• Q.購入時の売買契約書が見つからない!譲渡申告時どうすればいい?

昭和53年9月に土地を父が東京に購入、賃貸していました。これを長男が相続、賃貸継続しました。
長男は、この土地を令和2年3月1,500万円で譲渡しましたが、父が購入した時の売買契約書は紛失し見当たりません。ただし、父からは800万円で購入したと聞いています。売買契約書がないと譲渡代金の5%しか取得費として認められないと聞きましたが、そうするとかなりの譲渡税がかかってしまうので、良い方法を教えてください。

回答と解説

不動産の売買契約書が無くとも、実額での購入費が裏付けられれば、譲渡代金の5%を取得費とする方法以外でも譲渡所得を申告することが可能です。

そのためには、税務署に提出する書面において、(1)購入当時の状況説明等を記載(2)売買契約書の代替となる資料として、例えば、①購入代金として支払った金額が記載されている通帳等②住宅ローンの金銭消費貸借契約書等③乙欄に抵当権の設定金額の記載がある登記事項証明書等をできるだけ用意(3)土地については、市街地価格指数※により当時の取得費を推定・検証します。

(財)日本不動産研究所の市街地価格指数を使って譲渡代金から土地取得費を算定する手法は、平成12年11月16日の裁決事例等で示されています。
ただし、最終的には税務署判断となるため、必ず認められるものではありません。
上記算定値の客観性を向上させるため、合理的証拠を積み上げることが必要であり、資産税専門の実績豊富な税理士が作成する申述書をつけて申告することをお勧めします。

  • 市街地価格指数とは、全国主要198都市で選定された宅地の調査地点について、日本不動産研究所の不動産鑑定士等が年2回価格調査を行い、これらを基に市街地の過去の宅地価格の推移を指数化したものです。
土地価格と市街地価格指数のイメージ 土地価格と市街地価格指数のイメージ
  1. 実際に購入したと考えられる価格

    800万円

  2. 土地譲渡代金から市街地価格指数を使って取得費を算定
    購入時の土地取得算定値の計算式 購入時の土地取得算定値の計算式
  3. ①≦②となることから、①は相応に合理性がある価格と考えられる。

    その他、抵当権設定金額、取得に至った経緯等で客観性を高める。

もっと知りたい!!税理士の深掘り

前述の取得費「800万円」と概算取得費である「75万円」(1500万円×5%)で譲渡所得税等※を試算してみると、148万円も差がつくことに。

前提条件

譲渡代金1,500万円、譲渡費用は100万円、税率は長期保有とし20.315%とした。

  • 所得税15%、住民税5%、復興税0.315%

試算1.取得費800万円の場合

取得費800万円の場合の計算式 取得費800万円の場合の計算式

試算2.取得費75万円の場合

取得費75万円の場合の計算式 取得費75万円の場合の計算式

作成日:2021/08/31

村岡 清樹さん 村岡 清樹さん
  • 税理士法人
    東京シティ税理士事務所
  • 副所長 パートナー税理士
  • 村岡 清樹(むらおか せいき)
  • (むらおか せいき)
    村岡 清樹
資産税のプロフェッショナルでコンサルティング経験が豊富。不動産会社、ハウスメーカー、證券会社、新聞社等のセミナー、社員研修を数多く行う。アパート・マンションの税金対策・マイホームの税金・不動産の譲渡税金・相続税対策・土地の有効活用・不動産事業承継対策を得意とする。
  • この記事は2021年4月1日現在の法令に基づいて作成しています。
  • この記事では税法の規定を簡易な表現で説明しています。実際のお取引での税法上の適用の可否については、税理士・税務署等にご確認のうえ判断していただくようお願いします。
  • 監修:東京シティ税理士事務所