分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利関係や管理運営について定めた法律。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」。「マンション法」と呼ばれることもある。
区分所有建物とは、分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことであり、通常の建物に比べて所有関係が複雑であり、所有者相互の利害関係を調整する必要性が高い。
このため、1962(昭和37)年に民法の特別法として区分所有法が制定された。これにより、専有部分・共用部分・建物の敷地に関する権利関係の明確化が図られ、規約・集会に関する法制度が整備された。
その後、分譲マンションが急速に普及したことに伴って、分譲マンションの管理運営に関するトラブルが生じたり、不動産登記事務が煩雑になるなどの問題点が生じたので、1983(昭和58)年に区分所有法が大幅に改正された。このときに、区分所有者が当然に管理組合を構成すること、集会での多数決主義、建替え制度、敷地利用権と専有部分の一体化などが定められた。
また、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災において被災マンションの建て替えが課題となったこと(同年に「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(「被災マンション法」)が成立」)、老朽化したマンションの建て替えや大規模修繕を円滑に行なう必要が生じたことから、2002(平成14)年には、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(略称「マンション建替え円滑化法」、「マンション建替法」」の制定に合わせて、復旧決議における買取り請求規定の整備、建替え決議要件の緩和、団地内建物の建替え承認決議の創設などが措置された。
なお、マンションの建て替え等に関しては、「マンション建替え円滑化法(2025(令和7)年11月より「マンション再生法」後述)、マンション管理の適正化等に関しては、2000(平成12)年に制定された「マンション管理法」、被災マンションの再建については「被災マンション法」において、合意形成や権利調整等についての特別の規定が定められている。
さらに、2025(令和7)年には、マンションが国民の1割以上が居住する重要な居住形態となったことに加え、建物と居住者の「2つの老い」が進行しており、外壁剝落等の危険や不在所有者の増加も伴っての集会決議の困難化等が課題となり、新築から再生までのライフサイクル全体を見通して、管理・再生の円滑化を図ることが必要であるとの認識から、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が制定・公布され、マンション管理法、マンション建替え法(抜本改正により題名が「マンションの再生等の円滑化に関する法律(「マンション再生法」)に改正。一部を除き同年11月施行)等とともに区分所有法においても以下の改正が措置された。主な改正部分は2026(令和8)年4月施行予定である。
1.区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、集会出席者の多数決(従前は全区分所有者の多数決)によることとし、集会決議の円滑化を図った。
2.裁判所が認定した所在不明者をすべての決議の母数から除外するとともに、管理不全部分・共用部分等を裁判所が選任する管理人に管理させる制度が創設された。
3.建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊し等が、建替えと同様に多数決議(4/5(耐震不足の場合3/4等)により可能となった。