片務契約へんむけいやく

当事者の一方だけが債務を負う契約。一般的には、贈与(民法第549条)、消費貸借(587条)、使用貸借(同593条)、無償の委任(643条)、無償の寄託(657条)などの契約形態で見られる。

例えば書面によらない贈与では、物の引き渡し前であればいつでも撤回できる(550条)など、売買等の典型的な双務契約とは差異が見られる。双務契約に存在する同時履行の抗弁権、危険負担などの問題は生じない。書面によらない形態が多いが、書面による贈与の場合は原則として解除ができなくなる。また、負担付贈与は売買の規定を準用する(553条)など、契約の内容により違いがある。

金銭を借り主に引き渡した段階で契約を成立したとみなす金銭消費貸借は、借り主が金銭の返還債務を負うだけであり、貸し主は債務を負わないことから、片務契約の一種と考えられている。

関連用語
金銭消費貸借契約
借主が、貸主から金銭を借り入れてその金銭を消費し、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のことである。

住宅を購入するために、住宅ローンを金融機関から借り入れる場合には、購入者は購入する住宅に抵当権を設定し、抵当として金融機関に差し入れるのが一般的である。
この場合には、金銭消費貸借契約と抵当権設定契約をまとめて一つの契約書に盛り込むことが多く、こうした契約は「金銭消費貸借抵当権設定契約」のように呼ばれる。

金銭消費貸借抵当権設定契約には次の契約条項が記載されるのが通例である。 1.借入金額・利率・返済期日・遅延損害金
2.返済の延滞や債務者の信用状況の悪化が生じた場合の措置
3.不動産に対する抵当権設定
4.不動産の滅失等の場合における追加担保の差し入れ
5.不動産の売却・賃貸借等の制限
6.火災保険への加入
7.保証人または保証会社による保証