素早く売却するための内覧への対応とは?

これで迷わない不動産売却ステップ・バイ・ステップ Vol.3

素早く売却するための内覧への対応とは?

自宅を売却する際、仲介を不動産会社に依頼した後に、多くの場合、購入希望者による内覧があります。住み替えのケースでは、生活中の住まいに購入希望者を迎えることになることが多いので対応は大変ですが、内覧は購入の意思決定に大きな影響を及ぼしますから、しっかりと準備をしましょう。

自分が購入する立場になって、住まいをモデルルームにするつもりで準備を整えるのがポイント。売却に手間取ると購入物件の資金計画に支障が出かねません。少しでも早く売却するために、ひと頑張りしてください。

内覧の準備の一番のポイントは第一印象を良くすることです。そのためには、とにかく「見た目」を良くしましょう。海外では、中古住宅売却の際のノウハウとして、購入希望者を案内する前にインテリアコーディネーターを雇い、家具をレンタルしてまで室内コーディネートすることも珍しくありません(「ホームステージング」などと呼ばれます)。

こうした費用をかけることは日本では一般化していませんが、自分たちでできる範囲はしっかりやって、モデルルームのイメージに少しでも近づけて購入希望者を迎え入れたいものです。内覧日までの準備と、当日対応に分けて説明しましょう。

事前の準備として整頓で部屋を広く見せる

内見迎え入れ準備の基本中の基本が、整理整頓と清掃です。家への印象をよくする意味でも、室内をすっきりきれいに見せるテクニックが欠かせません。室内の状態や売り主によっては、費用を払ってハウスクリーニングを依頼するケースもあるほどです。

居住中の場合、家財道具がまだ残っている状態で見せることになりますので、整理整頓の徹底が不可欠です。そのためにはまず、できるだけものを減らすこと。家具や生活用品が溢れていると部屋が狭く感じられます。住み替える際、必要ない家具などは廃棄してしまうのですから、内覧の時点で一足先に処分してしまうのです。もし捨てられないようでしたら、実家やトランクルームなどに一時的に預けるのもいいでしょう。

このように指摘すると、不必要なものはとにかく納戸や押し入れなどの収納スペースに詰め込んでしまえばいいと考えがちですが、あまりお勧めできません。購入希望者にとって収納スペースの大きさはチェックポイントの1つです。「押し入れを開けて見せてください」と言われれば対応しなくてはなりません。その際、乱雑になっていればせっかくの整頓や掃除の苦労が水の泡です。しかも収納スペースが小さく見えてしまうというデメリットもあります。収納スペースに片づけるなら、見栄え良くしっかり納めてください。

玄関、水まわりを徹底清掃、空間演出も加える

次は清掃です。もちろん、部屋全体を一通り掃除する必要がありますが、最初に目にする玄関まわりと、キッチン・バスルーム・トイレなど生活感の出やすい水まわりは特に念入りな清掃が欠かせません。部屋を明るく見せるためには、窓ガラス、網戸、照明器具の清掃も必須です。

キッチンでは、シンクの排水口を覗いたり、システムキッチンの扉を開けたり、レンジフードの汚れ具合などまで丹念にチェックする内覧者もいます。“見られてはマズイ”と思う個所こそ、丹念な清掃やメンテナンスが必要です。清掃ではありませんが、室内の扉や戸は注油などで音鳴りや引っかかりを解消し、照明器具の電球もチェックしておきましょう。

壁や天井のクロスなどは、買い主が購入後にリフォームして交換する可能性が高いため、基本的にはそのままでかまいません。ただし、手垢の付きやすい照明器具のスイッチ周り程度は忘れずに汚れを落としておきましょう。面積が広い壁のクロスの傷みは室内の印象に直結するため、傷や焼けなどであまりに劣化がひどい場合には、一部だけでも新品に張り替えることも考えられます。

事前準備の最後は空間演出です。内見に際しては建物という「箱」でなく、買い主の「入居後の快適な暮らしのイメージ」を見せることが大切です。そのために、この家なら素敵な生活を送れそう、というイメージを提供する必要があります。

具体的には、インテリアにひと工夫することです。玄関やリビングなら、観葉植物などを配置したり、部屋の一画に写真立てや洋書など小物を並べたりするのが効果的です。システムキッチンのカウンターに、一輪挿しや色鮮やかなフルーツを1つ置くだけでも視覚的な印象が違ってきます。

部屋ごとの内覧準備のポイント

玄関 靴はすべて下駄箱に収納しておく
花や絵で第一印象をアップする
リビング 徹底して片づけて少しでも広く見せる
観葉植物や補助照明でアクセントをつける
ダイニング テーブルに花などを置いて演出する
徹底的に整理整頓する
キッチン 洗い物やゴミなどは片づけておく
臭いに注意する
水栓などに水漏れがあれば修理しておく
バス・トイレ 臭いに注意する
水栓などに水漏れがあれば修理しておく
花や絵などで演出する
個室 寝室:ベッドはしっかり整える
子ども部屋:おもちゃをしっかり片づける

当日は、照明をすべてつけて、匂い対策を万全に

内覧日、当日のポイントです。部屋は少しでも明るいほうがイメージが良くなりますから、カーテンを開けて、晴れていても照明を全て点けます。少し暗く感じる部屋は、スタンドなどの補助照明を置いて明るくしてもいいでしょう。

次に注意するのが臭い。煙草やペットの匂いなどを内覧者は敏感に察知します。自分の家の臭いは中々感じることができないものなので、住み替え計画を知っている知り合いに、部屋をあらかじめチェックしてもらうと万全です。もし臭いがあれば、消臭剤や芳香剤など使って、感じさせないように工夫しましょう。また気温が問題なければ、内覧中は、窓を開けておく手もあります。自然の風を感じられれば快適感もアップしますし、部屋が少し明るくなる効果もあります。

内覧の際に、現所有者が立ち会うことがあります。その時には控え目にして、質問があった時に手短に答えるだけにします。「高く売ろう、すぐに購入を決めてもらおう」と聞かれてもいないのにセールストークをしたり、余計な説明をしたりするのは禁物です。質問に対して誤った回答をすると後々のトラブルの原因になります。即答できない時は、きちんと調べて、後程、不動産仲介会社を通して回答しましょう。

こうした内覧時のサポートに、不動産仲介会社の実力や信頼度は表れます。不動産仲介会社は、何度も内覧の立ち会いを経験しています。内覧者を迎える準備はもちろん、「どんな質問が多いのか」「その際にどう答えるべきか」といったことについてもあらかじめ担当者と打ち合わせをしておき、あわてないようにしましょう。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。