開口部の強化、防犯機器導入で安心な生活を手に入れる

中古+αで住まいの満足度アップ(第4回)

この記事の概要

  •  安心な暮らしを実現する第一歩は防犯性のアップです。安全と言われる日本ですが、住居への侵入犯罪は少なくありません。被害にあってから悔やんでも遅いのです。侵入犯罪を防ぐには、開口部に手を加えたり、最新ドアホンや防犯照明を導入したりするなど様々な手段があります。今回は、防犯性能アップのポイントを紹介します。

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住まいは安全・安心な暮らしの拠点でなくてはなりません。その大切な住まいに空き巣などに忍び込まれて、被害にあうことは絶対に避けなくてはなりません。オフィスや店舗など、建物に侵入して行われる犯罪を「侵入犯罪」といいます。その半数以上は住宅を狙ったものです。日本は世界でも有数な安全な国といわれており、近年、侵入犯罪の件数も減少傾向にありますが、それでも2016年は年間約4万4000件も起きています。1日当たり100件以上被害が発生している計算になりますからけっして油断はできません(図1)。

(図1)侵入窃盗認知件数の推移

侵入窃盗認知件数の推移

出典:警察庁「平成28年の犯罪情勢」

総務省の住宅・土地統計調査(平成25年)によれば、住宅数約5,210万戸のうち、戸建て住宅は2,860万戸、4階建て以上共同住宅は1,300万戸、その他は1,050万戸です。それを元に計算すると、10万戸当たりの件数では4階建て以上共同住宅が27件に対して、3階建て以下共同住宅が87件、戸建て住宅は110件となります。データからみると戸建て住宅がもっとも被害に受けやすいので対策が欠かせないことがお分かりいただけるでしょう。

こうした犯罪発生に対し、実際に警察が犯人を捕まえた検挙率は56.7%(住宅発生分)にすぎません。被害を受けてからではもう遅いのです。未然に防ぐ自衛策が必要です。自衛策としては、窓やドアなど開口部の強化、防犯設備の設置、セキュリティシステムの導入などがあります。

頑丈な窓やドアで自宅内に侵入させない

戸建て、共同住宅を問わず窃盗犯の侵入口となるのが、開口部である窓とドアです(図2)。戸建て住宅や、3階建て以下の低層共同住宅の半数が窓からの侵入によって窃盗が行われています。うっかり窓を開けたままにしたり、窓やドアの鍵をかけずに外出するなど、無施錠の状態にしてしまうのも問題ですが、鍵をかけていても、窓のガラスを破ったり、ドアの鍵を不法に開けて侵入するケースが窃盗犯の常套手段となっています。

(図2)侵入窃盗の侵入口(平成28年)

戸建て住宅の侵入窃盗の侵入口

共同住宅3階建て以下の侵入窃盗の侵入口

共同住宅4階建て以上の侵入窃盗の侵入口

出典:警察庁「平成28年の犯罪情勢」

住宅への侵入手段

1位 2位 3位
戸建て住宅 無締り ガラス破り その他
共同住宅
(3階建て以下)
無締り ガラス破り 不明
共同住宅
(4階建て以上)
無締り ガラス破り 合かぎ

出典:警察庁「平成28年の犯罪情勢」

こうした侵入犯罪を予防するには、「防犯建物部品(CP部品)」と呼ばれる防犯性の高い設備や部品を使用しましょう。建物の設備面での対抗処置を講じることによって侵入犯罪の防止を図るために、警察庁は、国土交通省・経済産業省や建物部品関係の民間団体とともに「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」を設置しています。官民合同会議では建物部品の防犯性能試験を実施し、その結果に基づき一定の防犯性能があると評価された建物部品を「防犯建物部品(CP部品)」として公表しています。防犯建物部品は、2017年3月末時点で3,332品目となっています。

窓まわりは、2枚の板ガラスの間に強靭な特殊フィルムを密着させた「防犯ガラス」の採用が有効です。単板ガラスよりはるかに割れにくく、防犯建物部品として認定されています。万一ガラスが割れても破片が飛散しにくく、震災など自然災害時の安全性確保の面でも非常に有効です。

窓のサッシ部分は、持ち上げて外すことができない外れ止め付きだったり、回転防止機能のついた強固なつくりのロック付きクレセント錠を採用したりした製品を使うことで、侵入リスクを下げることができます。さらに補助錠を取り付けて、2カ所をロックすることで、容易に開くことができないようにすることも効果的です。ほかに、シャッターや雨戸、面格子を取り付けることでも窓の防犯性を高めることが可能です。

ドアからの侵入の手口としては、特殊な工具などを使って鍵穴から開錠する「ピッキング」に留まらず、ドリルなどでドアに穴を開け、針金や金属の棒を使い内側のつまみを回転させて解錠する「サムターン回し」、バールなどを使って強引に錠前を破壊する「こじ破り」、ドリルやホールソーを使って鍵穴を破壊する「鍵穴壊し」など、荒っぽいやり方もあります。

こうした被害を防ぐためには、ディンプルキーなどを採用した防犯性の高い錠前を使い、さらに補助錠を付けて「1ドア2ロック」にすることがポイントです。こうした設備でドアや鍵のこじ開けに5分以上かかるようなら、約7割は侵入を諦めるといわれています。堅牢な開口部にすることが、侵入窃盗の防止の基本です。

録画機能付きドアホンで空き巣をあきらめさせる

玄関設備として欠かせないインターホン(ドアホン)を最新型にするのも侵入防止に効果的です。侵入者がその住宅に人がいないかを確認する方法の中でもっとも多いのが「インターホンで呼んでみる」です。最近のインターホンはカメラを備え、録画が可能な製品が増えています。呼出ボタンが押されると自動的に録画が始まり、静止画や動画を記録してくれます。これが取り付けてあればインターホンで不在を確認しようとした瞬間に録画されてしまいます。しかも、最新の製品の中には、カメラのレンズが超広角タイプになっている製品にあります。これなら壁に沿って横から近づいても姿をとらえることが可能です。

また、玄関にカメラ付きインターホンを付けるだけでなく、家屋の周りの必要個所に防犯カメラを設置することも検討してみてはいかかでしょうか。最近は、カメラや録画機器の価格がかなり低下しています。防水機能があり屋外への設置に向いたタイプも増えていますし、電池で作動し電源工事が不要なタイプもり、手軽に設置できるようになっています。

夜間暗くなる場所には防犯照明を設置することも有効です。センサーを備えていて、人が近づくと自動点灯するだけでなく、警報を鳴らせる照明器具が発売されています。侵入者の接近を居住者、隣家の住人、通行人などに気づかせる効果がありますから、抑止力として高い効果を発揮します。

防犯性能の強化方法は、こうした窓やドア、住宅機器の改善だけではありません。エントランスにもポイントがあります。玄関前や庭の様子が塀や生け垣などでまったく見えないつくりなっていませんか。不審者が敷地内に入っても人目に付きにくいので、防犯面から見ると好ましくありません。プライバシーへの配慮は必要ですが、完全に外部からの視界を遮断するようなエントランスは、侵入犯に狙われやすいのです。

外構のリフォームを検討する場合、敷地内の様子がほとんど分からないブロック塀や樹木の生い茂った生け垣ではなく、人影や気配の感じられるフェンスを選んでみてはどうでしょうか。道路や隣家から不審者が目につきやすいので、狙われにくくなります。

ホームセキュリティでプロの警備システムを利用する

ここまで、開口部、防犯設備、エントランスの改善で防犯性を高める方法を紹介してきましたが、近年伸びているのが警備会社のホームセキュリティシステムの導入です。日本では、現在、約500社のホームセキュリティサービス事業者が都道府県公安委員会の認定を受けています。

ホームセキュリティサービスの基本的なサービスは、ドアや窓などの開口部や庭などに、センサーやカメラなどの監視装置を設置したうえで、そこが異常を検知した場合などにはプロの警備員が自宅に駆けつけて問題がないか対処してくれるというものです。

ホームセキュリティサービスは、警備会社が監視することになりますから、安心感や、不審者の抑止力が格段に高まります。ただ、設備機器の設置費用以外に、月額のサービス料が必要になります。その費用を安全・安心のための必要経費と考えられるかが導入を判断するポイントです。

最近、ホームセキュリティサービス事業者はサービスメニューを多様化しています。オプション例の1つとして、「高齢者の見守りサービス」があります。居住者が体調を崩した際に医療相談が受けられたり、救急車の手配が受けられたりするサービスです。自分が高齢でこうしたサービスに魅力を感じたり、親が1人暮らしをしていて心配だったりするケースでは、導入の意義は高まるでしょう。

最後に、住まいの防犯性を「近隣や地域で高めていく」という考え方を忘れないようしましょう。近隣の挨拶や声かけに始まり、自治会やボランティア組織によるパトロール実施などが、住まいも含めた地域全体の安全性を高めてくれます。他者への無関心が、泥棒にとって犯罪のしやすさにつながっています。コミュニティが希薄になっている時代だからこそ、身近なところから人とのつながりを大切にし、防犯の輪を広げていきたいものです。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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