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建築費の動向と不動産市場への影響New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート

この記事の概要

  • 建築費は上昇が続く。建設技能労働者の不足感は緩和しつつあるものの建設資材価格は高止まり
  • 中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安に起因してデベロッパーが新築マンションの契約者に対して引き渡し予定日が遅れる可能性などを通知するなどの影響が顕在化
  • 建築費の高騰は不動産価格の上昇要因だが、中東情勢の悪化がマクロ経済に波及して国内景気が大きく低迷すると不動産価格を下押しする可能性

建築費の動向と不動産市場への影響

建築費の上昇が続く

東京のマンションの建築費は上昇が続いている[図表1]。建築費は主に労務費と建設資材価格の動向に影響を受けながら変動する。労務費は建設技能労働者の労働需給に影響されると考えられ、建設技能労働者の不足感※1は緩和しつつあり、2026年3月に約5年ぶりに不足から過剰に転じた※2[図表2]。建設業の賃金指数の伸びも鈍化しつつあるものの、物価上昇局面から依然として賃上げの必要性は高く、労務費は今後も建築費を押し上げる方向に作用する蓋然性が高いとみられる。建設資材価格は原材料価格や輸送費の高騰を背景に全国的に価格改定が行われた生コンクリートに連動して2025年5月に大きく上昇した後は横ばいで推移しており、依然として高値圏にある[図表3]。

※1:建設技能労働者過不足率は、プラスが大きいほど不足率が高く、マイナスが大きいほど過剰率が高いことを表す。

※2:特に鉄筋工の過剰感が強くなっており、その理由として、建築費高騰で鉄筋を多用するマンションやオフィスビルなどの新規着工が減少・延期されていることが指摘されている。

[図表1]東京・マンション(鉄筋コンクリート造)の建築費指数

[図表2]建設技能労働者過不足率及び建設業の賃金指数前年比

[図表3]建設資材価格指数(東京・建築)

中東情勢の悪化に伴うナフサ供給不安の影響が顕在化。建築費の上昇圧力に

足元では中東情勢の悪化に伴ってナフサの供給不安が生じている。ナフサは石油製品の一つで、ナフサからエチレンやプロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった石油化学基礎製品が作られ、これらの基礎製品からプラスチックや合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの原料となる石油化学誘導品(中間製品)が生産され、最終的には関連産業の工場において様々な製品に加工される。川下に進むにつれ細分化する複雑な構造も足元の目詰まりの要因の一つとされている。

住宅では、ユニットバスや壁紙クロス、床材、配管、断熱材、接着剤など、多くの設備や建設資材にナフサ由来の建材が使われている。既に不動産業界にも影響が出ており、5月にはデベロッパーがナフサ原料の塗料供給が不確実のため、新築マンションの契約者に対して引き渡し予定日が遅れる可能性などを通知していると報じられた。ナフサの目詰まり解消に向けて政府は各種対策を講じるとしているが、建設以外でも多数の業界で使用されていることとサプライチェーンが複雑であることから中東情勢が好転したとしても影響が長引くとの見方がある。

また、中東情勢の悪化に起因する原油価格の高騰が続くと、躯体に用いられる生コンクリートや鋼材などの建築費に占めるウエイトが大きい資材の価格に対しても上昇圧力が強まる可能性が考えられる。

建築費の高騰は不動産価格の上昇要因だが、中東情勢の悪化がマクロ経済に波及して国内景気が大きく低迷すると不動産価格を下押しする可能性

原油価格の高騰を招いているホルムズ海峡の封鎖が長期化すると、建設資材価格は更に上昇する可能性があり、前述のとおり労務費の上昇圧力も今後継続する見込みであることも勘案すると、建築費は引き続き上昇する蓋然性が高い。建築費の高騰は不動産供給を抑制する方向に作用し、不動産価格の上昇要因となり得る。

また、原油価格が長期にわたって高止まりすると、企業の業績悪化やインフレの加速による実質賃金の下押しなどから国内景気が下振れする可能性がある。景気が低迷すると、不動産市場ではテナントの賃借需要が減少するほか、マンション取得需要が下押しされ、不動産価格の下落圧力が強まると考えられる。

他方、ホルムズ海峡の封鎖が解除されると原油価格は下落し、一定の期間は要するとみられるがナフサの供給不安も次第に解消されると考えられる。この場合、建築費の上昇圧力は弱まるものの、これまでの建築費の上昇は為替動向と連動してきた面が大きい※3、4ことに鑑みると、今後の建築費も為替相場に依るところが大きい可能性が考えられる[図表4]。中東情勢の悪化は円安進行の一要因となっており、情勢が好転した場合には円安圧力は弱まるとみられるものの、高市政権の政策に起因する財政悪化懸念などの他の要因は引き続き存在する蓋然性が高いため、大きく円高方向に振れるとの見方は少なく、建築費は引き続き高値圏で推移する公算が大きいと考えられる。

[図表4]建築費指数と為替(ドル円)

※3:図表4の対象期間である2019年1月から2026年4月までの建築費指数と為替(ドル円)の相関係数は0.95に及び、極めて強い正の相関を有する。相関係数とは、2種類のデータ間の関連性の強さを示す指標で、-1から1の間で示される。プラスの場合、1に近いほど正の相関(一方の数値が増加すると、もう一方も増加する関係)が強いと評価される。

※4:円安によって鉄やアルミなどの輸入が多くを占める建設資材の原料価格が上昇するほか、円安に伴ってエネルギー価格も上昇すると輸入に伴う輸送コストや国内での運搬コスト、資材加工コスト、工事現場で使用するエネルギー代の上昇など、影響は多岐にわたる。

建設資材に対する原油価格高騰の影響は多岐にわたる

(一財)経済調査会によると、原油価格の高騰に伴う建設資材への影響は[図表5]のとおりであり、影響度が強い品目が多い。原油やナフサを原材料とするものだけでなく、輸送費の上昇によって影響を受けるものもある。既に出荷停止・制限の動きやメーカーからの値上げ打ち出しが生じているものが複数みられ、今後の動向に注視を要する。

[図表5]原油価格の高騰に伴う建設資材への主な影響(東京地区)

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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