土地の安全性を徹底的に確認しよう

戸建てを購入する際に、絶対に知っておくべきこと(第1回)

この記事の概要

  •  中古の戸建て住宅を購入する際、建物や基礎だけでなく、その建物が建つ土地(敷地)のチェックも欠かせません。安全で健康的な生活のためには良質な敷地であることが前提であり、将来の資産価値の維持・向上に土地の評価が大きく影響します。今回は主に安全性に関するチェックポイントを紹介します。

土地の安全性のイメージ画像

住まいを購入する際、戸建てとマンションではチェックポイントに違いがあります。戸建ての場合には、土地(敷地)のチェックが重要になります。将来建替えを実施したり、更地にして売却したりするようなケースも考えられますから、その土地のもつポテンシャルが資産価値に大きく影響します。現在建っている建物が問題なく使えるかの確認だけでなく、将来にわたって安全・安心に暮らせる土地であるかのチェックが欠かせません。

土地のチェックポイントは大きく次の3つに分かれます。「1.地盤の強さ、土壌汚染といった安全性に関すること」「2.その土地が都市計画法、建築基準法といった建築関連の法規でどのように規制されているかということ」「3.日当たり、風通し、騒音、臭気といった住環境面に関すること」なお、3つ目の住環境面についてはマンションのチェックポイントとほとんど変わりません。したがって、本連載では前の2つを説明します。今回は安全性に関することに注目していきます。

まずは地盤の強さや擁壁をチェックする

安全性の問題は、その土地が過去にどのようにして造成され、どのような使われ方をしてきたかを調べることが大切です。建物に維持管理やリフォーム等の住宅履歴があるように、土地にも履歴があります。購入を検討している土地の現状を確認するだけでは不十分なことがあります。将来のトラブルを回避するには、過去を探り、将来を推測しなくてはなりません。

まず確認したいのは、地盤の状況です。最近の戸建ては建築基準法等でかなり堅固な基礎を設けることが定められていますが、その下の土地に問題があれば意味がありません。地盤の状況はいわば「基礎の基礎」です。

もちろん、強固な地盤であることが望ましいのですが、強固でなければ、それを前提とした設計をして備えることができます。そのためにも地盤の状況を知っておくことがポイントなのです。地盤の状況により建物の建築コストが変わる可能性があります。それを考えて購入価格の是非を判断する必要があるでしょう。

特に注意が必要なのは、宅地になる以前、田んぼや沼地、河川だった土地です。地中の水分が多い軟弱な地盤である可能性もあります。近年、盛り土によって造成された土地の場合も、土地の造成の際の転圧(踏み固め方)次第で地盤の強度が違ってきます。

こうした地盤状況のチェックは、昔の地図や航空写真等で以前の状況を調べることでおおまかに推測できます。図書館や役所等でその地域の歴史がつづられた史料をあたることでも確認できるでしょう。登記簿謄本でその土地の「地目」を遡ることで、以前の用途を推測できる場合もあります。現在の登記簿謄本は電子化されて「登記事項証明書」と呼ばれ、確認できる情報が限られていますが、古い情報は「閉鎖登記簿」として残されており、地目等について遡れる可能性があります。費用をかけるなら、専門家に地盤調査を依頼することも可能です。

なお、斜面の土地の場合、擁壁(土を切り取った崖や盛り土保持の壁=土留め)を使用して整地するケースがありますが、擁壁も経年とともに老朽化し、強度が劣化していきます。斜面の土地を購入する場合は、擁壁のチェックも欠かせません。専門家に依頼するほか、国土交通省がセルフチェックシートを用意していますので、簡易的な判定に役に立つかと思います。

「我が家の擁壁チェックシート」

ハザードマップで自然災害による被害の可能性を調べる

地盤や擁壁に問題があった場合、トラブルが表面化しやすいのは地震や大雨などの災害が起こった時です。そうした自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したのが、国土交通省や各自治体が示す「ハザードマップ」(被害予測地図)です。予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度などの情報が地図上に図示されているので、ぜひ調べておきましょう。国土交通省のハザードマップは、洪水、土砂災害、津波の予測も公表しています。

国土交通省ハザードマップポータルサイト

地盤や擁壁に問題はなくても、洪水、土砂災害、津波などの自然災害に遭遇すると住まいは非常に大きなダメージを受けることがあります。自然災害による被害を個人の力で防ぐことは非常に難しいのが現実ですから、リスクが想定される物件は慎重に考えるべきです。自然災害はいつ起こるか分かりませんから軽視せずチェックしましょう。

利用履歴を遡って土壌汚染リスクを減らす

土壌汚染とは、その名のとおり、地中に化学物質などの有害物質が含有されている状況を指します。当時、築地市場(東京都中央卸売市場)移転の際の土壌汚染問題がニュースになりました。移転先の豊洲(東京都江東区)の敷地が元ガス製造工場であり、石炭から都市ガスを製造する過程において生成されたベンゼンやヒ素など7種の副産物が、土壌や地下水を汚染していたためです。このような土壌汚染の可能性は、住宅地においても無縁ではありません。

特に、その土地で以前、工場、ガソリンスタンド、クリーニング店など化学薬品を扱う業務を行っていた場合、土壌汚染について慎重に調べる必要があります。中古の戸建てを購入したところ、それを建てる前には工場だったので土壌汚染があったといったケースもありえます。前出のように登記情報等を入手し、購入しようとしている土地の履歴を調べるほか、周辺に関しても土壌汚染の可能性がある使い方がされていなかったかを確認しておきましょう。

土壌汚染は、土地の価値が下がるといったデメリットだけでなく、住まい手の健康を蝕む可能性のあるリスクです。周辺の汚染物質が地下水等を通じて広がっている可能性も考えられます。念には念を入れて確認しましょう。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2018年2月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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