早く申請したい! エコリフォーム新補助金制度のポイントとは?

理想の住まいのために知っておくべきトピック

断熱改修や節水型トイレ、高断熱浴槽、高効率給湯器の導入等、エコリフォームを実施すると、費用の一部について国から補助金を受けられる制度がスタートしています。せっかくの補助金制度です。見逃す手はありません。制度のポイントを紹介しますからぜひとも検討してください。

事業の正式名称は「住宅ストック循環支援事業」といいます。インスペクションを実施し、既存住宅売買瑕疵保険に加入する既存住宅の取得や、耐震性が確保された省エネ改修、一定の省エネ性能を有する住宅への建替えに対して、国がその費用の一部について支援する補助制度です。

2010年以降、「住宅エコポイント」「復興支援・住宅エコポイント」「省エネ住宅ポイント」といった補助金に類似の制度が実施されてきました。その予算額は、それぞれ2,442億円、1,446億円、905億円(追加予算分を含む)でした。それに比べると今回の制度の予算額は250億円と少ないので、利用するには急いだほうがいいかもしれません。申請の締め切りは2017年6月30日ですが、早めに締め切られる可能性があります。

住宅ストック循環支援事業の特徴は、住宅所有者だけでなく中古住宅購入者も対象としていることです。40歳未満に限られますが良質の既存住宅を購入する際に、建物の現況性能を確認するインスペクション費用(5万円)やエコリフォーム費用(最大50万円/戸、耐震改修を行う場合は最大65万円)について補助が受けられます。耐震性を有しない既存住宅(または2013年以降に発生した災害で被災した住宅)をエコ住宅に建替える場合、戸当たり30~50万円の補助が受けられます。

補助の中心は開口部の断熱リフォームとエコ設備機器の採用

それではエコリフォームを実施する場合の概要を紹介しましょう。まず、対象となる住宅ですが、マンション、戸建て住宅、いずれも補助の対象になっています。ただし、1981年6月以降に建築確認を申請し、建てられた、いわゆる「新耐震基準」を満たした住宅ストックであることが条件になります。それ以前に建てられた住宅については、耐震改修で新耐震基準以上に性能向上した(または同時に耐震改修を実施)することが必要です。

主な対象工事については以下の4つです。

①開口部の断熱改修

内窓の設置や、ガラス交換、外窓交換、ドア交換が対象となり、部位やサイズに応じた補助金が受けられます。

②外壁・屋根・天井・床の断熱改修

リフォーム工事後に獲得した断熱性能のレベルに応じて、補助金が受けられます。住宅の建て方、断熱材の区分に応じて定める断熱材使用量以上のものが対象となります。箇所等によって金額が異なります。

③設備エコ改修

エコ住宅設備のうち3種類以上(太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽、高効率給湯機、節湯水栓)を設置することで、補助が受けられます。

④併せて対象となる改修(5項目)

前記①~③のいずれかの項目でエコリフォームの対象となった場合、手すりの設置や廊下幅等の拡張、段差解消等のバリアフリーリフォームについても併せて補助対象とできます。

木造住宅の劣化対策も補助金の対象に

それでは個々のエコリフォームについて、さらに詳細なルールを説明します。

①開口部の断熱改修

①②は住まいの省エネ性能を高める断熱リフォーム。中でも①は、基本的には建物自体をいじらずに「交換」で対応でき、1日でも実施可能なお手軽なエコリフォームです。
具体的な工事例としては、窓やドアの交換。古いサッシ窓を断熱性の高い窓に交換したり(外窓交換)、今ある窓の室内側に樹脂サッシを付加して二重窓にする(内窓設置)、あるいは単板のガラスをペアガラス等に交換する(ガラス交換)、古いドアや引き戸を交換・新設する(ドア交換)等が挙げられます。
補助額は、1カ所あたりの補助額×施工箇所数となります。

■開口部の断熱改修における補助額

左右スクロールで表全体を閲覧できます

  内窓設置・外窓交換 ガラス交換※1 ドア交換
面積※2 1箇所当たりの補助額 面積※3 1枚当たりの補助額 面積※2 1箇所当たりの補助額
2.8㎡以上 20,000円 1.4㎡以上 8,000円 開戸
1.8㎡以上
引戸
3.0㎡以上
25,000円
1.6㎡以上
2.8㎡未満
14,000円 0.8㎡以上
1.4㎡未満
5,000円    
0.2㎡以上
1.6㎡未満
8,000円 0.1㎡以上
0.8㎡未満
3,000円 開戸
1.0㎡以上
1.8㎡未満
引戸
1.8㎡以上
3.0㎡未満
20,000円
  • ※1 ガラス交換は、箇所数ではなく、交換するガラスの枚数を乗じて算出
  • ※2 内窓もしくは外窓のサッシ、または開戸もしくは引戸の戸枠の枠外寸法を測定
  • ※3 ガラスの寸法を測定

②外壁・屋根・天井・床の断熱改修

外壁や床、天井に断熱材を充塡する本格的な断熱工事が対象。地域や目標性能に応じて設定されたレベルについて、最低使用量以上の断熱材を使用する改修について、施工部位ごとに1戸当たり下記の額が補助されます。

■外壁・屋根・天井・床の断熱改修における補助額

外壁 屋根・天井
120,000円
(60,000円)※
36,000円
(18,000円)※
60,000円
(30,000円)※
  • ※部分断熱の場合の補助額

③設備エコ改修

トイレやシステムバスルーム等、機器の交換だけでエコ性能が向上する設備機器もあります。1回の洗浄水量を抑えた節水型トイレ、冬場でも寒さを感じさせない断熱性能が高い高断熱浴槽等、ランニングコストが低かったり、住まい手の安全性や快適性に貢献する工事です。水やお湯の流量を抑える節湯水栓は、キッチンや洗面所のリフォームに採用可能な設備機器です。また、エコキュートやエコジョーズ等の高効率給湯器もエコリフォームの対象。

条件としては、5種類のエコ住宅設備のうち、3種類以上を設置すること。2種類以下の場合、④の「併せて対象とするリフォーム等」の補助要件となり得ます。

■設備エコ改修における補助額

  補助額
太陽熱利用システム 24,000円
節水型トイレ 24,000円
高断熱浴槽 24,000円
高効率給湯器 24,000円
節湯水栓 3,000円

④併せて対象となる改修(5項目)

前記①〜③のエコリフォームと併せて実施することで、補助が適用される工事。下記のA〜E、5つの工事が対象となります。

A.バリアフリー改修

手すりの設置、段差の解消、廊下幅等の拡張等、ベーシックなバリアフリーリフォームが対象となります。施工箇所数は問われず、改修を行った対象工事の種類に応じた額が補助されます。

■バリアフリー改修における補助額

対象工事 工事内容 補助額
手すりの設置 便所、浴室、脱衣室、その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路のうち、いずれか1カ所以上に1本以上の手すりを設置する工事 6,000円
段差解消 便所、浴室、脱衣室、その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路のうち、いずれか1カ所以上の床の段差を解消する工事(勝手口、その他屋外に面する開口の出入り口および上がりかまち、ならびに浴室の出入り口にあっては、段差を小さくする工事を含む。) 6,000円
廊下幅等の拡張 介助用の車いすで容易に移動するために通路または出入り口のうち、いずれか1カ所以上の幅を拡張する工事 30,000円
  • ※各施工内容は、原則、バリアフリー改修促進税制の取り扱いに準じる。

B.エコ住宅設備の設置

前記の③で示した工事について、2種類以下の場合に適用になります。工事内容や補助額については③の要件と全く同じです。

C.木造住宅の劣化対策工事

木造住宅の劣化対策工事について、補助が受けられます。住宅瑕疵担保責任保険法人が取り扱うリフォーム瑕疵保険に加入するものが対象。施工箇所数にかかわらず、改修を行った対象工事の種類に応じた額が補助されます。

■木造住宅の劣化対策工事における補助額

対象工事の種類 補助額
小屋裏換気口設置 8,000円
小屋裏点検口設置 3,000円
浴室のユニットバス設置 30,000円
脱衣室の耐水性仕上げ 8,000円
外壁の軸組等および土台の防腐防蟻設置 20,000円
土間コンクリート打設 120,000円
床下点検口設置 3,000円

D.耐震改修

耐震性を有さない住宅を現行の耐震基準に適合させるための工事が対象になります。この期に併せて実施するのも賢い手です。
補助額は戸当たり15万円になります。

E.リフォーム瑕疵保険

以上、①~③と④のA~Dの工事に対して、住宅瑕疵担保責任保険法人が取り扱う「リフォーム瑕疵保険」に加入した場合、1件あたり1万1000円の補助が受けられます(マンションの共用部分については、大規模修繕工事瑕疵保険が対象)。エコリフォームで工事部分に欠陥が見つかった場合、修補費用等の保険金がリフォーム工事業者に支払われ、無償で直してもらえるため、万一の際の安心にもつながります。

登録事業者にリフォームを依頼することが申請の条件

以上がエコリフォームによる補助金についての概要になりますが、最後にこの制度活用に際してのいくつかのに注意点を挙げておきます。

まず対象期間ですが、2017年6月30日までに申請し、2017年12月31日までに工事を実施、完了報告する必要があります。ただし、前述の通り補助額が上限に達した場合は期限前に締め切るため、早めの申込みを心がけましょう。

また、どのリフォーム会社に依頼しても補助が受けられるわけではありません。本制度の利用に当たっては、リフォーム会社の事前の事業者登録が不可欠なためです。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

  • ※記事中の表は「住宅ストック循環支援事業補助金」WEBサイトをもとに作成しております。
    2017年1月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編内容が変更となる場合がございます。