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何歳まで生きますか?その時の暮らし方をイメージしていますか

人生100年時代!どこでどう暮らす?(第1回)

この記事の概要

  •  長寿化が著しいこともあり、「人生100年時代」というフレーズが大げさなものではなくなりつつあります。その一方で、世帯構造が変化し、家族の有り方が従来とは違っていることにより、老後の暮らし方を改めて考える必要が出てきています。高齢になった時、どこでどのように暮らせばいいのか。それを考えるポイントを具体的に解説します。

老後の生活のイメージ画像

内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、2016年10月1日時点の日本の高齢化率(65歳以上の人口比率)は27.3%となっています。つまり4人に1人は高齢者ということです。1994年に14%を超えた後、約20年で約2倍になりました。

こうした状況の主な要因は日本人が長寿化していることがあります。厚生労働省の資料によると2016年の日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳です。1965年の平均寿命は男性が67.74歳、女性は72.92歳でした。約50年で男性が約13年、女性が約14年伸びたのです。

平均年齢の年次推移

(厚生労働省「平成28年簡易生命表」より作成)

これによって2016年時点の推計では、男性の25.6%、女性の49.9%が90歳まで生きる見通しとなっています。1965年時点ではそれぞれ2.3%、6.5%に過ぎませんでした。つまりこの時点では、90歳以上の高齢者はかなり珍しい存在だったということです。それに対して現在は、男性は4人に1人、女性は2人に1人が90歳まで生きると見られているのです。ちなみ女性の25.2%が95歳まで生きると推計されています。「人生100年時代が来る」というフレーズを聞くことがあるかもしれませんが、大げさでないことはお分かりいただけると思います。

90歳まで生きる比率の推移

(厚生労働省「平成28年簡易生命表」より作成)

平均寿命と健康寿命の乖離に深刻な問題が

人生100年時代に、生涯、安心して暮らすためにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。まず意識すべきは、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の違いです。2013年の健康寿命の平均値は男性が71.19歳、女性が74.21歳でした。この時点の平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳でした。

つまり、男性は約9年間、女性は約12年間、日常生活に制限のある暮らしを送る可能性があるということです。この間は、生活上、なんらかの手助けが必要なります。それを誰にどこでやってもらうのか、それを考えておく必要があるのです。

男性の平均寿命と健康寿命の推移

女性の平均寿命と健康寿命の推移

(内閣府「平成29年高齢社会白書」より作成)

現在、手助けとして介護保険制度の活用があります。2014年度末時点で要介護又は要支援の認定を受けた「要介護者等」は591万8000人に上っています。介護保険の対象は65歳以降ですが、要介護者等は70歳代台後半から増え始める傾向があります。65~74歳の認定比率は4.4%に過ぎませんが、75歳以上は32.5%になっています。

65歳以上の要介護者等の認定者数推移

(厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」より作成)

こうした要介護者等に対する介護を主にやっているのは誰なのでしょうか。厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成25年)」によると、同居する配偶者が一番多く26.2%、続いて同居する子どもが21.8%、その配偶者が11.2%となっています。家族ではない事業者の比率は14.8%でした。つまり、同居している家族が介護を担っているケースが過半を超えるのです。

こうした状況は、高齢者の意識とマッチしているのでしょうか。内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査(平成24年)」によると、介護を受けたい場所のトップは自宅で、男性の42.2%、女性の30.2%を占めています。しかし、「介護老人福祉施設に入所したい」「介護老人保健施設を利用したい」「病院などの医療機関に入院したい」「民間有料老人ホーム等を利用したい」という回答を合計すると、男性は48.6%、女性は56.4%になっています。つまり、介護は自宅以外で事業者から受けることを望んでいる比率の方が多いのです。

世帯構造の変化を見ても、将来、同居者に介護を頼れない状況になるのは明らかです。「国民生活基礎調査」で高齢者のいる世帯の世帯構造を見ると、高齢者の単独世帯比率は年々増加し、2015年には26.3%にまで上昇しています。高齢者夫婦のみの比率も上昇し、2015年時点では、一番多い31.5%を占めています。同居者がいないので頼れないケースや“老々介護”で苦労するケースが、今後さらに上昇する可能性が高いでしょう。

どこで介護してもらうのか?

以上のような背景を認識したうえで、今後、老後に向かって考える大切なポイントは、どこで誰に介護してもらうのかを考えることです。中でもどこで受けるのかを考えることが手掛かりになります。「誰に」という部分は「どこで」が決まればかなり決まってくるからです。

介護を受ける場所として、在宅(自宅)と施設があります。在宅介護のメリットは、住み慣れた家で暮らせる、費用が施設よりも安く済む可能性があるということなどです。デメリットは、家族(同居者)の負担が大きくなる、24時間365日の対応に不安があるといったことが挙げられます。施設介護のメリットは、24時間365日対応、プロによるサービスで安心、家族(同居者)の負担が軽くなることなど。デメリットは費用がかなりかかるケースがあること、要介護度が高くなると施設を移らなければならないケースがあることなどです。

このように紹介すると、在宅と施設の二者択一と感じるかもしれません。実際にはその中間タイプのような選択もありえます。例えば、次回以降でくわしく紹介する「サービス付高齢者向け住宅(サ高住)」。2011年にスタートした新しい制度で生まれた新しい高齢者住宅です。バリアフリーの賃貸住宅に、安否確認や生活相談などの高齢者用サービスを組み合わせています。

これは高齢者自身が契約を結ぶ賃貸住宅ですから、そこで介護を受ければ在宅ということになります。ただ、さらに別途費用はかかりますが食事や介護サービスを提供するサ高住が最近は増えています。それを活用すれば有料老人ホームなどのようなプロのサービスと24時間365日の安心を手にすることができるという意味では、施設介護に近いでしょう。

今は元気で介護を受ける必要はなくても、1人暮らしが心細かったり、夫婦で大きな住宅を持て余したりするといった理由で、介護を受ける前に早めに住み替えを決断したほうがいい場合もあるかもしれません。次回は、そんな住み替えの対象となる高齢者に向けた住まいの種類と特徴をくわしく説明します。

監修

馬養 雅子 (まがい・まさこ)

ファイナンシャルプランナーとして、金融商品や資産運用などに関する書籍や新聞・雑誌記事の執筆、金融関連企画へのアドバイス、講演などを行う。高齢者へのアドバイスのため、多数の高齢者向け施設に足を運び現状を確認。老後の暮らし方についても情報を発信している。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。