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東京圏と大阪圏における新築分譲マンションの市場動向(2018年度上期)

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 12月号

この記事の概要

  • 東京圏※1の新築分譲マンションは初月契約率の70%割れ等が続く一方、分譲単価の高い地域で供給が伸びず、価格の上昇に歯止めがかかった。
  • 大阪圏※1では、価格の上昇が継続。ホテルとの用地の取得競争等を背景に供給戸数が下落した。

1)東京圏における新築分譲マンションの市場動向

2018年度上期の東京圏における新築分譲マンションの初月契約率は65.2%(前年同期比▲3.4%ポイント)、発売戸数(以下、供給戸数という。)は1万5,323戸(前年同期比▲5.0%)、2018年9月末の在庫戸数は6,050戸(前年同月比▲0.5%)と分譲価格の高騰等を背景とした契約率の70%割れや低調な供給、在庫の高止まり等の傾向が続いた。一方、2018年度上期の1戸あたりの平均価格は5,762万円(前年同期比▲3.8%)、1㎡あたりの単価は85.9万円(前年同期比▲1.8%)と下落に転じた。

[図表1]は、2014年度以降の東京圏における新築分譲マンションの初月契約率や平均価格などを図示したものである※2。在庫戸数の高止まりや初月契約率の低下が続く一方、平均価格および1㎡あたりの単価は2017年度下期に高止まり、2018年度上期に入り下落の傾向がみられた。

[図表2]は、地域別の1㎡あたりの単価と供給戸数の対前年同期比増減率である。2018年度上期の単価のうち、2017年度上期から下落したのは千葉県のみである。東京圏全体の単価が下落したのは、単価の高い東京都や神奈川県で開発用地の確保が困難なこと等を背景に供給戸数が減少し、単価の低い千葉県で供給戸数が増加したこと、千葉県の単価の下落率(▲4.0%)が都区部(+2.7%)や都下(+1.8%)、神奈川県(+2.2%)の上昇率と比べ大きかったこと等が影響したとみられる。ただし、新築分譲マンションの供給戸数の先行指標である分譲マンション着工戸数※3をみると[図表3]、東京都や神奈川県は2018年度上期に増加に転じており、東京圏の平均単価が急激な下落に転じる可能性は低いと考えられる。

[図表1]東京圏における新築分譲マンションの初月契約率・在庫戸数(左図)と平均価格・平均単価・供給戸数(右図)

東京圏における新築分譲マンションの初月契約率・在庫戸数(左図)と平均価格・平均単価・供給戸数(右図)

(注)左図・右図ともに各月の数値は12カ月後方移動平均値

データ出所:不動産経済研究所「首都圏のマンション市場動向」

[図表2]地域別の平均単価と供給戸数増減率(東京圏)

[図表2]地域別の平均単価と供給戸数増減率(東京圏)

データ出所:不動産経済研究所「首都圏のマンション市場動向」

[図表3]地域別の分譲マンション着工戸数(東京圏)

[図表3]地域別の分譲マンション着工戸数(東京圏)

データ出所:国土交通省「建築着工統計」

2)大阪圏における新築分譲マンションの市場動向

2018年度上期の大阪圏における新築分譲マンションの1戸あたりの平均価格は3,930万円(前年同期比+0.5%)、1㎡あたりの単価は65.3万円(前年同期比+2.4%)と東京圏と異なり上昇した。一方、2018年度上期の初月契約率は73.7%(前年同期比▲3.5%ポイント)、供給戸数は9,184戸(前年同期比▲7.1%)、2018年9月末の在庫戸数は2,376戸(前年同月比▲2.1%)と低下した。

[図表4]は、2014年度以降の大阪圏における新築分譲マンションの初月契約率や平均価格などを図示したものである※2。上記で前年同期比が低下であった初月契約率と在庫戸数には、2018年度上期に入り下げ止まりの傾向がみられた。一方、供給戸数は同期中で低下に転じている。

[図表5]は、大阪圏における新築分譲マンションの供給戸数を地域別に整理したものである。これによると、大阪圏の供給戸数の4~5割を大阪市部が占めている。2018年度上期の前年同期比増減は大阪市が1,421戸減少(▲27.6%)した一方、大阪市部以外の大阪圏の合計は716戸増加(+15.1%)しており、大阪圏全体の供給戸数の減少は大阪市部の影響が大きい。大阪市部の供給戸数が減少した背景としては、訪日外国人の増加により需要が拡大しているホテルと開発用地の取得競争が激しくなったこと※4等が影響したと報じられている。

2018年度上期の初月契約率は、大阪府下、神戸市部を除く多くの地域で好不調の目安とされる70%を上回った[図表6]。

[図表4]大阪圏における新築分譲マンションの初月契約率・在庫戸数(左図)と平均価格・平均単価・供給戸数(右図)

[図表4]大阪圏における新築分譲マンションの初月契約率・在庫戸数(左図)と平均価格・平均単価・供給戸数(右図)

(注)左図・右図ともに各月の数値は12カ月後方移動平均値

データ出所:不動産経済研究所「近畿圏のマンション市場動向」

[図表5]地域別の新規供給戸数と増減率(大阪圏)

[図表5]地域別の新規供給戸数と増減率(大阪圏)

[図表6]地域別の初月契約率(大阪圏)

[図表6]地域別の初月契約率(大阪圏)

図表5と6のデータ出所:不動産経済研究所「近畿圏のマンション市場動向」

※1:東京圏は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県。大阪圏は、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県

※2:傾向を分かりやすくするため、12カ月後方移動平均にしている。

※3:建築着工統計における分譲マンションとは、鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅のうち、利用関係が分譲住宅であるものを指す。

※4:大阪市部の供給戸数は間取りがワンルーム(1K含む)の比率が31%(2018年9月度)を占める。ワンルームマンションはビジネスエリアへの交通利便性が良い立地が選好される傾向にあり、ホテルとの用地取得競争にさらされる可能性が高い。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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