住宅の価値を左右する要因には、先天的なものと後天的なものとがある
たとえ自己居住用であっても、住宅を購入するのであればその価値が極力低下しない物件を選びたいもの。将来の住み替えや相続などのことも考えていけば、将来の資産価値も気にかけておきたいところです。
では、長く資産価値を維持し続けられるマンションには、どのような要素が備わっているのでしょうか。「価値」の捉え方は人それぞれですが、本稿では「将来売却する際に価格が下がりにくく、できれば上昇の可能性も期待できること」と定義して話を進めます。
分譲マンションの資産価値の維持・向上に寄与する要因について、表1のように整理してみました。資産価値を決定付ける要因として、大きく「先天的なもの」(分譲または販売時点である程度決定付けられているもの)と、「後天的なもの」(購入・居住後にコントロール可能なもの)があることを知っていただきたく、こうした分類方法にしてみました。
(表1)分譲マンションの資産価値を左右する要因例
| 先天的な要因 | 後天的な要因 |
| エリア・環境 |
- ・自然環境、災害リスク
- ・用途地域
- ・生活利便性(交通利便性、日常生活環境、医療・公共・商業施設の有無など)
- ・ブランド性、まちの発展度、将来の人口増加見込み
- ・嫌悪施設の有無
| 維持管理・ 修繕 |
- ・管理体制
- ・維持管理状況(建物・敷地)
- ・大規模修繕等
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土地・建物 関連 |
- ・土地の広さ
- ・マンションのグレード
(工法、共用施設、築年数)
| 区分所有部の バリュー アップ |
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区分所有部 関連 |
- ・広さ、階数、方角、日照、眺望、設備・内装グレード
| コミュニティー 醸成 |
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*先天的な要因にも将来変動する要因があることに留意
*筆者作成
先天的なものは、分譲時にある程度その価値が定まっており、入居後に自力で変更させるのが難しい要因といえますが、事前に明確になっているものなので、物件購入時に入念な検討をしていくことで享受できる価値といえます。対して後天的なものは、実際に住みながら改善していくなど、維持・向上のできる要因といえます。
資産性が落ちにくい物件とは「将来も競争力のある家」
「先天的な要因」について少し掘り下げてみましょう。マンションの資産価値は、大きく①「エリア・環境」、②「土地・建物関連」、③「区分所有部関連」という3つの観点から査定され、物件価格が形成されていくということです。
①の「エリア・環境」ですが、分譲マンションは建物そのもの以前に、どこに立地しているかが重要だということです。駅からの距離や日常生活に欠かせない商業施設の充実、医療施設などのインフラの充実したエリアであることなど、いわゆる“ロケーションのよいマンション”は築年数が古くても人気が高く、価値が落ちにくいことは皆さんの肌感としてもご理解いただけるかと思います。
また②の「土地・建物関連」は、竣工時のマンショングレードがその後の中古価格に大きく影響します。マンションがブランド性を獲得していれば、その後周辺に別のマンションが建っても一定の競争力を獲得でき、価値の維持につなげられます。
そして③の「区分所有部関連」は、購入する部屋自体が単独でのポテンシャルを有しているかということです。1棟当たり数十・数百戸で構成される集合住宅において、例えば「高層階・南向き」の部屋は人気が高いことが多くなっています。
マンションの価値として、①〜③の要素を広範に備えているほど将来の資産価値面でも安心できる物件といえますが、これらすべてを兼ね備えた物件となると当然販売価格も高いはず。予算的に難しい場合、これらの条件を緩めていくことになりますが、それらの取捨選択が将来の売却時の価格にも影響していくことに留意する必要があります。
例えば、購入時に最寄り駅から10分以上歩くことが負担にならず、駅から多少距離のある物件でよいとした場合でも、売却時にはその数分がネックになって将来の取引金額(≒売却額)に大きく影響することが考えられます。駅から距離がある分、購入時の価格はリーズナブルになりますが、将来の売却額も低くなる恐れがあるわけです。「駅前の築古マンション」と「駅徒歩10分以上の築浅マンション」を比べると、居住快適性の面で後者を好む人も多いでしょう。しかし、資産価値の観点では、前者が有利になるケースもあります。
このように、ロケーションや周辺環境というものは物件取得後の改善が難しいため、購入時に慎重な検討が必要だということがお分かりいただけますでしょうか。
住み方によっても資産価値は向上させられる
次に「後天的な要因」ですが、建物の維持管理や性能向上など、共用部・専有部(区分所有部)双方について適切な投資を続けていくことが、価値の維持・向上につながります。これらの維持管理やリフォームに加えて、住人同士の良質なコミュニティーづくりなど、所有者が購入後に生活しながら価値の維持をコントロールしていくわけです。
共用部は、日々の適切な維持管理や長期修繕計画、大規模修繕などの実施によってマンションの価値の維持につながります。その際、老朽化した設備や機能を回復させるだけでなく、新たな機能を付け加える「性能向上」の視点も大切です。
この考え方は専有部についても同じです。古くなった設備機器などを更新する際に新たな機能を追加するなどのリフォームは、日常の生活利便性や快適性が高まるだけでなく、売却時の価格にも影響を与えます。趣味性の高いリフォームは汎用性が低く価値が上がりにくいものですが、断熱リフォームなど住宅性能を高める工事は高い省エネ性が他者にも支持され、将来の価値向上にもつながります。
そして住人同士の関係性も、価値向上に不可欠です。全戸で構成される管理組合活動を中心に交流を深めていくことは、管理組合活動の活性化や透明性などとして返ってきて、結果としてマンションの価値向上にもつながります。
快適に住みつつ、資産価値も高めていきたい
マンションの資産価値の変動要因について今一度整理しておきましょう。前出の表1の要素を踏まえつつ、マンションの資産価値を決定付ける動きとして、図1のようにまとめてみました。
(図1)マンション資産価値の維持・向上に関する考え方

黒い実線が示すように、マンションの資産価値は経年とともに徐々に下降していくものです。しかしその下降の幅は物件次第であり、そのマンションが有する各種の要因が競争力として資産価値低下のカーブを緩やかなものにしてくれます(点線)。
住宅は建物状態だけで価格が決まるわけではなく、周囲のロケーションや交通利便性など、土地や周辺環境などに応じて価値も上下します。また入居者による適切な維持管理も大きな要素です。こうした要因は、既にある程度固定されているもの(先天的、図1のグリーン要素)と、住み方で価値のコントロールが可能なもの(後天的、図1のレッド要素)とに分けられるため、物件購入時はこれら両面から、価値の低下しにくい不動産資産であるかを検討していきましょう。
実際の購入の際、主に予算面などの理由から、希望条件を外す(妥協する、諦める)などして折り合いをつけることもあるでしょう。ただその際、売却時の価値まで下げ過ぎないよう、資産性にも目を向けておくことが最終的によい買い物につながっていくかと思います。