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2019年度税制改正大綱、「個人版」事業承継税制創設へ

税制改正大綱に関するトピックス

公開日:2019年3月29日

この記事の概要

  •  2018年12月21日に、2019年度の税制改正の大綱が閣議決定されました。消費税の税率アップによる景気対策である住まいの取得、売却などに関する重要ポイントについては先に「2019年度税制改正大綱、住宅ローン減税延長へ」で紹介しました。今回は、それと並ぶ重要ポイントである中小企業の事業承継対策について紹介します。その目玉は、「個人版事業承継税制」です。(本記事は2019年3月9日時点の情報であり、今後変更となる場合があります。)

2019年度税制改正大綱、「個人版」事業承継税制創設のイメージ図

2018年12月21日に、閣議決定された2019年度の税制改正。その中で注目されるのは、10月に控えた消費税の税率アップによる景気への悪影響を防ぐ景気対策です
(「2019年度税制改正大綱、住宅ローン減税延長へ」参照)。そして、もう一つの注目ポイントが中小企業の事業承継を円滑にする対策です。今回はそれについて解説します。

死亡した被相続人から受け継ぐのは、個人として所有していた現金などの金融資産や土地など不動産ばかりではありません。被相続人が、法人や個人で事業を営んでいた場合、当該法人の株式や、設備・備品などの事業用資産を相続し、事業そのものを承継するケースもあります。こうした事業用資産にも相続税が課税され、大きな負担になることがありました。

事業を承継する際の優遇措置として、土地については「特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例」や「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」などが用意されています。しかし建物や減価償却資産といったほかの資産についてはこうした優遇措置はありませんでした。

現在、政府は中小企業の廃業増加による経済損失を非常に重く見ています。2018年の中小企業白書によると、1995年時点では中小企業の経営者の年齢構成は47歳がピークでしたが、2015年には66歳がピークになっています。つまり、今後多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるとみられるのです。その際、事業承継が円滑に行われず、廃業してしまえば、これまで事業運営で培ってきた貴重な経営資源や、地域の雇用が失われてしまいます。

そうした事態を防ぐため、政府は、2018年の税制改正において、法人の事業承継税制を拡充する特例措置を創設しました。これにより事業承継税制の申請件数は、拡充前の年間400件程度から、年間4000件に迫る件数となりました。このように効果が上がったことから、政府は2019年税制改正の大綱に、個人事業者を対象にした「個人版事業承継税制」の創設を盛り込んだのです。

土地以外の資産についても納税を猶予

それでは大綱に盛り込まれた「個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設」の概要を解説しましょう。税制改正大綱には、以下のように記されています。

認定相続人が、2019年1月1日から2028年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税を猶予する。

まず、前提として、事業承継税制の概要を一言で説明すると、事業承継促進のため「継続して事業を営む場合は、事業用資産の承継に際して生じる相続税等を100%猶予する」というものです。これは、相続人の代においては相続税が全面に免除されるということ。その対象が2018年度税制改正では法人だけでしたが、2019年度税制改正では個人事業者にも拡大されることになったのです。

それでは、どのような資産が事業用資産と認められるのでしょうか。前述のように、事業用の土地だけは、従来も特例措置が用意されていました。今回の特例の場合、土地はもちろん、建物やそれに付随する設備や機器、作業車など、様々な減価償却資産などにまで納税猶予の対象が広げられます。動植物のような生物や、特許権のような無形償却資産も対象になります。ただし、ただし土地は400㎡まで、建物は800㎡までに制限されています。

これによる恩恵を受けやすい業種として、高額な医療機器などを備える医業や、トラクターや作業場などが不可欠な農業、トラックや車庫・倉庫を持つ運送業などの相続が考えられるでしょう。ただし、不動産貸付業、つまり“賃貸不動産の大家さん”は今回、対象事業から外されていることに注意してください。また、土地については、既存の「特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例」と併用することはできず、どちらかを選択することになります。

適用を受けるには承継計画を策定して申請する必要が

相続税を実質払わなくて済むようにするわけですから、適用にはそれなりの手続きが必要です。承継計画を作成し、経営承継円滑化法に基づく認定を受けなくてはなりません。そして継続届出書を相続税の申告期限から3年ごとに税務署長に提出することも義務付けられます。承継計画の策定に当たっては、中小企業庁が認定する「認定経営革新等支援機関」が相談に乗ってくれます。財務分析等によって経営課題を抽出し、新たな事業計画等に基づいて承継計画を作成する支援や助言が得られます。

事業の承継者は「認定相続人」になります。被相続人・認定相続人とも青色申告者であることが条件です。ただし認定相続人は相続開始後から新規に青色申告者になる形でも構いません。認定相続人は原則として死亡するまで事業を継続することが必要です。廃業したり、事業を譲渡したりするような場合は、その時点で猶予が打ち切られるのが原則です。ただ、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合に、特定事業用資産の一括譲渡または事業を廃止するときには、猶予税額の一部が免除されます。

スムーズな事業承継を実現させるには、個人として不動産や金融資産の相続よりもさらに入念な準備が必要です。そのこともあり、事業承継税制は、経営者の死亡時に起きる「相続」だけでなく、生前の「贈与」のタイミングでも適用が可能になっています。つまり、前経営者=被相続人の死亡を待たずとも、元気なうちから承継準備を進めることが可能なわけです。もちろん、相続税が猶予されるという最終的な効果は同じになります。

相続税対策は個別性が強く、それぞれ最適な方法は異なります。被相続人(ご両親)が現在、個人事業を営んでいらっしゃるケースも少なくないと思われます。その場合には、事業承継と個人資産の相続を合わせて考える必要が出てきます。そんな際には、今回の制度拡充も含めて、最適な方法を検討しましょう。

税制改正大綱は、国会の審議などにより、3月の成立まで多少の見直しが考えられます。大筋は変わることはないと思われますが、関係する方は注意を払いましょう。

監修

東京シティ税理士事務所

不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする税理士事務所。35年の歴史を持ち、20人以上の税理士が所属。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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