住宅ローン、いくら借りる? どこで借りる?

住宅ローンの基礎知識 Vol.1

不動産を購入しようとする場合、すべて手持ちのお金や両親からの贈与などで賄えるケースは多くはありません。足りない金額は金融機関などから借りる必要があります。そのために用意されているのが住宅ローンです。購入したいと考える物件の価格が仮に諸費用を含めて4000万だとします。手持ちのお金と親からの贈与の合計額(自己資金)が500万円だとすると、不足分の3500万円を住宅ローンで賄わなくてはなりません。

つまり、住宅ローンで借り入れる必要のある金額は、基本的には物件価格と自己資金として用意できる金額の差額です。しかし、それを借りられるかどうかは金融機関の審査が必要です。

金融機関は貸出額について物件価格の80%程度を目安にしているケースが多いようですが、場合によってはそれ以上でも貸すこともあります。金融機関が融資金額を決める大きな目安は、返済できる金額なのかどうかという観点です。

年収500万円なら最大約4500万円借りることができる

返済可能かどうかを計る視点の1つが返済負担率という考え方です。これは、年収のうちどの程度の割合をローンの返済に充てるのか、その負担割合を示したものです。それでは、年収500万円の人を例に試算してみましょう。返済負担率は35%を想定します。

1) ローン返済に充てられる金額:500万円×35%=175万円

  • ※自動車のローンなどの借り入れがある場合は計算結果からその返済額を差し引きます。次にこの金額を基に毎月の返済可能額を計算します。
  • ※住宅ローン以外の借り入れはなく、ボーナス時返済も予定しないケース

2) 毎月の返済可能額:年間返済可能額175万円÷12カ月=約14万5800円

ここから、返済期間と適用金利を設定し、借入可能額を逆算します。
仮に返済期間30年で適用金利1%の住宅ローンを利用するとします。返済方式は元利均等返済、固定金利を想定します。その場合、借入額100万円当たりの毎月返済額は3216円です。これを基に借入可能額を計算します。

3) 借入可能額:100万円×(毎月返済額14万5800円÷3216円)=約4530万円

つまり、現状の金利水準では、返済可能性から算出すると年収500 万円の場合、約4500 万円を住宅ローンで借りることができる可能性があるということです。返済期間と適用金利などで、借入可能額は増減しますから、実際の条件を入れてそれぞれ計算する必要があります。返済期間が短いほど、適用金利が高いほど、借入額100 万円当たりの毎月返済額は多くなりますから、借入可能額は減っていくことになります。

ライフプランを考えないと痛い目に

注意したいのは、この試算では返済期間30年にわたって同じ金額を返済し続けるという前提に立っていることです。家計の支出状況はライフステージの変化に応じて変わっていくという点を、見込んでいません。
向こう30年の生活を想像してみてください。出産・育児や親の介護が考えられます。仕事では転職や起業の可能性もあるでしょう。収入や支出が30年にわたって一定であることはまず考えられません。返済期間の中で家計の収支がどう変化するか、ある程度見通しを立てておき、住宅ローンを考えるべきです。つまり、ライフプランを見通した資金計画の立案です。

収入面はご自身や配偶者のキャリアプランと深く関係します。お子さんがいらっしゃるご家庭では、どのような教育機関でどの程度の教育機会を与えるのかによって、支出面は大きく変わっていきます。その見通しを立てて、収入や支出の変化を見込んでおくのです。
前述の試算結果は「借入可能額」にすぎません。借り入れ可能な上限額と受け止めるのがよいでしょう。実際に借り入れる額はライフプランを踏まえて、確実に返済できるかという視点で慎重に検討するのが鉄則です。

条件を検討して借入先を慎重に選ぶ

住宅ローンを組むとき、いくら借り入れるのかとともに検討する必要があるのは、どこで借り入れるかという点です。借入先によって、金利をはじめ、借り入れの条件などが異なります。借入先の選択によって、返済負担には差が生じることもあります。

借入先には、大きく2通りの選択肢があります。民間ローンと公的ローンです。これらを組み合わせることも、もちろん可能です。

民間ローンは文字通り、民間の金融機関から借り入れるものです。借入先としては、銀行や信託銀行、ネット銀行、信用金庫・労働金庫、JAバンクなどが挙げられます。金利などの借り入れ条件はさまざま。よく比較する必要があります。このうち信用金庫、労働金庫、JAバンクは、融資対象を会員・組合員や団体会員の構成員に限る場合も見られます。勤務地・居住地一帯を営業エリアにする金融機関が融資対象をどのように定めているか、確認が欠かせません。

公的ローンは財形持家転貸融資と呼ばれるものです。一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄のどれかを1年以上続けて残高が計50万円以上ある人が対象です。財形貯蓄残高の10倍(最高4000万円)まで借り入れ可能です。

住宅ローンを利用するには金融機関側の審査もあるので、まずはそれも含めてその金融機関でローンを組むことが可能か、確認する必要があります。そして、具体的な借り入れ条件を踏まえて、最適な金融機関を選ぶとよいでしょう。

住宅ローンの種類

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種類 融資条件
公的融資 自治体融資 その自治体に居住または勤務していることを条件に、一定の収入以下の人、住民税を滞納していないことなど、自治体によって条件が異なる。
財形融資 一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄などをしている会社員や公務員が対象。財形貯蓄を1年以上継続し、貯蓄残高が50万円以上であることが条件。※「フラット35」と併せて融資を受けることも可能。
民間住宅融資 都市銀行、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、労働金庫、JA(農協) 年齢・勤続年数・収入といった条件をクリアすれば融資が受けられる。なお、信用金庫、信用組合、労働金庫、JA(農協)は、会員または団体会員の構成員であることや営業地域に居住しているか、あるいは勤務していることといった条件がある。
生命保険会社、
損害保険会社、
ノンバンク(信販・クレジット会社など)
住宅メーカーなどが提携してローンを斡旋しているところが多い。誰でも利用できるところと、提携先企業の社員といった条件が限られる場合とに分かれる。
フラット35 都市銀行、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、労働金庫、JA(農協)、生命保険、損害保険、モーゲージバンク 民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している長期固定金利住宅ローン
執筆

松尾 清 (まつお・きよし)

大手出版社で住宅雑誌の編集業務に携わった後、フリーランスで著述業を開始。「住宅・建設・不動産」「まちづくり」「医療・介護」「経営」の各分野で、雑誌・Web記事や書籍などの企画・取材・執筆・編集を手がける。

本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。住宅ローンに関する内容については、商品や金融機関によりお借り入れ条件などが異なるため、詳しくは各金融機関にご確認頂けますようお願い致します。

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