• Q.配偶者居住権の「概要」「長所短所」「評価方法」とは?

父が亡くなり、相続が始まります。遺産分割を考える中、配偶者居住権という制度があると聞きました。母が住む実家があり、検討を考えていますが、そもそも配偶者居住権とはどういったものなのでしょうか?

回答と解説

配偶者居住権とは

  • 被相続人の配偶者が不動産所有権を取得しなくても自宅に住み続けられる権利
  • ①遺産分割協議、②遺贈(死因贈与含む)、③家庭裁判所の審判 のいずれかにより取得
配偶者居住権のイメージ 配偶者居住権のイメージ

長所と短所とは

配偶者居住権の主な長所

  • 配偶者はそのまま自宅に住み続ける事ができ、住まいを追われる心配はなくなります。
  • 配偶者居住権を取得した配偶者が死亡した場合には、配偶者居住権は消滅し、相続税の課税関係は生じないということになります。

配偶者居住権の主な短所

  • 第三者に譲渡ができない。配偶者が施設に入るようなことがあると、建物が空き家になってしまう上に処分もできず、配偶者やその家族に負担がかかる可能性があることに注意が必要です。
  • 配偶者居住権の設定後、居住建物所有者と諸事情で合意解除等することになり、配偶者が対価を得る場合はその配偶者に所得税(譲渡所得)が課税されます。なお、対価を得ない場合や対価が著しく低い場合は、居住建物所有者に贈与税が課税されます。

配偶者居住権の利用がメリットになるかデメリットになるかは利用される方によって異なりますので、不動産の相続問題が発生する前に内容をよく吟味し、権利を取得するかどうか判断することをおすすめします。

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配偶者居住権に関する相続税評価額を前提条件にて試算してみます。

前提条件

戸建て(築10年、木造、建物固定資産税評価額1,000万円)、土地相続税評価額4,000万円、配偶者(女性)70歳(平均余命19.85歳→20年:存続年数に応じた複利現価率0.554)の物件に終身で配偶者居住権を設定した場合

  • 残存耐用年数23年(22年(木造耐用年数)×1.5倍-10年(経過年数))

試算1.建物の評価

建物の価額=配偶者居住権+配偶者居住権付所有権

  1. 建物の価額

    10,000,000円

  2. 配偶者居住権の価額
    配偶者居住権の価額の計算式 配偶者居住権の価額の計算式
  3. 配偶者居住権が設定された建物の所有権の価額
    配偶者居住権が設定された建物の所有権の価額の計算式 配偶者居住権が設定された建物の所有権の価額の計算式

試算2.土地の評価(対象が一戸建ての場合)

土地の価額=配偶者居住権に基づく敷地利用権+配偶者居住権付敷地

  1. 土地の価額

    40,000,000円

  2. 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額
    配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額の計算式 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額の計算式
  3. 居住建物の敷地の所有権
    居住建物の敷地の所有権の計算式 居住建物の敷地の所有権の計算式

作成日:2021/08/31

村岡 清樹さん 村岡 清樹さん
  • 税理士法人
    東京シティ税理士事務所
  • 副所長 パートナー税理士
  • 村岡 清樹(むらおか せいき)
  • (むらおか せいき)
    村岡 清樹
資産税のプロフェッショナルでコンサルティング経験が豊富。不動産会社、ハウスメーカー、證券会社、新聞社等のセミナー、社員研修を数多く行う。アパート・マンションの税金対策・マイホームの税金・不動産の譲渡税金・相続税対策・土地の有効活用・不動産事業承継対策を得意とする。
  • この記事は2021年4月1日現在の法令に基づいて作成しています。
  • この記事では税法の規定を簡易な表現で説明しています。実際のお取引での税法上の適用の可否については、税理士・税務署等にご確認のうえ判断していただくようお願いします。
  • 監修:東京シティ税理士事務所