施主が個人でも法人でも制度を使用できます。マンション管理組合が実施する共用部の工事も対象になります。

対象となるリフォーム工事は、以下のいずれかに該当することが必須条件になります。

  1. 開口部の断熱改修
  2. 外壁、屋根・天井または床の断熱改修
  3. エコ住宅設備の設置
  4. バリアフリー改修
  5. 耐震改修
  6. 家事負担軽減に資する設備の設置
  7. リフォーム瑕疵保険への加入
  8. インスペクションの実施
  9. 若者・子育て世帯が既存住宅を購入して行う一定規模以上のリフォーム※1

※1「若者世帯」は、2018年12月21日(閣議決定日)時点で40歳未満の世帯。「子育て世帯」は2018年12月21日または申請時点で18歳未満の子を有する世帯。

気になる発行ポイントですが、上記①〜⑨のリフォームごとに、工事内に応じてポイントが設定されています。加えて、「既存住宅購入加算」も用意されていて、中古住宅購入と合わせて実施するリフォームにはポイントが上乗せされます。ただし、発行されるポイントには「上限」が定められています。居住中の自宅をリフォームする場合と、既存住宅を購入したうえでリフォームを実施する場合とで、以下のようになっています(1ポイントは1円相当)。

(若者世帯あるいは子育て世帯)
既存住宅購入の有無 居住要件 上限ポイント数
既存住宅を購入し
リフォームを行う場合※2
自ら居住 600,000ポイント/戸
上記以外の
リフォームを行う場合※3
450,000ポイント/戸
(若者・子育て世帯以外の世帯)
既存住宅購入の有無 居住要件 上限ポイント数
安心R住宅を購入し
リフォームを行う場合※2
自ら居住 450,000ポイント/戸
上記以外のリフォームを行う場合 全ての住宅 300,000ポイント/戸

※2自ら居住することを目的に購入した住宅について、売買契約締結後3カ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結する場合に限る。

※3自ら居住する住宅でリフォーム工事を行う場合に限る。

それでは、次にリフォーム内容別に、対象となる工事とポイントをみていきましょう。

①開口部の断熱改修

夏の暑さ・冬の寒さの影響の受けやすい部位が開口部です。熱ロスの大きいこの部位を断熱改修することによって、室内の快適性が高まるだけでなく、室内の温度差が減るため健康的な生活が送れるうえ、光熱費が下がりコスト面でのメリットも期待できます。工事は、窓全体を替える外窓交換のほか、窓ガラスのみの交換や、既存サッシを変更せず新たに室内側に窓を追加する内窓設置も対象となっています。

(対象となる工事例)

  • ガラス交換:単板ガラス入りサッシのガラスを複層ガラスに交換
  • 内窓設置:既存サッシの内側に樹脂製の内窓を設置
  • 外窓交換:古いサッシを枠ごと取り外して、新しい断熱窓を取り付ける
(発行ポイント数)
大きさの区分 ガラス交換※1 内窓設置※2・外窓交換 ドア交換
面積※3 1枚あたりのポイント数 面積※4 1箇所あたりのポイント数 面積※4 1箇所あたりのポイント数
1.4m²以上 7,000ポイント 2.8m²以上 20,000ポイント 開戸:1.8m²以上
引戸:3.0m²以上
28,000ポイント
0.8m²以上
1.4m²未満
5,000ポイント 1.6m²以上
2.8m²未満
15,000ポイント
0.1m²以上
0.8m²未満
2,000ポイント 0.2m²以上
1.6m²未満
13,000ポイント 開戸:1.0m²以上
1.8m²未満
引戸:1.0m²以上
3.0m²未満
24,000ポイント

※1 ガラス交換は、箇所数ではなく、交換するガラス1枚あたりにポイント発行

※2 内窓交換を含む

※3 ガラスの寸法とする

※4 内窓もしくは外窓のサッシ枠または開戸もしくは引戸の戸枠の枠外寸法とする

②外壁、屋根・天井または床の断熱改修

「断熱リフォーム」で、最低使用量以上の断熱材を使用する工事については、施工部位ごとにポイントが発行されます。

(対象となる工事例)

  • 外壁の断熱改修:既存の外壁の断熱材を撤去して敷込断熱などを施工
  • 天井の断熱工事:既存の断熱材を撤去して敷込断熱などを施工、既存天井をそのままに吹込断熱などを施工(付加)
(発行ポイント数)
外壁 屋根・天井
100,000ポイント/戸
(50,000ポイント/戸)※
32,000ポイント/戸
(16,000ポイント/戸)※
60,000ポイント/戸
(30,000ポイント/戸)※

※部分断熱の場合の発行ポイント数。

③エコ住宅設備の設置

省エネ性能が高く、地球環境に配慮された商品として、以下の住宅設備機器を購入・設置することで、ポイントが発行されます。次世代住宅ポイント事務局に登録された型番の製品を使用した工事のみが対象になるので注意が必要です。使いたい製品が登録されているかは、WEBサイトで検索できます。

(対象となる工事例)

  • 太陽熱利用システム:屋根に集熱器を設置し、軒先や屋内などに蓄熱槽を設置
  • 節水型トイレ
  • 高断熱浴槽
  • 高効率給湯機:電気ヒートポンプ給湯機、潜熱回収型ガス給湯機、潜熱回収型石油給湯機、ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機
  • 節湯水栓:台所水栓(手元止水機能または優先吐水機能)、洗面水栓(水優先吐水機能)、浴室シャワー水栓(手元止水機能または小流量吐水機能、シャワーヘッドのみの交換は除く)
(発行ポイント数)
エコ住宅設備の種類 ポイント数
太陽熱利用システム 24,000ポイント/戸
節水型トイレ※ 16,000ポイント/戸
高断熱浴槽 24,000ポイント/戸
高効率給湯機 24,000ポイント/戸
節湯水栓 4,000ポイント/戸

※家事負担軽減に資する設備の「掃除しやすいトイレ」との重複は不可

④バリアフリー改修

5種類のバリアフリー工事が対象になっています。ポイントは設置カ所数でなく、リフォームを行った工事の種類に応じたポイント数の合計で発行されます。

(対象となる工事例)

  • 手すりの設置:通路や階段等に手すりを設置
  • 段差解消:寝室と廊下の段差を解消
  • 廊下幅等の拡張:居間の出入り口の幅を拡張
  • ホームエレベーターの新設
  • 衝撃緩和畳の設置
(発行ポイント数)
対象工事の種類 ポイント数
手すりの設置※1 5,000ポイント/戸
段差解消※1 6,000ポイント/戸
廊下幅等の拡張※1 28,000ポイント/戸
ホームエレベーターの新設※2 150,000ポイント/戸
衝撃緩和畳の設置※3 17,000ポイント/戸

※1 原則、バリアフリー改修促進税制の取り扱いに準じる。

※2 戸建住宅または共同住宅専有部分への新設に限る(入替や増設は対象外)

※3 一戸あたり4.5畳以上設置する場合に限る

⑤耐震改修

昭和56年5月31日以前に建築された(厳密には「建築確認を受けた」)住宅は「旧耐震基準」と呼ばれ、現行の耐震基準と比べると性能が低めで、極めて稀に発生する地震に対して損傷や倒壊の可能性が高いといえます。こうした建物を現行の耐震基準に適合させる耐震リフォームについて、一戸当たり15万ポイントが発行されます。

主に一戸建て住宅が対象となり、耐震改修の例として、柱や梁などの構造部について構造壁に筋交いや補強パネルを付加する、耐震金物による補強や、基礎を強化するなどの工事がなされます。

⑥家事負担軽減に資する設備

次世代住宅ポイント制度の対象工事は、大がかりな性能向上リフォームだけではありません。設備機器の交換だけでも対象となる工事があります。共働き家族など、自宅での家事作業が負担になっているご家庭もあるでしょうが、そうした家事軽減のための設備機器を導入する際も、ポイントが発行されます。バリアフリーなどの工事同様、設置台数でなく、設置を行った設備の種類に応じたポイント数の合計が発行されます。エコ住宅設備と同様、次世代住宅ポイント事務局に登録された型番の製品を使用した工事のみが対象になります。

(対象となる工事例)

  • ビルトイン食器洗機
  • 掃除しやすいレンジフード
  • ビルトイン自動調理対応コンロ
  • 浴室乾燥機
  • 掃除しやすいトイレ
  • 宅配ボックス
(発行ポイント数)
家事負担軽減に資する住宅設備の種類 ポイント数
ビルトイン食器洗機 18,000ポイント/戸
掃除しやすいレンジフード 9,000ポイント/戸
ビルトイン自動調理対応コンロ 12,000ポイント/戸
浴室乾燥機 18,000ポイント/戸
掃除しやすいトイレ※1 18,000ポイント/戸
宅配ボックス 住戸専用※2の場合 10,000ポイント/戸
住戸専用※2以外の場合​ 10,000ポイント/ボックス※3

※1 エコ住宅設備の「節水型トイレ」との重複は不可​

※2 共同住宅においては、単数のボックスなど当該住戸用に独立して設置された宅配ボックスに限ります。​

※3 例えば、1の宅配ボックスに4つのボックスが設置されている場合は40,000ポイントを発行

⑦以降は「上乗せ」的なポイント支給

⑦リフォーム瑕疵保険への加入、⑧インスペクションの実施、⑨若者・子育て世帯が既存住宅を購入して行う一定規模以上のリフォームの3つは、工事の内容によって支給されるのではなく、「上乗せ」的なポイントです。

⑦の「リフォーム瑕疵(かし)保険」とは、対象となる工事後、一定期間内に瑕疵(不具合)が見つかった場合に、調査や修補(手直し)、また一時的な転居・仮住まい費用等について保険金が支払われる制度です。住まい手(施主)でなく事業者が加入する保険ですが、このリフォーム瑕疵保険または大規模修繕瑕疵保険への加入に対して、ポイントが発行されます。

⑧の「インスペクション」とは、リフォームに際して住宅の現状性能をチェックする「建物調査」のことで、資格を持った建築士が規定された調査方法基準に従って行う調査について、ポイントが付加されます。

⑨は冒頭で説明しましたが、基準日時点で40歳未満の世帯を「若者世帯」、18歳未満の子を有する世帯を「子育て世帯」と規定し、一定規模以上のリフォームについてポイントが上乗せされます。

上記の9つに加えて、既存住宅(中古住宅)を購入し、リフォームを実施した場合には、ポイント加算制度があります。条件として、自宅として使用すること(投資用などの住宅は対象外)、売買契約締結後3カ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結することが条件となっています。

(発行ポイント数)
対象 発行ポイント
⑦リフォーム瑕疵保険への加入 7,000ポイント/契約
⑧インスペクションの実施 7,000ポイント/戸
⑨若者・子育て世帯が既存住宅を購入して行う
一定規模以上のリフォーム
100,000ポイント/戸
既存住宅購入加算 ①〜⑧の各リフォーム工事等の
ポイント数を2倍

工事金額により申請時期が違うので注意!

以上、次世代住宅ポイント制度の対象となる工事例を挙げましたが、リフォームをすれば自動的にポイントが発行されるわけではありません。

工事の前後でポイント発行申請が必要です。工事「前後」と書いたのは、リフォームの場合、工事金額が1000万円(税込)の場合は工事完了前に申請、1000万円未満の場合は工事完了後に発行申請することになっているためです。また、支給されたポイントを商品と交換する申込み期間については、2019年10月1日から2020年6月30日を予定しています。

工事と手続きの時期

工事1000万円以上 工事1000万円以下

(「次世代住宅ポイント」WEBサイトの資料をもとに作成)

次世代住宅ポイント制度は現在のところ2019年度のみの制度であり、予算も決まっています。申込みが予算に達した時点で、ポイントの発行申請や予約申請は締め切られ、以後は期間内であってもポイントを獲得できません。申請が間に合うように注意してください。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 本記事は2019年6月28日時点の情報であり、今後変更となる場合があります。