分配金ぶんぱいきん

不動産投資信託投資法人において、利益の分配として投資家に対して支払われる金銭のこと。通常の株式会社でいえば「配当金」に類似する。

分配金は、投資法人の会計期間の終了後に支払われる。不動産投資信託の投資法人の会計期間は通常6ヵ月に設定されているので、不動産投資信託の購入者(すなわち投資主)は、通常、年2回「分配金」を受け取ることができる。

分配金の原資となるのは原則として、投資法人の「当期純利益」である。当期純利益とは、その会計期間中の所得(税引前当期利益)から、法人税等を差し引いた後に残る、最終的な利益を指している。

また分配金の原資に関しては、出資総額(通常の会社でいえば資本金・資本準備金に相当)を原資に充てることも法律上は可能である。これは「出資の払い戻し」と呼ばれる。ただし現在のところ、上場されている不動産投資信託では出資の払い戻しは行なわれていない。

ところで、投資法人には投資法人の課税の特例(租税特別措置法第67条の15)により、法人税が事実上ほぼ免除されるという特長がある。
すなわち投資法人では、税引前当期利益(税法上の所得)の90%超に相当する額を、投資主へ分配金として支払うならば、その分配金に相当する額を法人税法上の「経費」として計上することができる。

具体的には、例えばある投資法人の1会計期間(6ヵ月)の税引前当期利益(税法上の所得)が100億円、分配金が99億円、法人税等の税率が40%であったとしよう。
この場合、分配金を損金(経費)扱いできるので、投資法人が支払うべき法人税等は(100億円-99億円)×40%=4,000万円となる。その結果、当期純利益は100億円から4,000万円を差し引いた残額、すなわち99億6,000万円となる。

このような「投資法人の課税の特例」により、法人税等が事実上ほぼ免除されるので、投資法人では「税引前当期利益」、「分配金」、「当期純利益」がほぼ等しいという現象が起きる。上記の設例でいえば、税引前当期利益は100億円、分配金は99億円、当期純利益は99億6,000万円である。

実際に、上場されている不動産投資信託では、税引前当期利益(税法上の所得)の100%近くを分配金に充てていることが多い。

なお、分配金の金額は、会計期間終了後2ヵ月以内に投資法人の役員会で正式に決定される。
上場された不動産投資信託の過去の実績を見ると、投資口価格(いわゆる株価に相当)に対して3~5%に相当する金額が、(投資口1口当たりの)分配金の1年間の合計として支払われている。

関連用語
予想分配金
不動産投資信託において投資法人が投資主に支払うことを予想した分配金のこと。確定額ではなく、投資法人の業績により変動することが多い。

投資法人はその会計期間(通常6ヵ月)の終了後2ヵ月以内に決算を発表することとされており、このとき、終了した会計期間における投資口1口当たりの分配金が発表される。
それと同時に、次の会計期間の終了後に支払うと予想される投資口1口当たりの分配金も発表されることになっており、これを「予想分配金」と呼んでいる。

例えば、ある投資法人の第3期目の会計期間が「2003年1月1日~同年6月30日まで」で、2003年8月25日にその第3期分の決算発表があったとする。
この決算発表では第3期の分配金が公表される。それと同時に、第4期(2003年7月1日~同年12月31日まで)の予想分配金も公表される。ここで仮に、第3期の分配金が「2万円」、第4期の予想分配金が「2万1,000円」であったものとする。

予想分配金は、会計期間が開始してから2ヵ月程度の早い時期に公表されるものなので、あくまで不確実な予想に過ぎない。賃貸不動産の稼働率が予想より上昇すれば、利益が増えるので、予想分配金は増える。また、金利が予想より上昇すれば利益が減少する結果、予想分配金は減少するという具合である。

このため上記の例でいえば、第4期の予想分配金が「2万1,000円」というのは、あくまで2003年8月25日の時点での予想に過ぎない。第4期の終了時(2003年12月31日)までの4ヵ月における稼働率や金利動向により、大きく変化する可能性がある。

このような予想分配金の変動については、投資法人が随時公表する賃貸不動産の稼働率を、投資法人のホームページで確認することによりある程度は推測することができる。

正式な情報の開示としては、会計期間終了時に、投資法人が予想分配金の修正を公表する。上の設例でいえば、第4期の会計期間の終了時(2003年12月31日)の直後に、第4期の予想分配金の額が例えば「2万4,000円」へと修正されて一般に公表されることになる。

こうして修正された予想分配金は、その後2ヵ月以内に行なわれる決算発表において、完全に確定した額として公表される。修正された予想分配金とこの確定値とは、本来は一致するはずだが、実際には決算処理を行なう過程で僅かにズレが生じることが多い。