まずは、持ち家を売却する際の流れを把握しておきましょう

これで迷わない不動産売却ステップ・バイ・ステップ Vol.1

現在、住んでいる持ち家を手放して住み替えをしたい、親から実家を相続したが、使う予定がない--。こんなケースで住まいを売却したいと考える方も多いと思います。不動産を売却することは一生のうちにそう何度も経験することではありません。初めてという方も少なくないと思います。そんな場合に、大切なのは、まず不動産を売却する際のおおまかな流れをつかんでおくことです。

親戚などに売却することが決まっているケースのように買主を見つける必要がない時や、自分で買主を見つけたいケースでは、個人間で契約する「個人間売買」という方法があります。しかし、その場合には、売却する物件の契約書の作成から登記手続きまで、多くの専門知識が必要になり売主の負担があまりにも大きくなってしまいます。ですから、個人間売買の場合も、不動産会社に依頼して契約代行という手段をとった方が安心です。

一般的には売却の際は、不動産会社など専門家に「仲介」を依頼します。仲介は、買い手を探してもらい売買契約の締結までサポートする業務です。売主は、買主から売却代金を受け取り、不動産会社には仲介手数料を支払います。

売却の非常に簡単な流れは以下のようになります。各ステップの概要についてご説明していきましょう。

自分だけでなく、家族や親せきも含めて意向を確認

持ち家の売却に当たっては、まず売主である自分の希望や意向を整理しておくことが大切です。売却したい物件について、売却価格、売却時期などをおおまかにでも決めておかなければ、不動産会社に依頼できないからです。

住み替えの場合、売却価格が次に購入する住まいの自己資金につながっていきますから、売却希望価格の設定は特に大切です。売却より先に新居を購入する、売却してから新居を購入する、どちらのケースでも、スケジュールもしっかりと検討することが欠かせません。売却にあたり手数料や税金を支払う必要もあります。こうした金額をきちんと把握して、住み替えに必要な資金が手元に残るのかを計算して、売却希望価格を設定しないと後であわてることになります。

住み替えに当たって住宅ローンが残っている場合も多いでしょう。住宅ローンは売却と同時に一度精算することが原則ですから、現時点での残債を確認し、新しいローンを検討するなど金融機関との打ち合わせも必須です。

相続に当たって不動産を売却するケースでは、トラブルを招かないように慎重な準備が大切です。すでに財産分割が決まり相続手続きが終わって自分の財産となった実家を売却する場合でも、その家に思い入れのある兄弟などにはきちんと説明しておくべきでしょう。実家を売却後、財産を分割して相続手続きをする場合には、売却希望価格や売却を依頼する不動産会社選びなど、多くの点で関係者の同意を得ておかないと大きなトラブルになる可能性があります。

売却に際しての自分で整理・確認しておく主な項目

確認・整理点 ポイント
売却する目的の確認 なぜ売却するか、家族全員(相続時には親族)の合意形成をとる
ローン残債の確認 売却時に一括精算するため、残債を確認する
必要な資金の確認 住み替え等の場合、必要となる自己資金を確認する
希望売却額 最終的に受け取りたい金額(最低額、希望額)のめどを付ける
スケジュール 売却時期のリミット、住み替えまでのスケジュールなど

希望売却価格の設定のポイント

売主として条件を確認する際の最大のポイントはなんといっても希望売却価格の設定です。少しでも高く売りたいのはやまやまですが、買主は少しでも安く買いたいわけですから、そのバランスで成立する「相場」を知っておくことは大切です。そのためには周辺相場の確認が必須です。不動産の場合、全く同じものはないのが特徴ですが、できるだけ近い条件の物件が、いくらで取引されているかを確認するのです。

相場の確認にはインターネットでの検索が効率的です。その地域の不動産会社のホームページや、大手の不動産情報サイトで、売却する物件に近い場所や広さ、築年数など、似た条件の住まいがいくらで売られているかを確認します。WEBサイトによっては地域ごとにソートできる機能もありますから、エリアの相場を確認しやすいと思います。ただし、こうした公表されている情報は基本的に売主の「売却希望価格」です。売買契約が成立した金額ではないことに注意が必要です。

複数の不動産会社に査定を依頼することも一般的です。インターネットで複数の会社に一括で査定を依頼できるWEBサイトもあります。だだ、仲介を依頼した場合の査定価格は「このくらいで買ってくれるお客がいるはず」という金額です。その価格が保証されるものではなく、いつ売却できるか分からないことは覚えておきましょう。

仲介してもらう不動産会社を決めて、契約を結ぶ

自分なりの希望がある程度固まったところで、不動産会社に仲介を依頼します。仲介では、前述のように依頼した結果、提示された査定価格が高いからといって、その価格で買主が決まるとは限りません。不動産会社の信頼性、担当者の印象や熱意、相性も加味して、査定価格の多寡ではなく一番親身になってくれそうな事業者を選択しましょう。仲介してもらう不動産会社を決めたら、媒介契約を締結します。それまでに不動産のプロフェッショナルである担当者と、しっかり話し合って売却価格、売却時期の目安などを詰めておきます。

媒介契約には大きく分けると「専任媒介契約」と「一般媒介契約」があります。専任媒介契約は、1社だけに仲介を依頼する契約形態です。買主を見つければ確実に仲介手数料を受け取れるため、手間やコストをかけて営業活動してもらえることが期待できます。一般媒介契約は、複数社に依頼する契約形態です。他社との掛け持ちになる分、不動産会社はコストをかけられませんが、逆に他社より早く買主を見つけようと、スピーディーに動いてくれるケースも考えられます。

買主探しの際には内見に協力することも大切

媒介契約を結んだ不動産会社は、チラシやWEB等の広告を活用して買主を見つける営業活動を行います。見込み客を獲得できたら室内を内見してもらいますが、気に入ってもらえるよう、売主として清掃や整理整頓などの協力が大切です。買主候補の印象が良くなれば、思い通りの価格で、素早く契約できる可能性があります。逆に印象が悪ければ、値下げを余儀なくされたり、なかなか売れなくなったりします。なかには費用を掛けても室内をコーディネートしたり、簡単なリフォームを行ったりすることもあります。日にちを決めて多くの見込み客を案内する「オープンハウス」を実施することもあります。

こうした営業活動により、無事に買主が見つかれば、売買契約を締結することとなります。ローンの残債や仲介手数料等など、登記費用などの諸経費を差し引いて最終精算額が確定します。売買契約締結時には、手付け金(契約金の一部)を受け取ります、そして引っ越しなどを行い、残代金を受け取り、買主への登記の変更や物件の引き渡しをするといった段階を踏むことになります。そして、残金受け取り時に不動産会社に仲介手数料を支払います。その後、売却に伴う確定申告なども必要になる場合もあります。

不動産を売却する場合、不動産会社に仲介ではなく買取を依頼するケースもあります。買主を探してもらうのではなく、その不動産会社に購入してもらう方法です。買主を探す時間が必要ないので、素早く売却できるというメリットはありますが、その分、価格が低くなる可能性があることを覚悟しなくてはなりません。原則として買取に対応していない不動産会社も少なくないので、信用のおける依頼先を見つけるのが難しいといった問題もあります。

今回、まずは自分である程度考えてから、不動産会社に依頼するという順序を紹介しましたが、実際は、プロである不動産会社の意見や情報を基に試算や意思決定を行うのも現実的です。売却に関して自分だけで悩むのではなく、気軽にプロの意見を聞くことも考えてください。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

本コンテンツは、不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
なお、当社では「買取」は行っておりません。