マンションは部屋や外観だけでなく「管理」もチェックしよう

マンションを購入する際に、絶対に知っておくべきこと(第1回)

この記事の概要

  •  「共同住宅」「集合住宅」と言われるように、マンションは戸建て住宅と違って1つの建物を複数の世帯で管理し、居住する建築物です。複数の世帯が安心して気持ちよく暮らすために様々な決まり事があり、それに従って管理されています。ハードとしての建物だけではなく、ソフトである管理についてもしっかりチェックすることがマンション選びには大切です。
  • 更新日:2024.04.15

マンションは部屋や外観だけでなく「管理」もチェックしよう

戸建て住宅と分譲マンションとでは、建物の所有形態が異なっています。戸建ては基本的にすべてオーナーの所有ですが、マンションは「専有部分」と「共用部分」に分かれています。マンション各戸の住戸部分が「専有部分」で、オーナー(「区分所有者」と呼びます)が単独で所有権を保有します。専有部分以外は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者全員の共同所有となります。建物の柱・梁・壁などの構造部をはじめ、エントランスやエレベーター、廊下、外壁、パイプスペース(PS)などが共用部分にあたります。

個人でリフォームできる範囲は限られている

専有部分は原則、区分所有者が自由に使え、独自に手を加えられます。対して共用部分は、マンションの区分所有者全員の資産ですから使用方法にルールがあり、区分所有者で組織した管理組合の総会の決議なしには変更できないという強い制約があります。

(表)専有部分と共用部分の区分けとルール例

区域 考え方 具体的な部位例 個人での改変
専有部分 各区分所有者が単独で所有権を持ち、使用できる 室内の住宅設備機器、配管・配線設備、内装など(ただし構造壁や床・天井スラブなど、躯体は共用部分に当たる) 可能
(ただし管理組合規約等によって制約のある工事もある)
共用部分 マンションの区分所有者全員の共有財産 躯体・構造部(基礎、柱、梁など)、外壁、バルコニー 不可
共用部分における
専用使用部分
共用部ではあるが、使用者を限定する部位 バルコニー、専用庭、ルーフバルコニーなど 不可

一見専有部分のようで、実は共用部分と取り決められている部位があります。例えばバルコニーや1階の専用庭、ルーフバルコニーなどは、各区分所有者に専用使用権が認められていますが、実は共用部分になります。これはマンションの長寿命化や資産価値維持のために、所有者全体で維持管理すべき部位だからです。窓や玄関扉、ベランダの手すりや防火壁も共用部分として扱われます。そのため、これらの部位は原則として、専用使用権者の意思だけでリフォームなどの改変は行えません。

また、専有部分でも、マンションの管理規約や使用細則などによって制約を受けることがあります。例えば、床をフローリングに替える場合は、遮音性の高い建材のみ使用可能と規定しているケースもあります。これは、築年が古いなどの理由で遮音性に十分な配慮がなされていない建物の場合に、リフォーム後の生活音によるトラブルを未然に防ぐために設けられることが多いようです。

所有者にとっては制約に思えるかもしれませんが、居住者全員が快適に生活できるためのルールと思えば、こうした規約にも合点がいくのではないでしょうか。

「マンションは管理を買え」の意味すること

「マンションは『管理』を買え」というフレーズを耳にしたことはありませんか。リフォームを例に説明したように、マンションでは、共用部分・専有部分ともに管理規約など一定のルールをつくることで、居住者の生活の質の維持や向上を目指しているのです。さらに、こうした管理いかんで建物の耐久性や資産価値にも影響していることから、こうした言葉が一般化しているのでしょう。

社会や暮らし方の変化、技術の進歩などによって、そうしたルールに不具合が生じることも出てきます。その場合、管理組合総会の決議を経て改定することができます。例えば昨今、インバウンド(訪日外国人旅行者)の急増が話題となりましたが、マンション内の住環境を守るために「民泊/ゲストハウスとしての利用禁止」を管理規約に追加した管理組合もあります。

マンション管理業務は、定期的な清掃やゴミ出し、セキュリティの維持、建物・設備の点検や修繕、長期修繕計画に基づいた大規模修繕の実施、各専有部分の利用法のチェックなど、非常に幅広い内容を含んでいます。一般的に、それを実際に行っているのは管理組合が業務委託したマンション管理会社になりますが、マンション管理の最終責任者は個々の住まい手といえます。

「管理を買え」とは「良い管理や運営をしているマンションを選びましょう」の意味ではありますが、決して管理会社の良し悪しだけではありません。管理組合の活動状況や、ひいては居住者のマナーやコミュニティ状況も、快適なマンション暮らしには欠かせないということです。

この記事はみずほ不動産販売「住まいの売り買いノウハウBOOK」でシリーズ連載されている記事です。続きは以下のリンクよりご覧いただけます。

(第2回)長期修繕計画と修繕積立金は絶対に確認する

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築・不動産ライター / 編集者。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上をテーマに展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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