強制競売きょうせいけいばい

債務の返済が滞り、債権者が支払いの督促や催告をしているにも関わらず債務者が義務を履行しない場合に、裁判所を通じて強制的な手段で債務者所有の資産を入札により売却し、債権の回収を図る手続き。

強制競売を行なうためには、まず、債権者は1)支払い命令の確定判決、2)裁判上の和解、3)調停、4)強制執行認諾文言付き公正証書、5)仮執行宣言付きの判決により、債務名義の獲得が必要である。その上で必要書類をそろえて強制競売の申立てを行なう。

裁判所は、申立書を審査した後、強制競売の開始を決定すると、対象となる資産の差押え登記、現況調査、評価を行ない、入札を公告する。落札者が代金を納付することで売却が確定し、法律上の優先順位に従って債権者へ配当が行なわれる。

債権者が債務者所有の不動産に対してすでに抵当権を有している場合には、その抵当権を実行した方が回収に有利であるため(担保不動産競売)、強制競売の手続きは利用されない。購入側への情報の提供が限定的であり、価格交渉の余地もほとんどないため、売却価格も低めとなる上、他の債権者との競合もあり、債務全額が回収されるとは限らず、そのため債務者側でも残債が残るというデメリットが生じ得る。債権者にとっても債務者にとっても経済的には必ずしも有利な方法ではないが、何らかの理由により不動産の任意売却等による債務の整理等ができない場合に、裁判所の強制力をもって債権回収の実現を図る手段である。

関連用語
債権差押
債務者が有する金銭債権から、債権者が満足を得る手続きのこと。債務者の財産に対する強制執行の一つである。

債権差押では、債務者が保有する金銭債権が対象になる。例えば、債務者が銀行に預けている預金(預金債権)、債務者が取引先に請求できる売掛金(売掛金債権)、債務者が勤務先に請求できる給与(給与債権)など、いろいろな金銭債権が差押え可能である。

債権を実際に差し押さえる手続きは次のとおりである。 仮に、債務者Aが債権者Bから金銭を借りており、債権者Bが債務者AのC銀行の預金口座を差し押さえると想定する。債権者Bは、まず債務者Aの住所地を管轄する地方裁判所に、債権差押命令の申立てを行なう。これを受けた裁判所では、債務者Aが預金債権を有している相手方であるC銀行(これを「第三債務者」と表現する)に対して、債権差押命令を郵送する。

この命令が送達されてから1週間が経過すると、債権者Bは、C銀行に対して預金を自己(B)に支払うように請求することが可能となる。このようにして債権者Bは満足を得ることができる。
なお、債権差押に類似した手続きとして「転付命令(てんぷめいれい)」がある。