• Q.なぜ賃貸併用住宅が相続対策に有効なのか?を考える

母が父から相続してひとりで住んでいる実家があります。母は自らの資金で老朽化がすすんだ実家の建替えを検討しており、子である私は建替えについて相続対策になるアドバイスをしたく思っています。何かよい方法はありますか?
なお、私は勤務地の近くに持ち家があり、同居も将来的にも実家に住むことは考えていません。

回答と解説

賃貸併用住宅は以下のとおり一般的には相続対策に有効であると考えられます。

家系図のイメージ 家系図のイメージ
  1. (1)建物の相続税評価額は固定資産税評価額で評価されます。一般的には、資金(現金)を保有することに比べ、相続税評価額が減少するので、お母さまの資金で実家を建替えることは、相続対策として有効と考えられます。概略は次を確認してください。
  2. 【不動産耳寄りな話 不動産は相続対策に向いている!?】
  3. (2)さらに賃貸併用住宅に建替えた場合は、賃貸部分に対応する土地について、要件を満たせば、特例などを受けることができます。以下事例では、相続税評価額が約60%減少しました。

土地の評価額:5,000万円
賃貸部分の割合:賃貸部分105㎡/延床面積150㎡
借地権割合:60% 借家権割合:30%
※空き室なし
※土地の賃貸部分≦200㎡

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賃貸併用住宅の評価イメージ
  1. 【貸家建付地の評価減】

    土地の評価額5,000万円×賃貸部分105㎡/延床面積150㎡×借地権割合60%×借家権割合30%×賃貸割合100%=▲630万円

  2. 【小規模宅地等(貸付事業用宅地等)の評価減】

    土地の評価額5,000万円×賃貸部分105㎡/延床面積150㎡-貸家建付地の評価減630万円=2,870万円
    2,870万円×小規模宅地等の減額50%=▲1,435万円

①630万円+②1,435万円=2,065万円
(評価額3,500万円の約60%)

  • 【要件】
    被相続人の不動産貸付事業を引継ぎ、申告期限まで引き続き貸付事業を営んでいることが要件となります。ただし、2018年4月1日以後の相続から、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した場合は適用ができません。(なお、2018年4月1日から2021年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した宅地等のうち、2018年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しないものとする経過措置が設けられています。)

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ご相談者は、持ち家があり、同居も将来的にも実家に住むことは考えていないとのことでしたが、仮に同居が可能な場合には、同じ小規模宅地等の特例の『特定居住用宅地等の特例』を活用することも考えられます。
同居可能な場合の要件は、「被相続人の相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月)まで有していること」となります。
この要件を満たせば、自宅部分の敷地の評価額から330㎡までの評価についての80%減額可能となります。
事例の場合は、5,000万円×45㎡/150㎡×80%=1,200万円が小規模宅地等として減額可能となります。

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特定居住用宅地等の特例イメージ

ただし、自宅敷地部分(330㎡上限)と賃貸敷地部分(200㎡上限)の両方を適用する場合には、次の算式で計算した地積までが適用可能ということで計算が複雑となります。また、賃貸物件が複数ある場合には、どの賃貸物件から200㎡分を適用したら有利かなどの計算も必要です。1㎡あたりの減額金額を考慮しながら、どの宅地、居住部分、賃貸部分等から小規模宅地等の特例の適用を優先するか検討するなど、必ず事前に税理士等に確認するようにしましょう。

【特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等を併用する場合の限度面積計算】

A × 200/330 + B ≦ 200㎡

A:特定居住用宅地等の地積B:貸付事業用宅地等の地積

例1.事例の敷地が200㎡で仮に建物延床面積の割合(賃貸部分105㎡、自宅部分45㎡)とおり、自宅部分が60㎡で賃貸部分140㎡の場合

60㎡×200/330+140㎡≒176㎡
〇176㎡≦200㎡
自宅敷地部分60㎡と賃貸部分140㎡ともに小規模宅地等の特例適用可能。

例2.事例の敷地が330㎡で仮に建物延床面積の割合(賃貸部分105㎡、自宅部分45㎡)とおり、自宅部分が99㎡で賃貸部分231㎡の場合

99㎡×200/330+231㎡=291㎡
×291㎡>200㎡

自宅敷地部分99㎡は小規模宅地等の特例適用可能だが、賃貸部分231㎡のすべての適用は不可能なため、下記の計算となります。
99㎡×200/330+140㎡=200㎡
〇200㎡≦200㎡

自宅敷地部分99㎡は小規模宅地等の特例適用可能だが、賃貸部分231㎡のうち140㎡までの評価については適用可能。

作成日:2021/11/15

村岡 清樹さん 村岡 清樹さん
  • 税理士法人
    東京シティ税理士事務所
  • 副所長 パートナー税理士
  • 村岡 清樹(むらおか せいき)
  • (むらおか せいき)
    村岡 清樹
資産税のプロフェッショナルでコンサルティング経験が豊富。不動産会社、ハウスメーカー、證券会社、新聞社等のセミナー、社員研修を数多く行う。アパート・マンションの税金対策・マイホームの税金・不動産の譲渡税金・相続税対策・土地の有効活用・不動産事業承継対策を得意とする。
  • この記事は2021年4月1日現在の法令に基づいて作成しています。
  • この記事では税法の規定を簡易な表現で説明しています。実際のお取引での税法上の適用の可否については、税理士・税務署等にご確認のうえ判断していただくようお願いします。
  • 監修:東京シティ税理士事務所