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J-REITが取得した賃貸マンション(一棟)の稼働率の状況

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 7月号

この記事の概要

  •  J–REITが取得した賃貸マンション(一棟)の運営データ※1(以下、本データ。)によると、2010年以降稼働率は上昇期にあり、2016年下期の96%強は本データの期間中で過去最高。
  • エリア別に見ると、東京の都心5区※2と周辺区および都下※3で上昇しているものの、政令指定都市※4では2013年以降下降傾向にある。賃貸マンション(一棟)における稼働率の変化幅は比較的小さいものの、東京都と政令指定都市では異なる動きとなっている。

1)稼働率は2010年以降上昇を続けており、本データの期間中では過去最高

稼働率が一定の水準以下に低下すると、稼働率を回復させるためにオーナーは賃料水準の引き下げ方策を検討する場合がある。この結果、稼働率低下の後に賃料水準が低下する傾向がある。見方を変えると、稼働率が上昇している状況では、賃料水準は低下せず、賃料収入が安定した状況が続く傾向があるといえる。
 J–REITが取得した賃貸マンションの全体の平均稼働率は、2010年以降上昇傾向で推移し、前回ピーク時(2008年ごろ)の水準を超え、2016年下期(12月期)の96%強は本データの期間中で過去最高となった。賃貸マンションの稼働率が好調であることの背景には、J–REITの取得物件が住宅需要の集中しやすいエリアに立地し、比較的築年が浅く一定の品質を確保した物件が中心であることや、2012年12月に始まった景気回復が長期間続き賃貸マンション需要の底ざさえとなっていることなどが考えられる。
 都市区分別にみると、東京の都心5区や周辺区および都下は上昇傾向にある。政令指定都市は2012年以降高い水準で推移していたが、2013年以降は下降しており、次ページに述べるように他とは異なる動きとなっている。

※1:対象物件は、J–REITが2016年12月末までに取得した賃貸マンションのうち、賃料収入が変動すると考えられる物件(2256物件)を抽出した。

※2:次の区を指す。千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区

※3:都心5区以外の区市町

※4:2016年10月26日現在、全国で20市存在する。札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、川崎市、横浜市、相模原市、静岡市、浜松市、新潟市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市

[図表1]都市区分別の直近1年間の稼働率の推移

[図表1]都市区分別の直近1年間の稼働率の推移

データ出所: 都市未来総合研究所「ReiTREDA」

2)J–REITが取得した物件データによると主な政令指定都市の稼働率はいずれも高水準にあるがその中で唯一大阪市だけがさらに上昇

政令指定都市の中で、J–REITが20物件以上※5保有する以下の6市を取り上げ、2013年以降の動向をまとめた[図表2]。

6市の全体動向:仙台市を除いて、95.5%~97.0%の狭い範囲で変化している。唯一大阪市だけが上昇傾向にあるが、他の市は低下気味。2016年下期に96%以上となっているのは、仙台市、大阪市、札幌市の3市

札幌市: 比較的高い水準ではあるが、2014年12月をピークに緩やかに低下(直近は横ばい)
仙台市: 震災特需の影響があったため非常に高い水準であったが、徐々に低下。都市区分別で政令指定都市が2012年以降高い水準にあり、他の都市区分に比べて大きく下落している([図表1])のは、仙台市の影響が大きいと考えられる
横浜市: 2013年6月以降下降傾向にあったが直近では上昇、比較的低い水準
名古屋市: 2013年をピークに低下、比較的低い水準
大阪市: 比較的低い水準であったが、2015年から上昇、比較的高い水準に
福岡市: 2013年をピークに低下※6

注)上記の動向は、J–REITが6市に取得した物件の平均稼働率の推移についての記述である。
必ずしも各市の賃貸住宅のマーケット動向と一致するものではない。

※5:2016年12月期における各都市の対象物件数は次のとおり

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総数に対する構成割合 2016年12月期時点の
対象物件数
平均築年数
ワンルーム コンパクト ファミリー
札幌市 11.0% 73.6% 15.4% 91 10.8
仙台市 52.1% 28.2% 19.7% 71 12.7
横浜市 60.0% 20.0% 20.0% 50 15.4
名古屋市 42.7% 30.5% 26.7% 131 11.6
大阪市 58.5% 29.6% 11.9% 135 10.8
福岡市 42.2% 45.8% 12.0% 83 11.4

ワンルーム:概ね30㎡未満

コンパクト:概ね30㎡~60㎡未満

ファミリー:概ね60㎡以上

[図表2]主な政令指定都市の直近1年間の稼働率の推移

※6:対象物件の中で2016年12月期の稼働率が80%未満の物件が大阪市と福岡市にそれぞれ1物件ずつあるが、福岡市では対象物件数が比較的少ないためその影響が出ている。

[図表2]主な政令指定都市の直近1年間の稼働率の推移

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

発    行: みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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