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都道府県地価調査(基準地価)にみる地価動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 10月号

この記事の概要

  • 「平成30年都道府県地価調査(基準地価2018年7月1日時点)」によると、全国の地価の対前年変動率は、全用途平均が27年ぶりに上昇に転じた(▲0.3%⇒+0.1%)。住宅地は、大都市を中心に上昇が継続したことや、地方都市で下落幅の縮小が進んだことから、下落幅は縮小傾向(▲0.6%⇒▲0.3%)。商業地は2年連続で上昇(+0.5%⇒+1.1%)し、工業地は27年ぶりに上昇に転じた(0.0%⇒+0.5%)。
  • 住宅地は、大都市では人口の流入増加と低金利、住宅取得支援政策等の効果等で住宅需要が堅調なことが地価の上昇につながっていると考えられる。商業地は、三大都市圏と地方四市を中心に上昇幅が拡大した。再開発事業やオフィス空室率の低下で収益性が向上していることに加え、インバウンドの増加で店舗やホテルの需要が強いことが背景と考えられる。

1)三大都市圏と地方四市では住宅地・商業地ともに地価上昇傾向が続く

三大都市圏と地方四市の対前年変動率は住宅地、商業地ともに上昇基調が強まっている。住宅地は、大阪圏で2015年から横ばいが続いていたが、4年ぶりに上昇(+0.1%)した。
東京圏では住宅地で東京都区部北東部(+5.5%)、商業地で区部都心部(+8.2%)など依然として上昇率は高い。大阪圏の商業地では、大阪圏平均では+5.4%の上昇であるが、大阪市中心6区(+13.0%)、京都市中心5区(+13.3%)など圏域の中心エリアでは非常に高い上昇率となっている。地方四市も地価上昇が継続し、前年よりも上昇幅が拡大している。これら三大都市圏と地方四市の地価上昇が全国平均を押し上げているとみられ、全国平均でも全用途平均、住宅地・商業地ともに上昇幅が拡大した[図表1、2]。

2)地方四市では商業地の上昇率が顕著。大都市と地方その他都市との差は拡大が続く

2005年の地価水準を100とした指数の推移をみると、三大都市圏および地方四市における地価上昇が著しくなっている。特に地方四市の商業地ではファンドバブル期を大幅に上回る水準となっている。その一方で、地方圏その他都市では、住宅地、商業地ともに下落が続いており、大都市との差は拡大している[図表3]。

3)東京都住宅地では区部北東部で地価が上昇

東京圏の住宅地の上昇変動率上位地点では、荒川区西日暮里が10.1%で最も高く、荒川区や足立区、北区など東京都区部北東部の上昇が目立つ結果となった。東京23区の中心部での地価の高騰、高止まりから、相対的に割安で交通利便性が良好な区部北東部で需要が高まったと考えられる[図表4]。

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

※圏域の定義等については以下のとおり。

・「三大都市圏」とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏をいう。

・「東京圏」とは、首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町の区域をいう。

・「区部都心部」とは千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区をいう。

・「区部南西部」とは品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区をいう。

・「区部北東部」とは墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区をいう。

・「大阪圏」とは、近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。

・「大阪市中心6区」とは北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区をいう。

・「京都市中心5区」とは北区、上京区、左京区、中京区、下京区をいう。

・「名古屋圏」とは、中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。

・「地方圏」とは、三大都市圏を除く地域をいう。

・「地方圏(地方四市)」とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。

・「地方圏(その他)」とは、地方圏の地方四市を除いた市町村の区域をいう。

[図表2]圏域別の対前年地価変動率の推移

[図表2]圏域別の対前年地価変動率の推移

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

[図表3]圏域別基準地価格の変動指数の推移(2005年=100)

[図表3]圏域別基準地価格の変動指数の推移(2005年=100)

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

[図表4]基準地変動率の上昇率上位10位(東京圏・住宅地)

[図表4]基準地変動率の上昇率上位10位(東京圏・住宅地))

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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