【シリーズ連載】30代、40代のうちからしっかり準備を!「後悔しない終活を親子で実現」(第一話「相続発生前の準備編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.11

この記事の概要

  •  相続人の間でもめないために、親が元気なうちに資産の話を聞いておきたい。知人が相続時に大変だったというような事例を持ち出すと、親の気分を損ねることなく、スムーズに話をしてもらいやすくなる。
  •  相続時にはさまざまな書類が必要となる。出生時からの戸籍の確認、通帳や印鑑の保管場所、金庫の情報、所有不動産の売買契約書などについて確認をしておくこと。
  •  相続登記(不動産の名義変更)がなされていない不動産が増え、空き家問題などにつながっている。改善するために、法務省が法定相続証明制度を新設。認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されることになり、手続きがしやすくなった。
  •  生前整理、エンディングノートで葬儀への希望などを記してもらう、遺言書で資産の分割について意思表示してもらうことも忘れないようにしたい。

第1話 相続発生前の準備編

【Cさんファミリー】
夫43歳会社員、妻38歳の共働き夫婦で、日々仕事と10歳と8歳の娘の子育てに奮闘中。5年前に庭付きの一戸建てを35年ローンで購入。

親が嫌な気分にならないように、聞き方にも工夫を

相続発生後に相続人同士で揉めたという話はよく聞いていても、まだ元気な親に“資産はどのくらいあるの?”とは聞きにくいものです。でも、いざという時になって、不動産・預貯金・株などの総資産を1から整理していくのは大変な作業となってしまいます。

よくある失敗談としては、意を決して切り出したものの、ストレートに資産の話をして親の気分を損ねてしまったということ。「そんなにお金が欲しいのか!」「早くいなくなって欲しいのか!」などと言われないためにも、伝え方にも工夫が必要です。比較的聞いてもらいやすいのは、知人が相続時に大変だったというような話題を取り入れて話し、親の資産を聞き出すという方法です。「高校の同級生だったAちゃんのお父様が亡くなった時に、資産のことを誰も知らなくて大変だったらしいのよ。相続人たちが複数いる中、それぞれ仕事をしながら調べたり資料を取り寄せたり・・・分割をどうするんだとか、納税までは悲しんでいる暇もなかったみたい。うちの場合は、自宅はお父さんの資産になるわけだけど、他にはどんなものがあるの?」というように、他の家庭での具体的なエピソードを伝えながら質問をすると、気分を損ねることなくスムーズに話をしてもらいやすくなります。

必要書類についてはしっかり聞いておきましょう

相続手続きには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要です。特に被相続人が戦中戦後の混乱期を過ごしてきた場合では、相続人たちが知らなかった場所に戸籍があったというケースが多くあるようです。全ての戸籍謄本が必要なので、聞いておくことで取り寄せや手続きをスムーズに進めることができます。銀行の口座は複数もっている可能性があるので、それぞれの通帳と印鑑がどこにしまってあるのかを聞いておくようにしましょう。また、金庫の情報、所有している不動産やその売買契約書などの書類の所在も確認しておくことが必要です。

相続手続きの主な必要書類

種類 主な必要書類
不動産 遺言書もしくは遺産分割協議書・被相続人の戸籍(除籍)謄本・相続人の戸籍謄本 所有権移転登記申請書・固定資産税評価証明書など
預貯金 通帳、証書・依頼書・相続人の印鑑証明書など
名義書換請求書・相続人の印鑑証明書など

法定相続情報証明制度を知っていますか?

不動産の所有者が亡くなった場合、相続登記(不動産の名義変更)が必要です。しかし、「相続登記」がなされていない不動産が増加し、空き家問題や所有者不明土地問題が引き起こされているのが現状です。
このような背景を受けて、法務省では登記を促進し、問題点を改善するために,法定相続情報証明制度を新設。2017年5月29日から運用がスタートしました。
流れとしては、まずは相続人が被相続人の戸籍(除籍)謄本などの必要書類を登記所に提出。登記官が内容を確認し、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。この写しは「相続登記」の手続きだけでなく、預貯金の払い戻しなどにも利用可能。相続人や手続きをする担当者の負担軽減を目的としています。また、窓口にきた相続人に対し登記官が登記しないで放置しておくことのデメリットなどを説明し、「相続登記」の必要性についても伝えていきます。

生前整理やエンディングノート、遺言についても話し合いを

親が長く住んでいる実家には、さまざまなものが溢れています。今は、生前整理をサービスとして提供している会社もあるので、うまく活用して片付けも進めておきたいものです。また、資産のことだけでなく、「自力で生活できなくなった時にどんなところで過ごしたいか。老人ホームなどは決めているか」「葬儀に呼びたい人」「どんな葬儀をしたいか」などをエンディングノートに記してもらうこともお願いしておくとベストです。相続人が揉めないように、遺言書で遺産分割についても意思表示しておいてもらうことも忘れずに。

後悔しない終活へとつなげるために

せっかく資産があっても、それが相続人同士の揉めごとや混乱のもとになっては本末転倒です。被相続人、相続人の双方が安心・納得できるように、早めに話し合いを進めておきましょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。