最終更新日:Wed, 04 Jun 2025 18:00:00 +0900

工事監理

こうじかんり

建築基準法第5条の6は、「建築主は」、「建築士である工事監理者を定めなければならない」と規定し、建築士法第2条第8項は、「「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう」と定義し、建築士の資格種別ごとの工事監理可能な建築物、設計図書どおりでない場合の施工者への指摘・修正徴求及び施工者がそれに従わない場合の建築主への報告(建築士法第18条)及び工事監理結果の建築主への報告義務(同法第20条、同法施行規則第17条の15)を規定している。主に建築主の側に立って、施工業者を監査し監理指導する役割であり、施工業者側における「施工『管』理」や工程管理、建設業法に基づく監理技術者または主任技術者や、これらに必要となる資格である施工管理技士等とは、業務内容や必要とされる能力に共通する部分があるが、立場が違っている。

工事監理の具体的な業務内容については、建築士法第25条に基づく「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することができる報酬の基準」(平成31年国土交通省告示第98号)により、(1)工事監理方針の説明、(2)設計図書の内容の把握等(明らかな矛盾、誤謬等を発見した場合には建築主に報告等)、(3)設計図書に照らした施工図等の検討及び報告(施工者が作成した施工図、製作見本等が設計図書の内容に適合しているかについて検討し、建築主に報告)、(4)工事と設計図書との照合及び確認、(5)(4)の結果報告等(工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに施工者に指摘し、修正を求め、これに施工者が従わないときは、建築主に報告)、(6)工事と設計図書との照合及び確認をすべて終えた後、工事監理報告書等を建築主に提出と定められており、さらに(4)の照合及び確認業務の具体的内容については、「ガイドライン」により立会い確認、書類確認、抽出による確認が挙げられている。

「建築士の資格種別ごとの工事監理可能な建築物」としては、例えば、2階建て以下で、木造では延べ面積100平方メートル以下、木造以外では延べ面積30平方メートル以下の建築物に関しては、建築士でなくともよいとされているが、木造2階建てでも延べ面積100平方メートル超のものについては、1級・2級又は木造建築士のいずれかの資格が必要となり、高さ13メートル超の建築物の場合は、1級建築士でなければ建築基準法上の工事監理者とはなれない。

建築士事務所・設計事務所等が、広告や看板等で「設計(・)施工監理(管理)」と表示しているものの多くは、設計業務に加えて、この工事監理業務を受託することを指している場合が多いと考えられる。

 

-- 関連用語 --

施工監理

法律用語としては、建築基準法および建築士法に基づき、建築士が、発注者の代理人の立場で、設計図どおりに建築工事が行なわれているかどうかを確認することを「工事監理」という。一方、建設業法に基づき、建設業者が請け負った建設工事において、工事現場における施工の技術上の管理(これを「施工管理」と呼ぶことが多い)を行なわせるため置かなければならないとされているのが、監理技術者ないし主任技術者である。 表題の「施工監理」は、この「工事監理」と「施工管理」をまとめて、場合によっては、誤用、混同して用いられていることが多い用語で、使用に当たっても読解に当たっても注意が必要である。 一方、後述するように、公的発注者またはその受託者や代理人的立場の者による発注者側の監理または技術的管理業務や、海外などでコンサルタントがプロジェクト全体や現場の施工を一貫して統括管理(監理)したり、部分的に関与する業務を「施工監理(または施工管理)」と表現している例も見られる。 通常「監理」(建築主、施主、発注者の立場で、設計図通りに施工が行なわれているのかをチェックする業務。設計を請け負った建築事務所等が、設計業務と一体として受託等する場合が多い。)を「さらかん」、「管理」(工事の請負者、建設業者、工事受注者の立場で工事の工程、資材の発注のほか全般を現場でコントロールする業務)を「くだかん」「たけかん」と言っている。施工「監」理の場合は、「さらかん」として、発注者側の工事監理を意味している場合が多い。建築基準法により技術者が工事監理を行なう場合には、現場の施工を厳しく監査するとともに、施主に対して責任をもって適正な施工を約するという意味になる。 施工「管」理すなわち「くだかん」「たけかん」の場合は、工事を請け負った側の建設業者が施工計画の作成、工程管理、品質管理、資材調達や技術上の問題点の改善のために現場作業員を指示するなどの行為を通じて適正な施工を確保する業務を指す。建設業法は、下請を含む直接施工する建設業者の従業員で、この業務を行なう者として「主任技術者」の設置を義務付けている。ただし、下請業者への発注を伴う等の一定規模以上の元請工事についてこの業務を行なう者については、下請の技術者を統括するという意味を含めて「監理技術者」とし、同様にその設置を義務付けている。すなわち、元請ゼネコンは、受注者・施工者として「管理」を行ないつつ、下請に対しては発注者として「監理」をしているという構図がある。このように「施工管理」を行なう技術者を統括する者を「監理技術者」と呼び、その業務も、建設業法上の「施工管理」の一環であることから、「施工管理」の一部を行なうものを「監理技術者」と呼んでいる関係上、そもそも「監理」と「管理」の用語が混乱しやすい素地がある。また、公共建築物の発注者である国土交通大臣官房官庁営繕部は、受注業者向けに「施工管理・工事監理に関する留意事項集」等を作成しており、これらは、元請が行なうのが「監理」であり、下請または直接受注の施工業者が行なうのは「施工管理」となるという実態に依拠した用語であろうと思われる。
さらに、国や地方公共団体、UR等の公共事業に関わる独立行政法人、高速道路会社等が発注者である場合には、発注者側の専門的な技術的知見等を反映しようとする意向が強く働く結果、発注者において工事監理・施工管理的な業務を行なう場合もあり、その場合には、自ら工事全体を管理し、また監理もするという意味で、「施工監理」という用語を用いている場合もある。 公共事業や独立行政法人が地方公共団体から受託して行なう事業の場合は、国民や納税者、委託者である地方公共団体に対して、その工事を含む事業またはプロジェクト全体の遂行に関する統一的な責任を負うため、工事を請け負った建設会社に対して発注者の立場で監理をしながら、委託者等に対しては、管理責任を有するという意味合いから、施工監理ないし施工管理という表現が用いられていることがある。 現実に、ゼネコンによる総額請負方式が多い日本に比べ、海外では、発注者が事業遂行を全面的に委託するコンサルタント業務が広く行なわれており、例えば(独)国際協力機構の「コンサルタント契約書標準約款」では、コンサルタントの業務の一つとして「施工監理計画書の作成」が規定されており、同法人のWEBサイトにおいては、「コンサルタント(施工監理者)は、発注者(施主)の代理人として、施工業者が契約書、技術仕様書・設計図、及びこれらに記載された出来形管理基準、品質管理基準に基づいた施工を行っているかを監理する役割を担っています」との記述がある。 工事発注者から委託を受けた建築士や設計事務者が行なうのが工事監理(建築基準法・建築士法)であり、受注者であり請負者である建設業者側でマネジメントを行なうのが施工管理(建設業法)である一方、発注者側による「施工監理」という用語がなされることも実際には見られるということであるが、いずれにしても、「工事監理」ないし「施工管理」のいずれかの誤用(場合によっては単なる漢字変換ミス)の場合も決して少なくなく、その上口頭で伝達される場合も多いので、注意が必要である。

監理技術者

建設業法第26条は、適正かつ生産性の高い建設工事の施工を確保するため、建設業者がその請け負った建設工事を施工するときに、当該工事現場の「施工の技術上の管理をつかさどる」技術者を置かなければならないとしており、下請代金総額5,000万円以上の元請工事または8,000万円以上の建築一式工事においては、「監理技術者」を、それ以外の工事については「主任技術者」を置かなければならないとしている。 監理技術者は、請け負った建設工事全体の統括的施工管理を行なう者として、(1)施工管理計画の作成(下請の作成した施工要領書等の確認を含む)、(2)工程管理(下請間の工程調整等)、(3)品質管理、(4)技術的指導(主任技術者の配置等法令順守や職務遂行の確認、現場作業の総括的指導)を行なう。 監理技術者の資格要件は、1級施工管理技士、1級建築士、技術士、実務経験者(指定建設業(土木一式等7業種)を除き、主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者)および 国土交通大臣特別認定者である。これらは、特定建設業の許可に際しての営業所専任技術者の要件と同一である。