テーマ:マーケット

2017年の一棟賃貸マンションの売買取引の動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 2月号

この記事の概要

  • 2017年の一棟賃貸マンションの売買取引件数は4年連続で減少したが、売買取引額は6,160億円で高水準。
  • 都心6区では取引件数が大幅に減少する一方で、都心6区以外の地域で増加がみられた。
  • 価格規模の小さい物件の取引件数が堅調に推移していることなどから、10億円未満の取引件数の割合は拡大している。

1)2017年の一棟賃貸マンションの取引総件数は前年比で減少

株式会社都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査※1」によると、2017年の一棟賃貸マンション※2の取引件数※3は191件で2014年以降4年連続で減少(前年比マイナス3%)したが、複数物件を一括した超大型取引があったことなどが寄与し取引額は6,160億円(うち、複数物件一括での取引額は3,840億円)で、これまでの減少基調から一転して大幅に増加(前年比プラス104%)した[図表1]。

2)J–REITの取得件数が大幅に減少

資金調達環境は良好なものの、利回りの低下や投資対象物件が品薄であるといわれている状況などを背景に、これまで最大の買主であったJ–REITの取得件数が前年比で大幅に減少した[図表2]。一方、SPC・私募REIT(J–REIT以外の国内投資セクター)や建設・不動産(2017年の内訳をみると、多くが不動産事業者)、外資系法人の取得件数は増加し、買主セクターの構成比が2016年と比較して大きく変化した[図表3]。

3)都心6区の取引件数が引き続き大きく減少する一方、周辺では取引件数が増加

都心6区※4の取引件数が2016年に引き続き大きく減少した[図表4]。一方で、都心6区以外の23区や23区以外の東京圏などで取引件数は前年比で増加、大阪圏はやや減少するも2016年に引き続き高水準で推移し、都心6区以外の地域の取引件数割合が更に拡大した。価格水準の高さや投資対象物件が品薄といわれる状況から都心6区に立地する物件の取引件数が減少し、投資対象が都心の周縁部へと拡大していると考えられる。

4)10億円未満の取引件数割合は拡大傾向

価格規模別にみると、最大の取得者であるJ–REITの取得が大きく減少したことなどから、最も取引件数の多い価格帯である10億円以上50億円未満が引き続き大幅減となる中、5億円未満の取引が前年比プラスで堅調に推移している[図表5]。比較的価格規模の小さい10億円未満の取引件数の割合は2015年以降拡大傾向で推移しており、2017年はおおよそ5割を占めた。

特に、2016年と比較して、建設・不動産においてその他地域に立地する5億円未満の取得件数が増加、また、SPC・私募REITにおいて23区以外の東京圏に立地する5億円以上10億円未満の取得件数が増加した。

なお、外資系法人において複数物件の一括取引など価格規模の大きい取得が相次いだことから、100億円以上の取引件数も増加した。

[図表1]賃貸住宅の売買取引件数と取引額の推移

[図表1]賃貸住宅の売買取引件数と取引額の推移

※1:不動産売買実態調査は、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基づき東京証券取引所に 開示される固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などに公表された情報から、上場企業等が譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売却理由などについてデータ(概数の事例も含む)を集計・分析したもの。情報開示後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っており、過日または後日の公表値と相違する場合がある。また、本稿の集計では、海外所在の物件は除いている。

※2:主として一棟の賃貸マンションで、寮、社宅を含む。

※3:複数物件を一括した取引で各物件の詳細が不明である取引は、1取引を1件として集計している。買主セクター別、地域別、価格規模別の集計についても同じ。

※4:都心6区は東京圏のうち、東京都千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、品川区をいう。

 

[図表2]買主セクター別の取引件数の推移

[図表2]買主セクター別の取引件数の推移

注:買主セクター不明の取引は除く

[図表3]買主セクターの構成比(2016年と2017年)

[図表3]買主セクターの構成比(2016年と2017年)

注:買主セクター不明の取引は除く

[図表4]地域別の取引件数の推移(左)と取引件数割合の推移(右)

[図表4]地域別の取引件数の推移(左)と取引件数割合の推移(右)

注:全取引の内、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)、名古屋圏(愛知県、三重県、岐阜県)、それ以外 をその他地域(複数物件の一括取引と所在地不明を含む)とした。都心6区は東京圏のうち、東京都千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、品川区をいう。

[図表5]価格規模別の取引件数の推移(左)と取引件数割合の推移(右)

[図表5]価格規模別の取引件数の推移(左)と取引件数割合の推移(右)

図表1~5のデータ出所: 都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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