- 東京都心部や東京以外の主要都市における不動産の取引利回りは、不動産投資市場が過熱していたファンドバブル期(2006年から2008年頃)と同水準もしくは下回る水準まで低下。
- 低金利が続く中、イールドギャップ(安全性が高いといわれる10年国債の流通利回りと不動産の取引利回りの差)はファンドバブル期を大幅に上回っており、不動産は相対的に安定した利回りが得られる投資資産として、投資需要は高い。
- 日銀は金融緩和策を維持しており、不動産投資の利回りの優位性はしばらく続くと考えられる。
1)東京都心5区における不動産の取引利回りの動向
J–REITが東京都心5区※1で取得した不動産の取引利回り※2は継続的に低下し、[図表1]で示したオフィスビル、賃貸マンション、商業施設、ホテルはいずれも世界金融危機前で不動産投資市場が過熱していたファンドバブル期(2006年から2008年頃※3)と同水準もしくは下回る水準である※4。
他方、安全性が高いといわれる10年国債の流通利回りと不動産の取引利回りの差はイールドギャップ([図表1]の矢印の長さのイメージ※5)と呼ばれ、イールドギャップが大きければ不動産投資の利回りの優位性が高いと考えられる。低金利が長引く中、イールドギャップはファンドバブル期よりも大きく、不動産は相対的に安定した利回りが得られる投資資産として選好されている面があろう。
日銀は2018年7月の金融政策決定会合で一定程度の長期金利上昇を容認する政策を決定したが、金融緩和策を維持しており、不動産投資の利回りの優位性はしばらく続くと考えられる。
[図表1]J–REITが都心5区で取得した不動産の取引利回りと10年国債の流通利回りの推移
(上段左図:オフィスビル、上段右図:賃貸マンション、下段:商業施設およびホテル)
データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」、10年国債の流通利回りは財務省
2)東京以外の主要都市における不動産の期待利回りの動向
東京以外の主要都市はJ–REITによる取得事例が少ないため、一般財団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」の期待利回り※6を用いて、利回りの動向を考察する。
主要都市のオフィスビルと賃貸マンション(ワンルーム)の期待利回りは2016年頃から前期比で横ばいとなる時期がみられる都市が現れたが、総じてみると低下基調が続いている[図表2]。直近(2018年10月)の期待利回りをファンドバブル期(期待利回りが最も低かった2007年10月)と比較すると、オフィスビルでは10都市(東京除く。賃貸マンションも同じ)中、4都市がファンドバブル期を0.1~0.3%ポイント下回り、5都市が同値である。賃貸マンションに関しては10都市すべてがファンドバブル期を下回り、広島が0.2%ポイントの低下にとどまるほかは0.5%ポイント前後下回り、オフィスビルと比較して低下基調が強い[図表3]。
他方、直近(2018年10月)のイールドギャップ(前頁本文参照)をファンドバブル期と比較すると、オフィスビルは1.2~1.6%ポイント、賃貸マンションは0.9~1.3%ポイント上回っており、地域によらず、不動産投資の利回りには優位性がある[図表4]。
[図表2]主要都市のオフィスビル、賃貸マンション(ワンルーム)の期待利回りの推移
[図表3]主要都市のオフィスビル、賃貸マンション(ワンルーム)の直近とファンドバブル期の期待利回りおよびその差(2018年10月の期待利回り-2007年10月の期待利回り)
[図表4]主要都市のオフィスビル、賃貸マンション(ワンルーム)の直近とファンドバブル期のイールドギャップの差(2018年10月のイールドギャップ-2007年10月のイールドギャップ。イールドスプレッド=期待利回り-10年国債流通利回り)
図表2~4の期待利回りは一般財団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」、図表4の10年国債流通利回りは財務省
発 行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部
〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル
レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部
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