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建築主等が、建物の新改修等に当たってエネルギーの消費性能の向上のために作成する計画。その計画が誘導基準に適合する旨の認定を受けると、容積率の特例が適用される。建築物省エネ法による制度である。2016年4月1日から施行。 省エネ性能向上計画には、建物の構造、設備、用途などのほか、資金計画も記載しなければならない。 誘導基準は省エネ基準よりも高い水準の性能が定められている。また、非住宅建築物について、省エネ基準では一次エネルギーの消費性能のみが定められているが、誘導基準には外皮熱性能に関する基準も定められている。 省エネ性能向上計画が認定された場合には、容積率の算定に当たって、省エネ性能向上のために措置を講じることに伴う通常の建築物の床面積を超える部分(上限10%)を算入しない特例が適用される。
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
省エネ性能の向上の促進を誘導すべき基準で、省エネ性能向上計画の認定に当たって適合しなければならないエネルギー消費性能とされている。建築物省エネ法に基づいて定められている。2016年4月1日から施行。 誘導基準は、省エネ基準よりも高い水準の性能が定められている。その概要は次の通りである。 1 非住宅建築物について イ)外皮熱性能に関する基準 一定の条件の下で算出し、地域の区分に応じて定める、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷 ロ)一次エネルギー消費量に関する基準 省エネ基準の0.8倍 2 住宅について イ)外皮熱性能に関する基準 省エネ基準と同じ ロ)一次エネルギー消費量に関する基準 省エネ基準の0.9倍
延べ面積を敷地面積で割った値のこと。 例えば、敷地面積が100平方メートル、その敷地上にある住宅の延べ面積が90平方メートルならば、この住宅の容積率は90%ということになる。 建物の容積率の限度は、原則的には用途地域ごとに、都市計画によってあらかじめ指定されている。 さらに、前面道路の幅が狭い等の場合には、指定された容積率を使い切ることができないケースもあるので、注意が必要である。
「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」という。1979(昭和54)年制定)」に基づいて行なわれてきた省エネルギー(以下「省エネ」)施策のうち、建築物に関する部分について、わが国のエネルギー消費量の3分の1を建築物関連が占めること、および2013年の東日本大震災を経て一層エネルギーの使用の改善を図る必要が明らかになったことに鑑み、特に建築物について省エネ性能の向上を図り、抜本的な対策を行なうため、大規模な建築物について新築時等における省エネ基準への適合義務を課す等の措置を定めた法律。2015年7月に公布され、2017年4月(一部は2016年4月)に施行された。制定時の名称は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」であったが、2022(令和4)年改正(「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」による改正)により、「向上」の後に「等」が追加された。 同法に規定されている主な措置は、次の通りである。 1. 建築主に対する規制措置 (1)建築物省エネ法においては、一定規模以上の非住宅建築物について、届出義務を課していたが、本法施行により、省エネ基準(一次エネルギー消費量に関する基準)への適合が義務付けられた。さらに、2022(令和4)年改正により、原則として、住宅を含むすべての建築物に対して省エネ基準への適合が義務付けられた(2025(令和7)年4月施行)。 (2)建築主は、建築基準法第6条の建築確認の手続きの際に、「建築物エネルギー消費性能確保計画」を作成し、(1)の省エネ基準の適合について、所管行政庁の判定(建築物エネルギー消費性能適合性判定)を受けなければならない。 (3)住宅事業建築主が供給する建売戸建住宅や注文住宅に関する省エネ性能の向上のために省エネ基準を超える水準の基準(住宅トップランナー基準)を定め、一定戸数以上の住宅を新築する事業主に対して、努力義務を定め、必要に応じて、省エネ性能の向上を勧告することができることとする。2022(令和4)年改正により、分譲型住宅のトップランナー制度の対象を、分譲マンションにも拡大することとなった(2023(令和5)年4月施行)。2. 省エネ性能向上計画の認定 建物の新築および省エネ性能向上のための改修等に当たって、省エネ性能向上計画を作成し、誘導基準に適合するなどの認定を受ける制度を定める。また、認定を受けた場合には、容積率の特例を適用することとする。3. エネルギー消費性能の表示 建築物の所有者が、その所有する建築物について省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示する制度を定める。2022(令和4)年改正により、2024(令和6)年より販売・賃貸の広告に省エネ性能を表示する制度がスタートすることになった。4. 建築物エネルギー消費性能判定機関等の登録 建築物の省エネ基準等への適合を判定する業務を実施する機関または建築物のエネルギー消費性能を評価する業務を実施する機関が、それぞれ、国土交通大臣の登録を受ける制度を定める。登録を受けた機関は、それぞれ、「登録建築物エネルギー消費性能評価判定機関」または「登録建築物エネルギー消費性能評価機関」として、建築物省エネ法に基づく判定または評価の業務を実施できることとする。5.建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度の創設太陽光発電設備などの再生可能エネルギー利用設備の導入促進のため創設された(2022(令和4)年改正、2024(令和6)年4月施行)。市町村が促進計画を作成・公表することで、区域内には、建築士から建築主に対する再生可能エネルギー利用設備についての説明義務や建築基準法の形態規制の特例許可などが適用される。
建築物の使用によって消費されるエネルギー量に基づいて性能を評価する場合に、その基準となる性能をいう。「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて定められている。法令上の用語は「建築物エネルギー消費性能基準」である。 省エネ基準は、(A)一次エネルギー消費量に関する基準、(B)外皮熱性能に関する基準の二つから構成されている。 (A)一次エネルギー消費量に関する基準 すべての建物についての基準で、一定の条件のもとで算出した、空調、照明、換気、給湯等の諸設備のエネルギー消費量および太陽光発電設備等によるエネルギーの創出量 (B)外皮熱性能に関する基準 住宅についての基準で、一定の条件のもとで算出した、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(単位外皮面積・単位温度当たりの熱損失量)および冷房期の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの単位日射強度に対する日射熱取得量の割合)であって、地域の区分に応じて定める (注:非住宅建築物についても外皮熱性能に関する基準が定められているが、これは、建築物省エネ法上の「建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)」とはされていない。) 省エネ基準は、建築物省エネ法による次のような規制、指導、表示などにおいて、その判定、指示、認定等の基準となっている。 (1)適合義務 すべての住宅・非住宅建築物は、新築時等に、一次エネルギー消費量に関する省エネ基準に適合しなければならず、基準不適合の場合には、建築確認を受けることができない。 (2)エネルギー消費性能の表示 建築物の所有者は、その建築物が省エネ基準に適合することの認定を受け、その旨を表示する。 なお、建築物のエネルギー消費性能に関する基準には、省エネ基準のほか、次のものがある。 ア)住宅トップランナー基準 住宅事業建築主に対して、その供給する建売戸建住宅・分譲マンション・賃貸アパートの省エネ性能を誘導する際に適用する基準 イ)誘導基準 省エネ性能向上計画の認定を受けて容積率の特例を受ける際の基準
建築物のエネルギー消費性能を評価するときの評価指標の一つで、室内外の温度差による熱損失量をいう。この数値が小さいほど省エネの程度は大きい。 非住宅建築物については、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷(単位は、メガジュール/平方メートル・年、「PAL*」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、用途および地域区分に応じて基準とする数値を調整する。 住宅については、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(外皮面積・単位温度当たりの熱損失量で、単位は、ワット/平方メートル・度、「UA値」という)および冷房期(一日の最高気温が32度以上となる期間)の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの日射量に対する日射熱取得量の割合で、「ηAC値」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、地域の区分に応じて基準とする数値を調整する。 その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めるとされている。 なお、エネルギー消費性能の基準として外皮熱性能が用いられるのは、(1)住宅に関する省エネ基準、および、(2)すべての建物に関する誘導基準においてである。
建築物の各階において、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積をいう(建築基準法施行令第2条1項3号)。 なお具体的な床面積の判定の方法については、建設省(現国土交通省)が、通達(昭和61年4月30日付建設省住指発第115号)によって詳しい基準を設けている。