不法行為ふほうこうい

私法上の概念で、他人の権利・利益を侵害し、それによって生じる損害を賠償する責任(債務)が生まれる行為をいい、民法に規定されている。

不法行為責任が生じるのは、1)故意・過失を伴うこと(特定の行為については無過失でも責任が生じる)、2)保護すべき他人の権利を侵害したこと、3)損害が発生したこと(発生の恐れがある場合に行為の差し止めを命ぜられることがある)、4)行為と損害との間に因果関係があること、5)責任能力があること(責任無能力者の行為における監督責任などを含む)という要件を満たす場合であるとされている。一方、これらの要件を満たしていても、正当防衛、緊急避難等一定の場合には、責任を負う必要はないとされる。

不法行為があった場合には、被害者は加害者に対して損害賠償請求権を得る。賠償の対象となる損害には、財産的損害だけでなく精神的な損害も含まれ、また、賠償は、金銭支払によるのが原則であるが、名誉毀損においてはその回復措置としての謝罪広告による賠償も認められている。

なお、使用者責任、工作物責任、製造物責任など、不法行為の成立について特別の扱いが適用される場合がある。