富裕層のさまざまな不動産ニーズに応える
ここ数年、都心を中心に不動産価格が上昇してきたが、その主役は富裕層ともいわれる。高値圏との声も聞かれ始めている一方で、都心の人気高額マンションの中には、売り物が出た瞬間に買い手となる富裕層が殺到する例もあるようだ。改めて今、富裕層にとって不動産の魅力は何なのか。みずほ不動産販売 ウェルスマネジメント営業部 執行役員 部長の染谷宜成氏は次のように解説する。
「もともと富裕層は、資産価値の下落リスクが相対的に低い優良な不動産を一族に残したいという思いを持っています。それに加えて、ここ数年の顕著な物価上昇が、インフレに強い実物資産である不動産をより積極的に資産形成プランに組み入れる動機になっていると考えられます」
物価上昇は、建築費・人件費の高騰を招き、不動産の高価格化が進んだ。それでも富裕層の購入意欲が衰えない背景には、富裕層への訴求を強く意識した供給サイドの商品づくりもあるようだ。
「開発の段階から富裕層の意見を取り入れ、機能・デザインに反映させる例もあります。富裕層にとっては、これまでよりもずっと幅広い選択肢を持ちやすい状況だとみています」(染谷氏)
みずほ不動産販売は、2009年にはすでに富裕層営業に特化した「ウェルスマネジメント営業部」を発足させている。同部は全国の営業部店と連携しながら、みずほフィナンシャルグループの取引先である企業オーナー・経営層、ビルオーナーをはじめとする地権者などの富裕層を担当し、取り扱う物件は都心部のタワーマンションから軽井沢などの有名リゾート地の別荘まで多岐にわたる。
「例えばお客さまの資産の承継を考えるに当たっても、数字上の検証のみにとどまらず、中長期的な資産価値を保ち、承継されるご家族などの負担まで考慮し、時には管理会社の変更も含めて提案するなど、きめ細かいサービスを実施しています」(染谷氏)
発足以来14年、富裕層ならではのニーズに対して丁寧に応えてきた結果、「みずほ不動産販売には安心して任せられる」との信頼を得て、顧客のリピート率も高くなっているようだ。業界内での「みずほ不動産販売は富裕層営業に強い」との評もうなずける。
全社を横断する富裕層推進プロジェクトチーム
新たな動きもある。みずほ不動産販売は23年4月、富裕層推進プロジェクトチームを立ち上げ、さらなる富裕層対応の強化に乗り出した。その狙いについて、同社ウェルスマネジメント推進担当 常務理事の小野博幸氏は次のように語る。
「ウェルスマネジメント営業部が蓄積してきた知見や専門性・スキルを、社内横断的に伝播していくとともに、より多くの富裕層のお客さまとの接点を拡大していきたいと考えています。プロジェクトチームの活動により、お客さまとお客さまファミリーの目線に立った、クオリティーの高い不動産仲介サービス提供を拡大することが狙いです」
昨今のニーズの高まりに応え、富裕層向けにシフトする不動産会社も増えている。その中で、みずほ不動産販売だからこそ提供できる価値、メリットはどのようなものなのか。「当社の強みの1つは、遠隔地取引に代表されるような拠点ネットワークです」(小野氏)。
同社は、三大都市圏を中心に、最近注目の集まる札幌・仙台・広島・福岡を含め北海道から北陸・九州に至る全国49の営業拠点を構えている。エリアをまたいだ富裕層のニーズに対してきめ細かなサービスを自社で提供できる体制は、間違いなく安心感につながっているだろう。自身、みずほ信託銀行で約20年間にわたり不動産流通の業務に就いてきた小野氏はさらにこう続ける。
「当社の母体はみずほ信託銀行のグループ会社として創業した経緯があり、富裕層のお客さまのさまざまな事案を取り扱ってきた豊富な知見があります。これらの実績を踏まえ『非公開の物件情報』を業界各社から提供してもらえる情報ネットワーク力も当社の強みです。さらに、お客さまの課題にさまざまな角度からソリューション提供をサポートするコンサルティング部はもとより、お客さまの要望に応じてみずほ銀行・みずほ信託銀行をはじめみずほグループ各社の総合力をご提供できるのも当社の強みだと自負しています」
西日本も含め全エリアで富裕層営業を強化
みずほ不動産販売の富裕層推進プロジェクトチームは、東京だけでなく大阪にも常駐メンバーを置き、全エリアでの富裕層営業強化を目指している。西日本ウェルスマネジメント推進担当 執行役員の福本進一氏は、西日本エリアにおけるインナーブランディングにも力を注ぎながら、企業オーナーなどの要望に応えるハイレベルな営業体制の整備を一歩一歩進めている。
遠方や多忙のために十分に物件を視察する時間を取れない富裕層に対して、同社のスタッフが現地を調査し、さらにリアルタイムの動画生中継で報告するなど、きめ細かな対応が好評だという。福本氏は、西日本の企業オーナーが都心一等地の新築一棟マンションを購入した事案を例に挙げる。
「投資用不動産を多数保有するオーナーさまに、リスク分散の観点も含めてご紹介しました。遠隔地取引ということもあり、情報管理を徹底しながらオーナーさま目線を関係部署間で共有したうえで、施工状況や細部仕様の仕上げ状況を現場立ち会いでチェックしたり、賃貸手続きや建物管理会社の選定など運営面に至るまで当社が助言・サポートしたりすることで、お客さまも安心され、ご満足いただける取引になりました」(福本氏)
みずほ不動産販売なら、地方在住の富裕層でも、東京にいるのと同様に情報提供やサポートを受けられるのは頼もしいところだ。
コンサルティング部や専門家が営業部店をサポート
コンサルティング部の存在も、みずほ不動産販売の強みの1つだ。コンサルティング部 部長の福井一虎氏は次のように語る。
「当社にはもともと、一人ひとりのお客さまに寄り添い、コンサルティングサポートを行うという信託銀行のDNAがあり、単なる不動産仲介ではない丁寧な営業が強みです」
みずほ不動産販売では、不動産を所有している顧客に対し、どの営業部店の担当者も、“資産検診”を短時間で実施して、所有不動産について、建て替えや売却、組み換えを行うべきかどうかの参考情報を提供できるという。また、これから不動産投資を考えている顧客に対しては、複数シナリオでの長期キャッシュフローの試算や投資効果とリスクの定量化などを通じ、投資する不動産の選択や最適な借り入れ割合などの検討をサポートできるという。
これらが可能となるよう、コンサルティング部は、独自開発の評価・診断・提案フォーム十数種類を提供するほか、営業担当者に実践的な教育・研修を行っているのだ。ただし同部の最大の役割は、富裕層を中心とした顧客への個別提案にある。福井氏にみずほ不動産販売らしい好事例を聞いてみた。
「ある企業オーナーさまから、ご自宅に隣接する会社所有地の活用方法についてご相談をいただきました。賃貸か売却か、ご自宅を含めるか、売却ならどの用途が最適か、賃貸なら高層か低層かなどの検討を行い、買い換えを含む複数プランを提案いたしました。とくに本件では、企業財務や事業承継への影響のみならず、建物建設時のご自宅の日照状況について、建築士作成の日影図を基に説明を行いました」
結果として顧客は、今後の住環境についても確認のうえ、価格面ではなく将来的な安心を最重視してプランを選択したという。
顧客の期待を上回る提案を行うためには、顧客が必要としている判断材料を、いかにわかりやすく、的確に提供できるかがポイントだという。「そのために、不動産と財務のプロとして、将来にわたるさまざまな可能性やリスクを見通す視点が欠かせません」(福井氏)。
同社は、資産税に精通する税理士や実績豊富な建築士、家族信託を熟知する司法書士など専門家との連携にも特色があるが、「専門知識だけでなく『顧客志向』や『相談・提案力』を共有できる専門家とのネットワークをとくに大事に考えています」と福井氏は語る。
みずほ不動産販売は、全国の営業部店と、ウェルスマネジメント営業部やコンサルティング部などの専門部署とが連携し、みずほ信託銀行の系譜を継ぐ「質の高い富裕層向け不動産サービス」を提供していることがうかがえる。さまざまなニーズ・悩みを抱える富裕層からの支持の高さにも納得がいく。富裕層営業を強化する同社の今後の取り組みにも注目したいところだ。