「中古物件購入+リフォーム」による家探しが合理的な理由

中古+αで住まいの満足度アップ(第7回)

この記事の概要

  • 持ち家の購入に際し、新築だけでなく、中古住宅(既存住宅)も併せて検討することは一般的になっています。近年は、価格が抑えられるという理由だけで中古物件を選択するのでなく、リフォームの実施を前提とした“積極中古派”も増えているようです。今回は、リフォームを前提とした中古住宅の探し方のポイントを紹介します。

「中古物件購入+リフォーム」による家探しが合理的な理由

中古住宅購入とリフォームをまとめて行うメリットとは?

リフォームを前提に中古住宅を購入する方が増えています。家を新築住宅より安く手に入れ、最低限の修繕費用で済ませるケースもありますが、目指す暮らしのイメージが具体的な方の場合、リフォーム費用を含めても新築住宅以下の価格で抑えられる点にメリットを感じているようです。性能・機能は最新でも、お仕着せの間取りやデザインになる新築をあえて候補から外し、「中古住宅+リフォーム(リノベーション)」でこだわりの空間をつくる方もいます。

中古住宅を購入し、しばらく住んだ後にリフォームする方法もありますが、物件購入のタイミングでリフォームすることで、後日リフォームする場合とは違ったメリットが得られる場合があります。それらは大きく「性能面」「意匠面」「費用面」に整理できます。

(表)中古住宅購入のタイミングでリフォームを実施するメリット例

項目 概要
性能面
  • ・不具合や劣化した部位を修繕・メンテナンスで機能回復できる
  • ・不足している住宅性能・機能を向上できる
  • ・(上記実施を通じて)中古物件の性能や瑕疵にまつわる不安を解消できる
意匠面
  • ・前所有者の生活感を払拭できる
  • ・自分好みの間取りや空間にカスタマイズできる
費用面
  • ・リフォーム費用をかけても新築よりリーズナブルに持ち家を取得できる
  • ・居住開始以降にリフォームをするより費用を抑えられる
  • ・住宅ローンとリフォームローンの一本化も可能(*ローン商品による)

まず性能面ですが、新築住宅と違い、経年などによって性能・機能の劣化している中古住宅を、修繕やリフォームによって一定の性能に回復、あるいは向上できます。それにより、中古住宅ゆえの「見えない劣化や不具合はないか」「安心して住めるのか」といった、住宅購入時に抱きがちな漠然とした不安を解消できます。不安を解消し、安心して快適に生活できるということは、心理的にも大きなメリットと言えます。

意匠面のメリットは、自分たちの好みの間取りや仕様にカスタマイズできることです。フルオーダーの戸建て注文住宅でもない限り、たとえ新築住宅でも間取りや仕様には一定の制約があり、100%自分たちの思い通りの空間が手に入るわけではありません。しかし、中古住宅ならリノベーションも容易で、家族のライフスタイルに合わせて空間をオーダーできます。

では、費用面はどうでしょう。一度生活を始めるとリフォームの際は荷物の移動が伴いますし、大型工事だと一時転居も必要になります。荷物や人の存在は工事日程の延伸につながり、費用もかさんでしまいます。中古住宅購入直後のリフォームであれば、荷物も人もいない状態で計画的に工事が進められ、余計なコストがかかりません。

住宅ローンの中には、リフォーム費用も含めて融資してくれる商品もあります。住宅ローンとリフォームローンの2本立ては手間も審査も面倒ですが、1本化できれば申し込みの負担が減るだけでなく、リフォーム費用も住宅ローンの安い金利で借りられるという大きなメリットにつながります。

リフォーム費用はどれだけ確保すればよい?

リフォームを前提とした中古住宅探しとなると、気になってくるのがリフォーム費用です。多くの方は「中古住宅取得費用+リフォーム費用」の総予算で検討しますから、中古住宅探しの価格の根拠にもなります。

リフォーム費用は、物件の築年数やコンディションなどで大きく変動します。また、リフォームは劣化した機能の回復・向上のためだけでなく、住まいを自分たちの目指すライフスタイルにマッチさせるという好みや志向の要因もありますから、概算としても示しにくいのが実情です。

(表)リフォーム費用の増減要因例

項目 概要
リフォームの
実施規模
  • ・面積が広い、容積が大きいほどリフォーム費用は高額になる
建物の築年・
リフォーム履歴
  • ・築年が古いほど、修繕や設備更新の費用が高額になりがち
  • ・過去のメンテナンスやリフォーム実施状況によって費用に幅が出る
設備グレード・
付帯設備など
  • ・標準仕様よりも高いグレードの設備商品や建材は高額になる
  • ・設備機器のオプション追加は高額になる
  • (例:食洗機、気泡浴槽、追い焚き機能など)
間取り変更の有無
  • ・既存の間取りをそのまま生かす方が、費用は抑えられる
  • ・水まわりは、位置を変えると配管の敷設コストが上乗せされる
造作など
  • ・壁紙の張り替えより、塗り壁(ペンキ、漆喰など)の方が高額になる
  • ・建具など、既製品でなく造作する場合は高額になる
その他
  • ・リフォーム業者の得意不得意で費用に幅が出る
  • ・デザインリフォームについては、設計料やデザイン料が発生する場合もある

では、リフォーム費用の目安として「予算がいくらあれば何ができるか」、多くの住まい手が希望する工事を中心に概算を示してみましょう。

(表)【参考】リフォーム予算別の工事例

予算概算 実施可能なリフォーム例
50万円以下
  • ・軽微な修繕やハウスクリーニング
  • ・壁紙など内装の交換
  • ・給湯器、腰掛便器、水栓金具など小型設備機器の交換
  • など

50~100万円程度
  • ・トイレ、洗面所などの水まわりリフォーム(部屋部位)
  • ・開口部の内窓の追加
  • ・収納力の増加

など

100~300万円程度
  • ・キッチン、ユニットバスの交換(単部位)
  • ・戸建て住宅の屋根・外壁メンテナンス
  • ・戸建て住宅の耐震改修

など

300~500万円程度
  • ・水まわり全体の更新(バス+トイレ+洗面所)
  • ・キッチン更新+LDKに

*いずれも元の位置に近い場所での更新

など

500~1000万円程度
  • ・間取り変更を伴う大型リフォーム
  • ・戸建て住宅の断熱改修(1階のみ)

など

1000万円以上
  • ・マンションの全面改修
  • ・戸建て住宅の1階ワンフロア改修〜1棟フルリフォーム
  • ・断熱や耐震性能向上などの性能向上リフォーム
  • ・二世帯住宅化リフォーム

など

*あくまでも目安としての参考値

50万円以下だと、基本的には模様替えレベルになります。コンディションがよく設備機器がそのまま使えそうな場合、壁紙を張り替えるだけの“プチリフォーム”でも室内イメージを一新できそうです。ただ、トイレを例に挙げると、腰掛便器の交換は可能でも、トイレ室内全体のリフォームは難しいかもしれません。ユニットバスの交換は難しいですが、給湯器を更新し、追い焚き機能を付加させるなどのグレードアップは叶いそうです。

予算が100万円程度にアップすれば、築年の古い住宅でもリフレッシュ度が高まりそうです。水まわり全体の更新は難しいですが、生活感が出がちなトイレや洗面所など、部位単位での更新は可能になってきます。人気の収納の増設も検討できるでしょう。冬の寒さが気になる住まいなら、内窓(インナーサッシ)を追加することで断熱性能がアップします。このように、室内の機能性や快適性を高めるリフォームもよいのではないでしょうか。

本格的な水まわりの更新を希望するのであれば、300~500万円程度の予算は見ておきたいところ。サイズやグレードにもよりますが、システムキッチンやユニットバスの交換も視野に入ってきます。間取りを大きく変えるとコストがかかりますが、狭いキッチンと隣室を一体化させて広いLDKにするなど、ライフスタイルに合わせた、遊び心のあるリフォームができる余裕が出てきます。

予算が500万円以上になると、間取りの変更を伴う大規模リフォームも検討できます。設備や建材などのグレードにもこだわることも可能になるでしょう。これが1000万円以上になれば、建物の構造のみを残してスケルトン(骨組み)化し、断熱性能などの性能向上を含めて全面改修するフルリフォームも検討できるはずです。

中古戸建ては外装部のメンテナンス費用も加味する

中古の戸建て住宅でリフォームを検討されている方は、こうしたリフォーム概算にもう少し上乗せが必要です。というのも、戸建て住宅は屋根や外壁など、外装部の診断費用やメンテナンス費用が必要だからです。

戸建て住宅は、基礎と柱、梁といったスケルトン(骨組み)が構造部となって、住宅の長期使用を可能にしています。その構造部を雨水や湿気、太陽光などから守るための“鎧”が、屋根や外壁などの外装部です。分譲マンションは管理組合主導で建物のメンテナンスを行いますが、戸建て住宅は所有者本人が行う分、追加予算が必要というわけです。その代わり、毎月の管理費や修繕積立金を徴収されることもありません(将来に備えてのメンテナンス費用の積立は必要ですが)。

(表)戸建て住宅の外装部のメンテナンス周期

点検箇所 点検の目安 設備更新・劣化対策
屋根 5年周期で点検 15〜20年で全面葺き替えを検討
外壁 3年周期で点検 15年で全面補修を検討(窯業系サイディング壁)
窓サッシ・
玄関ドアなど
5年周期で点検 20年で全面取り替えを検討

出典:(一財)住宅金融普及協会「住まいの管理手帳−戸建て編−」を基に作成

戸建て住宅の外装部の性能は、極めてメンテナンス状況が反映されやすい部位です。同じ築年・工法・建材であっても、長年放置していれば傷みも激しくすぐの更新が必要ですが、こまめなメンテナンスが実施されていれば、たいした費用負担はないかもしれません。

外装の状況については2018年から、不動産業者によるホームインスペクション(建物状況調査)の説明が義務化されています。ただし、あくまでも「説明の義務」であり、インスペクションの「実施の義務」ではありません。インスペクション済みの物件であれば、外装部のコンディションについての調査結果を聞くことでリフォーム費用の参考になるかと思います。

中古住宅はカスタマイズ度の高い魅力的な箱!

中古住宅は新築住宅よりも価格が抑えられるので、その分をリフォーム費用に充てて自分好みの空間を手に入れることができる、カスタマイズ性の高いものと言えます。新築住宅の方が住宅性能も高めですが、中古住宅でも断熱(省エネ)や耐震、バリアフリーなどの性能向上はリフォームで実現できますし、国や自治体からの支援制度(補助・減税・融資)も手厚くなっています。

【補助金の一例】
住宅の省エネリフォーム支援事業「住宅省エネ2023キャンペーンについて」

中古住宅をただ「安い住宅」としてではなく、性能向上やカスタマイズが楽しめる「自由度の高い魅力的な箱」と捉えることが、新築住宅以上の満足度のある持ち家を手に入れることにつながっていくはずです。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築・不動産ライター。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上をテーマとして執筆活動を展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2022年12月23日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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